書評アニメ評

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中卒が今更「機動戦士ガンダム 水星の魔女」(第1クール)を見終わったので足りない学力と脳力を振り絞ってレビューしてみる

ハサウェイ論に続く中卒解説シリーズ第二幕です。姉妹記事☟「水星の魔女」に見るエキセントリックな側面とベーシカルな側面まず、画期的なのは舞台設定や、キャラクターの魅力ですよね。舞台設定はずばり”学園”。ガンダムシリーズにしては、何分ぶっ飛んでるように見えるけど、実際見てみると現実離れしすぎていなく、ガンダムモノの枠内に留まりながら、特異点となるポイントポイントではイレギュラーな工夫が見え隠れしている。例えば、”決闘”というぶっ飛んだ設定がその工夫のうちのひとつ。けんども、あくまでガンダムらしさのある人物の暗黒面、人物のたくらみの在り方をリアルに描いていて、人間個人個人の判断の結果で物語が進む...というガンダムシリーズらしい特徴を、その舞台設定の点で持っている。ではキャラ造りはどうか。スレッタとミオリネに代表されるように、むしろ本作の主人公はまず女性である点が特徴ですね。キーポイントになってくる登場人物も実は女性主体で描かれており、決して男性基準でなにか物差しを図る...ということではない。これまでのガンダム作品の場合、男性主体で描かれるシーンが多すぎた感がありますが、あくまで本作の場合...
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中卒が今更「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」(第一作目)を見終わったので足りない学力と脳力を振り絞ってレビューしてみる

今しがたネトフリで「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」(第一作目)を見終わったので...ハサウェイ原作を知らない方が楽しめる映像化作品小説 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ※書影:版元ドットコムより.見よう見ようと思っていて、今日見るべき時が来たと直感で感じたので見てみました。「閃光のハサウェイ」については、小説版をガンダムおじじ(富野)の著作で読んでたので、この名作を随分と”分かった気”になっていました。じじいの小説はよく世間で知られている通り、ちょっと読みにくいところがあるので、把握しにくいこともあってか、自分の場合だとあくまで”読んだフリ”になっていたというのが事実です。速読で流しただけだった...っていう。やはり映像化作品を見てみて、そこから小説版に移った方が詳細までが把握しやすいですね。結論から言うと、特段ひねりはなく、「閃光ハサウェイ」のありのままが映像化されている作品でした。ハサウェイはエリンなのか?を追及するミステリー劇場版を見て分かったのは、元ネタ知らない方が幸せになって本作を鑑賞できる、ということです。もともと劇場版ではハサウェイがエリンであることは冒頭からはまった...
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【連載:クマでも読めるブックレビュー】「東大×マンガ」~『関連付けて覚える』ことについて

「東大×マンガ」東大カルぺ・ディエム※書影:Amazonより.言っていることが具体的で回りくどくないんですよね、この本。その第一講として始まるのが『関連付けて覚える』ということ。思うに勉強って(特に大学受験勉強ではなおのことですが...)『関連付けて覚える』ことが肝心です。効率よく覚えるためにはひとつの事象を別個に得ただけではだめで、それ+ふたつめ・みっつめと関連付けて紐づけていく。たしかに大学院の研究レベルではこの能力は使えませんが、学部の受験レベルではこういう関連付けの勉強手法ってのは必要とされる。なんつったって効率よく覚えるためですから。読んでて着想を得たことはそこだけで終わりにしないで、無理にでも他の部門と関連付けて覚えることが必須です。つまり、考えながら覚えることが重要になる。この点に絞って解説がされ、手軽に読める漫画論になっているのは好印象。この本はそのような具体的かつ簡易的な体系論を冒頭言っていて、その後個々の作品解説の項目に入っていく。だから、抽象的でなく実にわかりやすく執筆が為されている。んで、その個々の作品の解説項目ってところですが...作品例でいえば、ハガレンの部...
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【連載:クマでも読めるブックレビュー】「ウクライナ戦争は世界をどう変えたか」豊島

「ウクライナ戦争は世界をどう変えたか」豊島晋作著※書影:版元ドットコムより.豊島さんは尊敬すべきジャーナリストだと思うのですが、単著としてあんまりいい本じゃないと思うんですよねぇ...というのもまず書題がおおっぴらで本質的でない。まずは題名が適切かどうかを問うてから、各章への批判(本投稿2ページ目)に移りたいと思います。流れとしてはロシアの本質☞ウクライナの本質☞NATOの本質☞いま問われる日本の本質といった感じなんですが、特にウクライナ戦争にフォーカスしているがため(仕方がないとはいえ)、ロシア及びウクライナに注点が集まっていて、題目にある通り"世界をどう変えたか?"という巨大な提起はほとんどできていないです。”世界をどう変えたか?”は論じておらず、むしろ”日本が考えるべきこと”ぐらいにしかなっていないです。NATOに関してもほどほどにしかふれておらず、むしろ日中台米の土台に乗っ取った台湾有事にどう影響するか?(というか台湾有事が起きたらどうなるか)ということを論じている本であります。なので”世界をどう変えたか?”という巨大な題目として相応しい本ではない。たしかにサイバー環境だとか新...
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【連載:クマでも読めるブックレビュー】「日本共産党の正体」福富~共産党の歴史を紐解くうえでは役立つフツーの書・それだけ。

「日本共産党の正体」※書影:版元ドットコムより.あれ?これそんないい本ですかねぇ...とりあえず一番気になった点から入るけど、なんか日本語がおかしいところがある。以下、引用します。『共産党にとって厄介なのは~なことです』じゃないの?正しい文体は。『共産党にとって厄介なのは~してしまいます』って日本語になってなくない?以下原文ママ、しっかり校閲してくださいよ。せっかく世に出す形で出版してるんだから。なお、この著者の負の相関の指摘自体は悪いことじゃないです。むしろ良いことを言ってますよね。でもね、『だからどうしたの?』っていう感じです。共産党の共闘路線が共産党の議席数を減らした、それは良いよ。指摘としては。『じゃあ何?』ってなるじゃん。野党ブームが発生すると、共産党は議席を減らします。このように共産党にとって厄介なのは、共産党は野党共闘で国民連合政権をめざしていますが、野党共闘がうまくいくと野党第一党が伸びてしまいます。このように野党第一党と共産党の関係は、負の相関関係にあります。本書p20よりここのみならず事実の認識というか...解釈の深度が足りないんじゃないのか?って思うシーンがいくつ...
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少年ジャンプ+連載既完結漫画「地獄楽」~そのアニメ版放送が始まる

2023年4月8日「地獄楽」のアニメ放映が始まった。原作は賀来ゆうじによる忍浪漫画。幼少期に両親を惨殺された不死の忍者・画眉丸が、愛する妻である結との再会を目的に、女剣士・佐切の提案(『不死仙薬を探し当てれば願いが叶う』)を受け入れ、旅する過程とその顛末を描く。漫画は、耽美かつ細やかなタッチで描かれており、悲壮的ながら希望をも持たせる世界観で人気を博した。連載期間は2018年1月22日~2021年1月25日の間。既刊全13巻で、完結済。原作者・賀来は秋田書店に漫画編集者として就職後、漫画主業に転身した経緯をもつ異色の漫画家。「チェーンソーマン」「ルックバック」など著名な作品で名を馳せる藤本タツキを師匠に持つ(藤本のアシスタントであった経緯を持つ)。自身のアシスタント経験者には同じく漫画家の龍幸伸がいる。Wikipediaによれば漫画制作の師匠に当たる藤本とは、趣味がよく合うらしい。自身の漫画の作風に悩んでいたところ、藤本との出会いが自信を持つきっかけになった、という。2023年4月放映開始のアニメ版は、カルト的な人気を誇る手塚漫画「どろろ」のアニメ化を手掛けたことでも知られる、MAPP...
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【連載:クマでも読めるブックレビュー】「NETFLIX コンテンツ帝国の野望」~ブロックバスターを経営破綻に追いやった経緯を描いた書

本書に期待してはいけないところNETFLIX コンテンツ帝国の野望 ※版元ドットコムより.本書の副題は「GAFAを超える最強IT企業」。副題に反して、本書が紐解くのはNetflixの創業~成長の過程である。反面、既得市場利権を貪るゾンビ企業との闘いを主として描いているので、あくまでジャーナリスティックにNetflixの成長の軌跡を描き出したというだけの書である。だから、目からうろこが落ちる書ではない。MSやアップルといった大学生によるガレージ創業組とは異なる、貴重なベンチャー成長事例として扱った方が良いだろう。ただ、日本語版には著者による最近のネトフリの動向が一定程度示されていて、そのあたりが、現在のネトフリの立ち位置の事実上の解説になっている...といったところか。副題は「ブロックバスターとの闘い」にした方が良かった繰り返すように、ネトフリの物語・特に起業期の物語にフォーカスしているといっていい。当然その物語の中で、アメリカのTSUTAYAとされる、DVDレンタルを手掛けていたブロックバスターの経営破綻にもふれられている。否、むしろネトフリがブロックバスターとどのように戦い、市場を飲...
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今注目すべきチップチューン風ゲーソンアニソンカバー&ドットアート系YouTuber三選

『今注目すべきチップチューンアニソンアレンジ&ドットアート系YouTuber三選』と題してお三方をご紹介する企画。どっちかっていうと、”芸術”に近いものを作っている有能な音響デザイナーという立ち位置に近い方々だと思います。どのかたも高い技術力があって、音楽もさることながら絵との煮詰め方も上手いです。たぶん、この分野のパイオニア。thetaさん(YouTube/Twitter)。代表的なものでかつ自分がインパクト感じたのはこれかな。アニメ「魔法陣グルグル」から奥井嬢のアニソン代表曲「Wind Climbing~風にあそばれて~」です。原曲も有名なんだけど、再現の技術力が高すぎるっていう。グルグルEDできた【魔法陣グルグルED】ファミコン音源で Wind Climbing~風にあそばれて~【実機演奏】YouTubeニコニコ動画 theta🎧 (@theta88p) February 17, 2023 この曲、泣ける曲として有名だけど、それよりもthetaさんの曲作りはごくごく丁寧で精密ですよね。原曲を無駄なく再現しきる能力ではつべのチップチューン界では随一じゃないでしょうか。そして、チップ...
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アフタヌーン誌連載漫画「スキップとローファー」~そのアニメ版放送が始まる

2023年4月4日「スキップとローファー」のアニメ放映が始まった。アフタヌーンKC スキップとローファー ※書影:版元ドットコムより.原作は高松美咲によるアフタヌーン誌で連載されている漫画作品。マンガ大賞2020にノミネートされ高い評価を受けた、累計発行部数100万部突破のヒット作だ。高松の漫画作品としては「カナリアたちの舟」に続く連載第二号となる。原作の連載は2018年10月号からだから、アニメ化は連載開始から5年かけて実現となった形。Wikipediaによれば高松漫画の特徴は、”ジャンルにこだわらない作風”にあるという。東京の進学校に首席入学した、世間の感覚から大分”ズレた”俊才女子高生を主人公に据えた、スクールライフコメディーが描かれる「スキップとローファー」。『T大学法学部を首席卒業し、総務省官僚になり、官僚経験を活かした地元の有能な政治家になる』という夢を実現する”明確な目標”を持った女子高生・岩倉は高校入学早々のトラブルを抱えながら、学校生活を通じて、個性的な友人とともに成長していく。アニメはTOKYO MX他で放送されるほか、Netflixなど各種配信サイトでも配信される...
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【連載:クマでも読めるブックレビュー】「NETFLIX 戦略と流儀」~ネトフリの現在地を知るには良書

本書の優れている部分~序盤NETFLIX 戦略と流儀~長谷川朋子著(書影:版元ドットコムより)序盤(第一章)は良いと思う。というのもデータを通じて客観性を担保しようとしている点は非常に興味深く読める。客観性を確保しようとして、様々なデータを当たっているその努力の姿勢を称賛したい。データを参照することで、Netflixがなぜ強くなったのか?その経緯を簡単にはしょって理解できる。なにより、ネトフリの”現在地”を知るうえで、欧州各国の映像産業との比較やTikTokとの比較考察などができているため、第一章はかなり良い出来である。例えば、映像産業のシェアに当たってみたり、本来は異業種のテレビという産業部門との比較は斬新である。良い部分はこの点に尽きると思う。詳しくは後述するが、その分、序盤でネタが切れてしまっているように感じた。例えば、ディスプレイをキーにして、映像のソフト面という大局的な割り切り方をもっとできなかったものか?という提案はあっていいと思う。次にダメだった部分を述べる。本書のダメな部分~中終盤第一章が良かっただけに、後の章がいただけない。特に、第二章。ほぼ全編にわたって、特定の作品...