【連載:クマでも読めるブックレビュー】「Rとトレード」はダメな本なのか? | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】「Rとトレード」はダメな本なのか?



そうは思わないんですよ。確かに最新のファイナンスの理論とかそういう面で考えりゃダメだとは思いますよ。でも基本的に投資家が持っているべき基礎的な知識は「Rとトレード」にしっかり書かれてますよ。ちょっと理由を何個か考えたので、それに基づいて書いていきます…酷評が目に付く本ですけど、かなりの良著だとあたしは思うので。

ファイナンス本流からしたら脱落だろう…という意見に対する反論

例えば、ローソク足の出し方とかここまで平易に書かれた投機系の本ってかつてありましたか?ぶっちゃけ数式ばかりで攻めてるファイナンスの本はあまたあれども、実地的で汎用性あることをやれる本って本書以外邦語ではないです。うしろに映した本「実証会計・ファイナンス」だって、入門にしては、かなり高度な数式を用いてますよ。さらに突っ込んで言うと、統計的に金融危機がはじき出せるかっていうとそりゃいずれにしたって土台無理なわけで、投資・投機の研究は数式を全く用いない書籍が、最近では最も有名になったりする分野っす。当然そういう類の本の代表作が「シグナル&ノイズ」だったり、かの有名な「ブラック・スワン」だったりするしょ?

https://hitomevorecraft.org/wp-content/uploads/2022/11/R_Candle.html

⇑ぶっちゃけ本書で勉強し始めて一日程度でこれぐらいはできちまいますw

主観は決して排除できない…だが、なるべく客観的になることはできる

結局のところ、なるべく主観を排除して考えることはできても、主観を完全に排除して考えることはできない。iPS細胞とかの研究じゃないんだから。だったら、なるべく客観性を保ちながら、実証的に汲み入れる研究とかにはバリ役立つ本っす、この本は。この本をPythonのファイナンス本各種と比較して評価すること自体間違ってると思うよ。本書「Rとトレード」は投資に必要な一番簡単な部分を平易に、しかも統計言語に疎い方・統計に疎い方に解説している点では絶対素晴らしひ内容になってるって。

解析のためのデータの取り方から解説している点

あと、しっかりスクレイピングとかマイニングの初歩をおさえているのもいい点です。人に寄っちゃ『Wikipediaの拝借www』とかその内容を煽ってる方いらっしゃるけど、そういうことも重要なんすよ。例えば、あたしの持っている他のファイナンス本だとスクレイピングの点だってまったく考えていなくて、実用性ない本が多いっす。大体データセット無償で公開しているでしょ?はじめっからクレンジングしてあって、クレンジングのコーディングに苦労しないっしょ?読者は。本書は違います。スクレイプのやり方からレクチャーしてくれる。これは重要なんすよ。例えば、今株式を解析に掛けたいと仮定します。それなら、現場の現業の株価データからスクレイプしないと現代性も汎用性もないでしょ?そこから考えないと。本書の場合はいくつかのソースを示していて、ここからスクレイプするといいよ!って言ってる。だから、どっからスクレイプして、どっからクレンジングして、どっから解析にかけるかっていうタイミングと好機をとらえやすくて、内容は前述したように平易すぎるほど平易なので、迷いどころがないんすよ。これが投資・投機の基本的な敷居の低さを担保してて、『一般的な基礎知識が重要なんですよ!一般的な実用性が重要なんですよ!』っていう意味で、水準の平定を達成できてるやんか。だから本書は入門者向けであり、わからなくてもやってみる価値のある、水準の低さを担保できている良書なんですよ。これを本流のファインナンス本の内容とか(例えば先進的なバックテストの解説とか)を求めているかたと比較して、『「Rとトレード」はクソ本www』っていうほうが間違っている。しかも、Pythonユーザだったり本流のファイナンス理論の専門家だったりしたとしても、基本をおろそかにしていいわけではない。特に恐慌などが予測しにくくなっている今は、別な観点からファイナンス的な見地を切り開くことが重要っすよ?

Rのコードが動かない?それは自分で解決しろ

Rのコードが動かないんであれば、自分で調べて解決しろっていうことですよ。ここまで簡単なコーディングなんだからちょっと考えて工夫すれば、グラフ見やすく出来たり、いろいろと可能な範囲でアレンジできるっしょ?例えば、ここから「Rグラフィックスクックブック」に入ってもいいし、工夫次第で、こうした基礎的な知識を持っているだけでかなりの強みになるってばよ。しかも本書の場合Rのコーディングは基礎からしっかり学べる。統計学の基礎も必要な部分はしっかり学べるようにカリキュラムになっている。ひとつひとつ読めば、ひとつひとつのコーディングの理由は平易に理解できるし、工夫次第で、いくらでも加算的な知識が手に入るようになっている。Wikipediaを権利の範囲内でリンク張って何が悪いんだろうか?そのあたりの知識をまとめ、平易に解説しただけで、”バッタもんの株式講習会”と同じく同類項には並べないでほしいんだよなぁ…。

シンプルで挫折しにくいように設計されている点

あくまで本書は買って自分で読みながら勉強できるレベルにまで、簡単に落とし込めている。求めるレベル・敷居が低いだけに、『株式解析の本買ったけど放置してあるわwww』っていう風にはなりにくい。むしろ、初学者が独学で金融解析を乗り越えるためにはこうしたある意味”小学生レベル(と判断するかたもいるであろう程度)の知識”も押さえておかないといけない。迷いどころが少ない書籍なんですよ。これがいきなりブラック=ショールズ方程式とか、高度なリターン・財務データポートフォリオ解析・ファクターの理論とかに行っちまうと、挫折しちゃうでしょ?本書はそういうとこカバーしてないけど、それだけに『数式にあまり頼らず楽しく勉強できる』っていうコンパクトな本にまとまっている。これはこれで評価していいでしょう。

バイオインフォマティクス分野以上に金融的パシフィックドグマに挑む必要性について

あと最後に言っておくけど、これからは金融、特にフィンテックを開拓したいんであれば、これまで培われてこなかった畑を耕す必要がある。先人の技術の物まねは重要だけど、それだけで好奇心が満たされるような開拓者にはなれないでしょう。思えば「シグナル&ノイズ」だって「ブラック・スワン」だって、自分なりの答え・考え方・導出方法を平易に説いたことから始まっている。これまでの定型通りにDNAの研究してたって、変な考え方に基づいた独創的な知見が得られるわけないやん。それは所詮セントラルドグマであって、決してパシフィックドグマではない。あるいは、レッドオーシャンであって、ブルーオーシャンではない。特に、金融みたいなどこでもレッドオーシャンまみれなスピード感あるところではエキセントリックな発想に基づいた、新しい奇抜な・パシフィックドグマ的な思考方法が求められている。だから本書のような変な考え方にもつながりうる基礎的な本は重要なんす。


とここまで書いてみましたけど…あたしの意見、あんまり説得力ないかな…?