【連載:クマでも読めるブックレビュー】「現代ロシアの軍事戦略」「ウクライナ戦争と米中対立」 | ページ 2 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】「現代ロシアの軍事戦略」「ウクライナ戦争と米中対立」



「ウクライナ戦争と米中対立」

次「ウクライナ戦争と米中対立」,,,対話篇ということで、細やかなセンテンスに区切って論じられている。特に見ておきたいのは、タイトルも示す通り、ウクライナ情勢が国際社会に与える影響について。峯村氏と小泉先生の対話を基礎に、米中構造…特に中国の動向についてミニ論の様子で対談をしている、という形の書。こちらは前著と違って、いろいろなところに飛んで論じているので、なぜ戦争が始まったか?という形のヒントは与えてくれる書になってる。だが、本書はヒントを提供する形で対談記録されているに過ぎず、あくまで『なぜロシアがウクライナ侵攻したか?』という点については深ーく論じているわけでもないです。あくまでさわりだけで、主権国家観とか帝国主義の逆襲という名目上の論でおさえているだけ。

つまり、本書を踏まえても『なぜロシアがウクライナ侵攻したか?』というコアなもの・その理由について特段納得いくものが得られるわけでなかった,,,というのが正直な感想(もっともそれすら曖昧だという結論もありき)です。プーチンはウクライナを舐めていた&プーチンなりの国家観が引き金になったのでは?ということは示唆されているんだが、それだけで本当にロシアがここまでの侵攻をするか?っていう疑問は生じる(これは小泉先生としても同じらしい)。はっきり言ってロシアにとってもお粗末すぎる戦争なわけで。国力をここまで衰退させて戦うか?っていうことだよね。”特殊軍事作戦”に拘っているのも、ホンマの戦争はするつもりなかった、っていう意見がある。例えば、この戦争には経済合理性がない、って書かれているけどまさしくその通りで、明らかに露の外交も含めたバランスパワーが損なわれているだけ。損得勘定でいえば、ウクライナはそれほど重要な場所ではないのになぜ攻めたか?まぁ、思想的に重要な場所だから攻めたのだ、というわけだよね。んで中身としては明らかに中世の血なまぐさい戦争が現代のストリーミングの技術に乗っかって非現実的に蘇っている。むしろ中世と比べても、ロシアとして大義名分がそれほどガチであるのか?というとぶっちゃけ頑としていえるほどない。本格的に攻めなければ、クリミア取ったぐらいで済んでるわけで、なぜ全面的な侵攻に踏み切ったのか?という理由が専門家の間でもあまり見えてこない。事実、ロシア祖国防衛のための戦争でもなんでもないんですよ。

米中対立の部分はさっと読み飛ばしたけど、様々な可能性を残しながら議論している。峯村氏&小泉先生の部分のロシアにまつわる議論は軍事技術面ではあんま書かれてない。けど、中台の問題は日本に近いということもあってか、核の論も含めてある程度は詳しく書き込んであって、日本人として身近なので新鮮に読める(この辺り中国論は村野氏との対談になっているので、小泉先生の専門分野とは違っているのも事実,,,)。例えば、航空戦力・ミサイル戦力に関する意見も有れば、揚陸能力に関する記載も具体的にある。このあたりは村野氏のご専門が活かされた箇所だと感じた。小野田氏が日本の対応のありかたについて俯瞰して論じた後で、最後に細谷先生が国際政治の識者として、国際秩序に関して(特に現代向けに想定された枠組み=国連がうまく機能せず不全に陥っている…とする論を中軸に)同盟関係で対処する以外ないという含蓄で議論〆をして了と言った感じですね。