【連載:クマでも読めるブックレビュー】「メタネーション」~合成メタンの可能性を感じさせるトリセツ的良書 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】「メタネーション」~合成メタンの可能性を感じさせるトリセツ的良書



メタネーション – エネルギーフォーラム

本書「メタネーション」は、最近メディアで盛んに報道されている温室効果ガス削減手法の中でも、マイナーな認知度しかない、メタネーション(サバティエ反応)を主題に取った解説書である。サバティエ反応はフランス人のサバティエさんが1900年代前半に発見したので、その名がとられている。簡潔に化学反応式で表すと次のようになる。

CO2 + 4H2 ⇄ CH4 + 2H2O(ΔH:発熱反応)

簡単にメカニズムを説明すると、貯蔵した二酸化炭素を利用し水素と、触媒を使って化学反応をさせる。するとメタンと水が発生する…というわけだ。発生したメタンを都市ガス網で普及させ、各家庭や企業で使ってもらう。本書が提起するメタネーションの最大の利点として既存のインフラをそのまま使える、ということがある。例えば、ガス管をメタンガス管として代替して取り扱えばいいので、先進諸国でも後進諸国でも既存のインフラを駆使して、メタンを配備することができる現実的手法だ、としている(また、合成メタンはエネルギー効率が水素に比べ悪いが、水素と違い既存のインフラを活用できるので実際に詳細を試算しなければ分からん点も多い~そのためエネルギー効率をさらに良くする手法が開発中)。

🤔<おっと待てよ?これメタン燃焼時に二酸化炭素出すから結局同じじゃね?

いい線行ってんじゃん。確かにそりゃそうだ。だが、メタン燃焼時に使う二酸化炭素がサバティエ反応の時に使う二酸化炭素と重なり、生成分-使用分となるため、温室効果ガスの削減に結果的につながり、カーボンニュートラル(正確に言うとカーボンリサイクル)に与することができるわけである(ただ、メタネーションが多国籍間で協調し実行されるため削減量がどちらの国にカウントされるのかという国家間の問題はある)。『相殺されるので、実質排出量0☆』というのがFA。

🤔<でも、そもそもどっからサバティエ反応のためのCO2持ってくんの?

いい線行ってんじゃん。もちろん既存のビルとか工場・火力発電所から調達するのが基礎となる。これはCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)というもので、CO2を貯蔵し、使うとき取り出せばよいのだ。ただ、CCSについては疑問的な見方もあると聞いた(そのため色々と実験で試行錯誤中らしい)。手法は様々、化学反応・物理吸収・吸着・透過といった原理を応用が探索されている。それぞれ長所と短所があることが本書に書かれている。

もちろん何分様々な手法が複雑に組み合わさっているので、メタネーションによって効率が落ちたり、何らかの支障が出る例外もある(例えば、火力発電源のCO2を使うといっても、それが石炭火力か否かという分岐もまたあるため、総排出量がどうなるかは吟味しなければならない~この点を巡っては、様々な論文が書かれている)。「正しい道は適宜客観的かつ科学的に定めるのが現実的」と本書もこの難点を引じている。

あと残りの章では、様々な試みの実例を数多く挙げている。例えば、車両関係の会社の取り組み・船舶関連の取り組みなど…国内外の企業・団体の取り組みが挙げられている(この点はトレンドな話題なので割愛する~読みたい人は買って読んでください)。メタネーションの最新技術と革新事情および制度的課題を紐解いたところで本書は終わっている。本書はある程度科学的な論文を参考にして簡易試算も行っているので、メタネーションの初歩を歩こうと志す科学者にもオヌヌメできる書籍になってる。

※書影:Amazonより引用.

<糸冬>