Steamでもフルモーションビデオ(FMV:Full-motion video)のタグを見ることが多くなってきた。一体これは何のことでどういったゲームについて回るタグなのだろうか?簡単に言えばFMVとは『録画された動画ファイルを挟む形で語られる物語性あるゲームのナレーション手法』(Wikipedia)のことを示す。まず、代表的なタイトルの事例から見てみよう。
例えば、今検索かけただけでも、その特徴は大雑把に把握できる。サスペンスものとして高い評価を受けた「Late Shift」(2017年)・あるいはホラーものの「黄泉~悪夢のアイランド~」(2023年)にもFMVのタグがついて回っている。思うにホラーとかADVゲームについて回ることの多いタグで、実写系で選択肢のあるゲームはFMVに親和性が高い部門なのだろうナということが推察される。
FPSでも最近その傾向を持ったゲームが出てきた。それが「Unrecord」(発売日未定)だ。デヴェロッピング・パブリッシング共にフランスのDRAMAが手掛けているタイトルで、発表当初は“これフェイクじゃねえの?”と話題になったことで記憶に新しい。4Gamer.netの松本がこれについて簡単なレポート記事を書いている。これによれば、たしかにゲームの発想としてはFMVに近いものがある。だが“そうではない(=FMVではない)”と作者は主張しているという(事実ゲーム自体はUE5で作られているという)。そう、「Unrecord」は厳密に言ってFMVではないわけだ。なぜだろうか?
そもそもFMVとは、いちゲームナレーションの手法のことを指しているだけであって、それがゲームの構成要素にこそなれども、そこにいかにもゲーム的なインタラクティブ性があることを示すわけではない。つまり、『FMV自体はゲームの一部分であれども本来ゲーム性のことではない』のだ。あくまで、FMVとは日本語で言うところのゲームムービーのことを示す言葉であるわけだ。そもそも、そういうものなんである…としか言いようがない。
…とは言ったものの、この手の議論は水掛け論になってしまうので、厳密に定義することはぶっちゃけ無理☆である。先に書いたように”Steamでタグ付されているからFMVで間違いない!”とすることも土台無理。そもそもSteamのタグはけっこう柔軟に切り貼りできる機能性を持っていて”ジャンルフェイクだ!”と逆に指摘できるものも多い。これは数多くゲームタイトルを観察してきた往年Steamerならば納得のいくところだろう。ゲヲログ2.0でも過去、ローグライトゲームとローグライクゲームの違いの定義をしてみて、良い反響も悪い反響もあったことも、双方ともあたしは覚えている。
【考察して分かったことまとめ】
言語が人間を仲介する概念であることを意識すれば自然とわかるだろう。
何事もそうだが、言葉の定義は時代が変れば、解釈も従って変わっていく。
ゲームのようなインタラクティブ性の強い余興ではその傾向はより強いのだろうナ。
<了>