【連載:クマでも読めるブックレビュー】「現代ロシアの軍事戦略」「ウクライナ戦争と米中対立」 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】「現代ロシアの軍事戦略」「ウクライナ戦争と米中対立」



新書二冊のレビュー。「現代ロシアの軍事戦略」「ウクライナ戦争と米中対立」どっちとも東大先端研の小泉悠先生が関わっているということで読んでみた。まず、「現代ロシアの軍事戦略」から。勘違いしないでほしい点だけは押さえておく。

「現代ロシアの軍事戦略」

「現代ロシアの軍事戦略」,,,本書を紐解くうえで忘れてはならないのが”戦争”が仕掛けられたのが、2022年の2月だということ。本書は2021年の本ということもあって、若干時事性に疎いところは仕方がない。だから、結果論でしか言えないけど、ぶっちゃけ小泉先生はこの時点でウクライナの力を侮っていて(という表現が正確なのかはわからんが)どちらかというとロシアが『中興の大国』としてどのように戦略の性質を持ちえたか、というロシアの現代解説に近い立場の新書になっているのは忘れちゃならん。ロシアなりの価値観をどのようにプーチンが司り、どういった形でハイブリッドな戦争史観を持ち寄ってロシアを一致団結させたか?というロシア現代軍事戦略史の解説の面で今役立つ新書であって、間違って、ウクライナ紛争(2014年)~ウクライナ危機(2021年)~ウクライナ侵攻(2022年)という流れを汲み入れずに本書を読むと、種々の部分で誤解が生じる可能性が高いと思う。本書の内容も、本来は改訂しなければならないはずだ(もっとも書籍それも新書なので改訂は無理な話だろうけど)。

より具体的に言うと本書が説くのは、なぜロシアがウクライナに危機的なスタンスをしかけたか?(本質的理由)という観点においてではない。なぜロシアがウクライナに危機的なスタンスをしかけることができたか?(軍事国家的能力)という『軍事国家的な能力形成』を小泉先生が語っているといったほうが正しい。ここで重要なのは、危機の本質的理由を説いたのではない点である。反面、危機的な状態を引き起こせたロシア的な能力に焦点を当てているという点だろう。つまり、どちらか、というと解説していることは軍事に徹しているわけで、ロシアの大局的な国家の存在理由・国際政治的な中身を期待して本書を読んではいけないということだ。それは小泉先生の近著で見たほうがまだ正しい認識になるだろうし、国際政治学者として細谷雄一先生が後出の「ウクライナ戦争と米中対立」で(ジャーナリストとともに)ジャーナリスティックに語っておられなので、それを見たほうがより良いはず(つか小泉先生ご自身、ロシアの兵器に興味があって研究を始められた、ということもあとがきに書かれてる&新書であるからして『こういう立場の書き方をせねばならないこともある』と認めておられである)。

例えば、さわりのほうで、すぐに電磁波やドローンあるいはサイバーによる軍事的掌握の手法が書かれていて、本書は決して、なぜロシアがドクトリン=教義の理論を敷いたかということはほとんど書かれていない。あくまでもバックグラウンドを概要解説しているだけ。NATOの拡大とか米国との比較とかはあることにはあるけど、決してドクトリンに沿って思想的解説をしただとかその大綱を紐解いた、とはおせじにもいえない。センシティブにならなければならない部門や専門家がかなり少ない部門を小泉先生が素人でもわかるように軍事技術を解説してくれている書、として読むのがベストな読書方法だと思う。ドクトリン解説書として手に取ると痛い目を見る。かといって、軍事的な最低限の知識がないとすんなりと入っていけない書にもなっているので、どっちともつかずになっているのは研究領域がそうだからそうなっとるとしかいいようがない。この辺りは繰り返すように小泉先生の別著や共著を呼んだほうがいいでしょ!って感じですね。