【連載:クマでも読めるブックレビュー】数多のゲーマーがオライリー社「おもしろいゲームシナリオの作り方」を読むべき理由 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】数多のゲーマーがオライリー社「おもしろいゲームシナリオの作り方」を読むべき理由



この本はすごくいい本です。ゲームクリエイターのみならずゲーマーが読んでいても面白い着想にあふれています。かつて飯野が『ゲームを作る前に作るゲームの分野を決めちゃってはダメだ』っていってましたけど、その答案にもなっています。ひとつひとつ追っていきましょう。

体験談が書いてありシナリオの可能性を限定していない点

まず、著者ジョサイア・レボウィッツとクリス・クルークの豊富な体験や視点に基づいて書かれている点には具体性があります。しかもゲームの持つ可能性を限定せず、客観的なものとして体験談のかたちで書かれるため、参考資料としても意義があると思います。彼らのキャリアも部分的に書かれるので、そもそもどういった形で物語の作成に一役買ったことになるのか?という基礎的な点がスタートラインになっていて、それこそ速読一気読みぐらいするを興味関心がそそられます。

【該当部分】第一章 ゲームストーリー、インタラクティブ性、そしてプレイヤーが求めるもの

ひとつひとつの提起される問題を考えさせられる点

それぞれの章の終わりに”考えてみよう”という項目が設けられていて、そもそもこの本自体がインタラクティブなメディアのかたちを標榜していると思います。読者に本質的な思考を求めるため、そもそも『シナリオライターってなんぞや?』っていう哲学的なところからスタート出来て、自分の向き不向きすら明らかになる本だと思います。この点は、行動一原則というか、試行一原則というか、『実際に何かを書いてみよう!』というクリエイティブさを元来兼ね備えた読者にとって、とても有益なポイントとなるはずです。

【該当部分】全章

実際のゲーム史にのっとってシナリオの歴史が記載されている点

具体的に言うと、この項は第二章からなんですけど、ゲームの歴史学の解説にもなっていて、その歴史学の側面をストーリーという点から紐解いていくことになっている。ケーススタディーでは、かつて日本のゲーム黄金期を飾った名作傑作たちが軒を連ね、日本製ゲームがいかにすごかったのか?という点を西洋人の立場から解説する、という名目も成り立っている。やはりJRPGはかなりの影響力を他のジャンルの洋ゲーにも与えているんだなということがよくよく分かる点です。

【該当部分】第二章 ゲームストーリーの歴史

起承転結を参考事例とともに挙げている点

第三章からはその起承転結さが豊富な参考事例とともに挙げられています。ひとつひとつのゲーム作品にそれぞれの個性・起承転結があるということが書かれていて、ケーススタディーの解説にもさらに熱が入っていきます。この章では起承転結と王道なJRPG的なストーリーとの対比が論じられていて、興味深い構成を形成している。

【該当部分】第三章 ヒーローズ・ジャーニーとゲームストーリー

キャラクターの重要性を参考事例として挙げている点

これは第四章から本格的に解説されている点です。全体的なバランスを担保するため、ブッとんだキャラクターのありかたを典型的に批判します。プレイヤーの感情の機敏とともにあり、泣き所を押さえるという、ADV流のゲームストーリーの作り込み方が主として解説されています。ただ、バランスを押さえることなく自由奔放な形成でもってして成功している事例もあることも、亜流な方法として認められるものでもある。第五章までは、そのストーリーの実装部、そのあたりが解説されています。

【該当部分】第四章 ストーリーとキャラクター~第五章 感情移入できるストーリーを作る

後半に続きます。