【クマでも読めるブックレビュー】「読む音楽 完全版」DJテクノウチ~音楽関係者必見の入手困難書 | ページ 4 | ゲヲログ2.0

【クマでも読めるブックレビュー】「読む音楽 完全版」DJテクノウチ~音楽関係者必見の入手困難書



第一章と第二章に比べて、第三章と第四章では、評論の中身はないに等しいですね。

まず、第三章ではジャンルという不毛な戦争が起こることを踏まえ、ノリベースで各種音楽解析をテクノウチはしています。そしてその先にあるJ-COREという、ノリの大別を踏まえたうえでソイツとは何ぞや?ということを論じています。なんでもテクノウチはJ-COREアーティストとされることが多いらしく、ご本人も海外の英文紹介のJ-COREを読んで、自分がそのジャンルのアーティストに分類されていることに驚いたようです。

というのも、J-COREというジャンルは日本人の作った風のハードコアテクノのことであり、ある種地類文化といってもいい音楽内容です。では日本人の作った風ハードコアテクノとは何か?それは日本人の作ったようなガバ・ハッピーハードコア・ナードコア、果てはチップチューンまで含まれる…というのです。英語版のWikipediaにもこの解説記事がありますが、かなり興味深い内容です。しっかりイオシスも代表的アーティストに入ってるんだよなぁ…つまりネットカルチャーに近い、という側面を持ちうる音楽ジャンルなんですね。

そもそもハードコアというジャンル内容は定義・境界の曖昧なトコであり、人によってはハードコアテクノとハードコアパンク(ロック寄り)と混同されることもままあるそうです。この辺りを論じて本書は終わります。本書の幕引きが、J-COREとは何か?ということを最後に論じることで降ろされるわけだね。ですが、そもそもJ-COREは定義、というよりかはそのジャンルの自由さ、ネットカルチャーに基づいた音楽創作の自由な側面を持っているがため、テクノウチが最後にこの論を持ってくるのは適切な気がいたします。いわばJ-COREはジャンルにこだわらない音楽傾向・特に最近の自由なネット上の音楽プロデューサーの象徴だともいえそうで、この辺りはテクノウチやるな!という感じです。


ここらで本書のレビューは大概終わってると思います。本書のミソは第一章・第二章にあって、第三章・第四章にはないと思う。んだから、第一章・第二章を読めば、第三章・第四章は流してもかまわんと思う。テクノウチが言うように好きな音楽を好きなだけ聞ければそれでいいし、新しい音楽を自由な感覚で作れればおそらくそれは本人にとっては(少なくとも)満足できるもの、なのでしょう。読む音楽、自由と不自由の中で自由を追い求める読書感をもたらしてくれる、そういう意味で本書は音楽論として多くの音楽関係者が読むべき画期的なものだと思います。

<了>