「テンセント」の海外への出資先一覧を読み解く | ゲヲログ2.0

「テンセント」の海外への出資先一覧を読み解く



テンセントがらみの記事が評判いいようなので、Wikipediaに乗っている”彼ら”の主要海外出資先企業一覧を調べて邦語化してみた。この表から傾向を分析してみよう。Wikipediaによれば、☟こうなっている。保有株式比率が52%以上のときに子会社…といえるらしいPolygon)。

会社名
会社の国籍
株式保有比率
初期投資開始時
最終投資額変更時
Riot Gamesアメリカ100%2011/22015/12
Funcomノルウェー100%2019/92020/1
Leyou香港100%2020/12
Sharkmobスウェーデン100%2019/3
Supercellフィンランド84%2016/6
Grinding Gear Gamesニュージーランド80%2018/5
Epic Gamesアメリカ40%2012/6
Pocket Gemsアメリカ38%20152017/5
Fatsharkスウェーデン100%2019/12021/1
Sea Limited (Garena)シンガポール25.6%20102019/3
Dontnod Entertainmentフランス22.63%2021/1
Marvelous日本20%2020/5
Netmarble韓国17.66%2018/9
Kakao韓国13.54%2012/5
Bluehole Studio, a subsidiary of Krafton韓国11.5%2018/8
Frontier Developmentsイギリス9%2017/7
Sumo Groupイギリス8.75%2019/112021/7
Activision Blizzardアメリカ5%2013/7
Ubisoftフランス5%2018/3
Paradox Interactiveスウェーデン5%2016/3
Remedy Entertainmentフィンランド3.8%2021/5
Miniclipスイス多数2015/2
Klei Entertainmentカナダ多数2021/1
10 Chambers Collectiveスウェーデン多数2020/10
Yager Developmentドイツ多数2020/12021/6
Voodooフランス少数2020/8
Bohemia Interactiveチェコ少数2021/2
Payload Studiosイギリス少数2021/2
Discordアメリカ2015/2
Roblox Corporationアメリカ2020/2
Lockwood Publishingイギリス2020/11
PlatinumGames日本2020/1
Aiming日本2014/12
Wikipediaより引用

では、この表からわかることをまとめてみる。

・アメリカへの出資は頭数として突出して多くはない(表に示されたもので6件にすぎない)。

・ただしRobloxやDiscordなどアメリカ出身の超有名ユニコーン企業がその中に含まれる。

・スウェーデンへの出資先が意外と多い(表に示されたもので4件に上る)。

・イギリスや日本への出資にも積極的である(スウェーデンと同じく4件に上る)。

・スウェーデン・イギリス・日本の次点でフランス(2・3件)が続き…

・数こそ少ないがゲーム市場でプレゼンスのある香港・チェコ・ドイツ・シンガポール・ニュージーランド・ノルウェー企業が続いている。

といったところだろうか?テンセントが算段なく、投資先を決めるはずがないのでこれらの投資先については戦略があるはずだ。例えば、Riot Gamesを完全に子会社化しているのに対してActivision Blizzardにはそうはしないというのも何らかの理由があるのだろう。ゲームコア勢力のうちでは、地味に経営に苦しかったFuncomを買収し子会社化しているのも見逃せないファクター。少数保有とはいえチェコのBohemia Interactiveについても手先を伸ばしている点では、国内ゲーマたちの拒絶感はでかかったのも新鮮な記憶だ。

また、Steamerにとってお馴染みのKlei Entertainmentなどのインディーゲーム系企業も傘下に多い。決して規模は大きくないものの世界を代表するゲーム企業のうちのひとつで、パラドゲーという愛称でそのゲームコンテンツが知られるParadox Interactiveにも出資している。ほか、ユニコーン企業RobloxやDiscordなどにも出資している。これらの期待値がとてつもなくでかい、今世界で最も注目を浴びている企業にも一定以上の影響力を持っているとみられる。では日本はどうだろうか?

日本市場も彼らにとっては地理的に重要なはずだ。アニオタにも馴染深いMarvelousや、深いタイトルを作ることで知られるPlatinumGames、アプリゲームで知られるAimingにも出資している。特にコンテンツ全般に強いMarvelousには多数の株式を保有するなど特筆すべき点があるといえるだろう。地味にネットでも知名度の少ないアプリ系の会社であるPocket Gemsは、Wikipediaの引用元では国籍が日本になっていたが、これはサンフランシスコ本拠地のアメリカ企業の間違いだろう。

おそらくテンセントとしては、子会社を多く持つことで『社内民営化』を推し進めるということが大局的な戦略にあるはずだ。これは、昨今の製薬企業と似ていて事業のシード探索は子会社を多く持つことでそれだけで十分達成可能だという戦略構想にあるものと思われる。その事業の最適化は本社の高給取りが多くやるべきことではない。本社機能は限定的なエリートにまかせればいいわけであり、挑戦心の大きい・やりがいを感じるハードワーカーに子会社の経営は任せて上から命令する…という形をとればいいのだ。テンセントがやっていることは”こういったこと”だとあたしは勘ぐっている。

総じて見てもこれは彼らの代表的投資先を見ただけであって、更に細々としたものや記載/ニュースの類が表明されていない出資先の会社も多いことだろう。また、中国国内への出資(bilibiliなど)についてはまた別の機会に考えてみたいと思った次第である。