『令和のアストロノーカ』は作られるか? | ゲヲログ2.0

『令和のアストロノーカ』は作られるか?



勝手に検証シリーズホニャララ。
モリカトロンの立ち位置

モリカトロンは、ゲーム「アストロノーカ」の開発会社ムームー代表の森川氏が設立したAI専業のゲーム関連会社[1]。公式のTwitterアカウント[2]もYouTubeアカウント[3]も開設されているが(騙る人がわざわざ出てくるとは思えんのでおそらく公式)、ムームーが有限会社のころから、開発にサブとして接する、マネジメント・アナライズ・コンサルテーション専業な雰囲気は、森川氏がモリカトロンに経営の主軸を置いた今でも、いまだ健在のようだ。

なんだかんだ言って、インディーだって参入にはカネがかかる

これは「がんばれ森川くん2号」や「アストロノーカ」が大ヒットしなかったという経験論からきているような気がする[4]。ゲーム開発を直にやるにはカネがなんだかんだいってかかりすぎる。例えば、2DACT「ラムラーナ」だって、クラファンを募る必要性と計画性があるぐらい[5]。ハードもソフトも進化して、ヒットIPを作る敷居は低くなったとは言えども、いまだに積極的にリスクテイクする方法は嫌悪されやすい。だから、GameWithはリスクをテイクしない方法でゲーム開発に携わっている。これに近い態度をモリカトロンも目指している節がある。新規IP開発は、中小企業にとっては社運を賭ける必要がある、つまり、なんだかんだいって大金がかかるのだ。

学会からは称賛された”バブー”というAI実装

思うに森川氏率いるムームーが当時作った「アストロノーカ」ほど画期的なゲームは、いまだあたしの経験上見たことがない。このゲームはちょうどMSのKinectが学会を風靡したころより以前に作られた、遺伝的アルゴリズムを用いた世界でも先駆的なAI搭載ゲームだった。そして、ゲームの真価よりも、ゲームのAI(バブーの挙動)で注目を浴びてしまい、タイトルとしては爆発的なヒットには至らなかった。逆から言えば、AI実装面で、最近学会から注目を浴びるタイトルになっている、という紆余曲折な経緯あるタイトルとして有名になった。今に至って、ようやっと、知る人ぞ知る伝説的なゲームとして認知される総合力のあるタイトルになった、というわけだ。

タイトルのバランスどりと『令和のアストロノーカ』

AIの実装面ではいまだに最有力タイトルのうちのひとつであるものの、それが世間一般に受け入れられるまでは時間がかなりかかった。つまり、先を行き過ぎてヒットを飛ばせなかった稀有なタイトルだった。反面、”ノーカ”としての作物作りやその作物種の交配アルゴリズムは古典的なものだ。作物は複雑なアルゴリズムに沿って育つわけではないし、単純な経年で短期的に刈り取ることができる。交配もシマイモの通常種さえあれば、あとはそれを交配する性能向上の作業ゲーになっているのも事実。交配することで、決定的な種の性能評価は乱数的に定まってしまっている。交配や作付け・収穫まで複雑なアルゴリズムを持ち込むことは、ゲーム全体として不具合をきたしてしまうからそうなったのかもしれない。そうして、マーベラスとえーでるわいすのタイトル「天穂のサクナヒメ」の登場(令和2年リリース)を待つまで、作物育成ゲームというジャンルは陽の目を見ないこととなる。この間およそ20年以上、では、『令和のアストロノーカ』が初代アストロノーカの後継作として作られるだろうか?というと、あたしはその可能性かなり高いと思う。

『令和のアストロノーカ』リリースの可能性はあるか?

まず一つ目に、正当な後継作として期待できなくても、精神的な後継作が作られるポテンシャルのあるタイトルだということは確かだ。タイトルそのものが特許などを取っているわけではないし、タイトルのイメージだけで特許や排外的な権限を持てる根拠は当然ないわけで、あくまで精神的な後継作をだれかが作ろうという動きを見せる可能性はゼロではない。そして、森川氏がイベントでいうように、”続編”、つまり「アストロノーカ 2」が作られるという可能性もゼロではない[6]。「サクナヒメ」が大成功したという事例も含め、二重の意味で『令和のアストロノーカ』は作られる可能性がある。その主体が海外のデヴェロッパであってもおかしくはない。

多忙な有限会社ムームー~『AI時代のものづくりコンビニ』

実は、ムームーが有限会社だったころにコンタクトを取ったことはあたし自身あった。プロトタイプを森川さんにも見てもらえたが、とにかく開発業務を主にしたタイトルの実装やコンサルテーションの領域面ではニッチな依頼が多数舞い込んでいるようだったし、あたしの要望は通らなかった。GA(遺伝的アルゴリズム)AI搭載ゲームとしての「アストロノーカ」のリリースで打ち立てた評判は、当時から評価されていたようで、彼らの高い学力は、いわば『AI時代のものづくりのコンビニ』として連綿と受け継がれ確かに生きているように思う(そうでなければ、モリカトロンは会社法人として設立されなかったはず)。いずれにしたって、これほどの完成度を誇るタイトルが後継作なくして済むわけがないだろう、そう考えてる。


[1] モリカトロン株式会社 | 日本初のゲームAI専門会社 https://morikatron.com/ (2022年8月27日アクセス)

[2] モリカトロンAIラボ(@morika_ailabo)さん / Twitter https://twitter.com/morika_ailabo (2022年8月27日アクセス)

[3] モリカトロンAIメディア – YouTube https://www.youtube.com/channel/UCZBXLrPpaKG3G7nqmTQWePw (2022年8月27日アクセス)

[4] 時代を先取りし過ぎた『がんばれ森川君2号』『アストロノーカ』のゲームAIはどのようにして開発されたのか?:懐ゲーから辿るゲームAI技術史vol.4 | モリカトロンAIラボ https://morikatron.ai/2022/03/gameai_history_04/ (2022年8月27日アクセス)

[5] 注目インディーゲームクリエイターたちが、創るために、売るために、広げるために――の事例を語る【CEDEC 2014】 – ファミ通.com https://www.famitsu.com/news/201409/04060676.html (2022年8月27日アクセス)

[6] 続編の可能性は? 革新的AIゲーム『アストロノーカ』20周年を記念して齊藤陽介氏、森川幸人氏らスタッフが再結集したトークイベントをリポート | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com https://www.famitsu.com/news/201901/18170742.html (2022年8月27日アクセス)