なんかねぇ…小粒なものが多いんだよね。インディータイトルとして有名どころは押さえておらず、かなりニッチなタイトルが数多く上る。だから、まず、目につく悪いところを具体的に挙げていって、最後に良いところ・および賞賛すべき点までをも挙げて〆ようと思いマッスル。
・”本気で薦める”にしては、タイトルがニッチ過ぎる
本書のタイトルは、「ゲーマが本気で薦めるインディーゲーム200選」である。本気で薦めるってあるよね?これマジで本気で薦めるゲームタイトルになっているんだろうか?例えば、「Goat Simulator」や「Celeste」を本気で薦められるタイトルかな?っていう疑問が沸いた。前者は、ヒツジになれるシミュレーターとして有名だけど、ヒツジにしかなれないゲームだし、後者は本気で薦められたタイトルにしてはジャンルが高難度ジャンピングシミュレーターゲーである(後者に関しては、別のとらえ方も実際可能だが)。あとはホント~~~~~~~に細やかなタイトルが多い。というか気づきにくいタイトルが多い。そういう意味では、正確には本書は「ゲーマがコアSteamerでも知られていないゲームもガイドするインディータイトルガイドブック」というほうが正しい気がする。そういう意味では、絵にならないコンセプトに基づいて、”紹介本位”で描かれたプロットに沿っている本になってしまっているように思う。わかりにくいタイトルセレクションになっていて、”本気で薦める”にしては描かれていることのレンジが、大ウケしないであろうという意味で『狭すぎる』。
・深追いしないゲーム紹介にとどまる
200ものタイトルを挙げているので、本書はあくまでインディーゲームの紹介のための本である。レビュー文はまったく掲載されていない。それを期待してみると、レビュー文ではなく各タイトルその当該タイトルごとに一ページだけ割かれて紹介されているに留まるゆえ、肩透かしを食らう。例えば、「Terraria」だって「Minecraft」だって多くのゲーム内コンテンツや文化・カルチャー・ゲームの制作背景を多く持つタイトルなのに、それらの詳細はまったく追われていない。だから、”紹介”を期待しては読めるが、『なぜそのタイトルが一押しなのか?』『どこが具体的に面白いのか?』『そのために使われている工夫やアイデアはどこにあるのか?』といった”深み”を期待して読むべき本ではない。どこかズレを感じる読者層も多くいるんではと思わされる構成である。
・え?ここにセレクションするか?という各章の配置
セレクションするタイトル欄が適当すぎる。例えば、「Into the Breach」は、確かに中毒性高いタイトルだけんども、一方で高難度ゲームのところにもセレクションするべきタイトル。「Fall Guys」はどちらかというと爽快さを感じるタイトルではなく、バカゲーにセレクトするべきタイトルでもある。他にも、「Enter the Gungeon」や「Binding of Isaac」といった傑作タイトルももうちょい感慨深いように工夫して配置できんかったもんか?全体的に書としてのアイデアやコンセプトの点で足りない点が多い気がやはりする。もうちょっと考えて書としての構成をよっく考えてほしいと感じた。
・アドベンチャー系タイトルを多く挙げたところ
実はSteamはエモいタイトルにADVタイトルが多い。例えば、本書も挙げるように「ジラフとアンニカ」「Coffee Talk」「VA-11 Hall-A」「ゆめにっき」などはエモいものも含めて、必ずゲーマならばプレイしておきたいタイトルといっても過言ではない。こういう小粒ではあるものの、欠かせないタイトルも盛り込んでいて、ニッチ過ぎるタイトルが多い反面、しっかり押さえるべきADVゲームは広範に押さえているな!と感心させられた。つまり、このあたりは、諸刃の剣であって、本書の悪いところでもあるが良いところでもある、と思わされた(ちょっと複雑なロジックだけど…)。
・Steamの開発話などコーヒーブレイクを交えたところ
Steam黎明期の時から、「Counter Strike」「TF」初代などのタイトルの経緯、配信に至る経緯などまとめている。これは、セレクトする章の合間合間にコーヒーブレイクのように若干長文の小話がつらつらと書かれているところを指す。確かにこういったうんちくも必要だろうと思う。特にインディータイトルの紹介だから、緩急・調味料を付け加えるといった感触では、こういったコーナを本書にわざと設けた点は、書籍の構成アイデアとして妥当な範疇に収まっていると思う。だから、これは良い点。
・”Steamだけではない”という観点も盛り込んだところ
すべてがすべてSteamで配信されているわけではない、という点をしっかり書いている。インディーゲームの未来をおぼろげだけれどもスパイス交えて書いた点はいい。例えば、『こんなに創造的なゲームがフリーであるんですよ!』『itch.ioとかのサイトもあるよ!』っていう風に、可能性・ポテンシャルを感じさせるように、フリーダムなゲーム制作現場のあり方をなんとなくだけども、模索したであろう点は賞賛に値する。こういった工夫はかなりのSteamerであってもなかなか読み取れない点であって、俺らがイングリッシュネイティブではないことも災いしてよくよく見逃しがちなので、気づきにくかった点を具体的に挙げて、それを比較的詳しく、しかも容易に理解できるように書き込んでいるのはGoodだと思ったよ。
まぁお勧めはできる。買うべき本であるかどうか?は難しいところ。
本書は新書みたいなスタンスなんに、定価1100円といかんせん小さい買い物ではないからね。
<了>