【連載:クマでも読めるブックレビュー】 「みんなの意見」は案外正しい~J・スロウィッキーが紐解く株式の原理 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】 「みんなの意見」は案外正しい~J・スロウィッキーが紐解く株式の原理



「みんなの意見」は案外正しい

本書が指摘するように、株価は単にいつでも上がればいいというものではない。もしそうであるのならば、バブルはいつでも正しいということになる。だが、いつでもバブルは人々の非合理的な集団行動に基づいて成り立つ悲劇である。本来、株価は株式会社を公平に評価した結果、それにより適正な価格をとるべきものである。そうした意味では、株価はスカラーではなく、ベクトルであるべきなのである。だが、人々はそれを忘れ、合理的に振舞おうとして非合理に走り、客観性を失う。スロウィッキーが指摘するように、これはある種必然である。なぜかというと、株式市場を推し量る目安や目盛りが、”その時には”まったくないからである。つまり客観的、かつ、合理的に、正当な手法で株式市場を株価というベクトルで計算することは、到底無理なのである。例えば、A➤Bという時系列データに基づいて、計量したとしてもそこにはA➤Cという別の時系列データが、タイミング的にせよ、あるいはショートにせよロングにせよ、意外な形で関わっていることをだれしもが否定できない。常人がバックミラーを見ながら車をサーキット場で安全に運転することは不可能なのだ。つまり、いずれの統計ファイナンスの効力を見計らっても、そこにはいずれかの主観がどういった形であるにせよ不完全さを助するように介在することは間違いないのだ。ヤスパースが言うように、主観なき客観は、市場取引でもあり得ないわけだ。