「天穂のサクナヒメ」ほど心を揺さぶる和製のゲームはこれまでなかった.今後、マーベラスには、有力な関連IPをうまく活用した上、心の芯に届くようなメガヒットタイトルを生み出すことが望まれるだろう.
あたしも”マーベラスがらみ”というと院時代とある女性の先輩が、『絶対マーベラス行きたい(就職したい)!』と就活ガンガッテいたことを思い出す。中国からの留学生で、日本語がペラペラだったが、夢がかなった否かはわからん。いずれにせよ二ポンのエンタメ業界のどっかで頑張っていることだろう…(遠い目)。
そのマーベラスといえば、あたしにとってはズバリ”エンタメそのもの”である。日本純産のゲーム会社であり、開発もパブリッシングもともに手掛け、さらにゲーム以外にも様々なエンターテインメント事業を手掛ける器用な会社といった印象を今でも持っている。現在、会社のHPを見てみても、相当広範な事業を手掛けていることがよくわかる(マーベラス公式サイト)。オンラインゲーム・コンシューマーゲーム・アミューズメントにステージ・アニメーション・果ては音楽まで。ベンチャー風土のあるチャレンジブルな会社、という印象…当の先輩が第一志望とする理由もよくわかる点だ。
Steamにおいては、マーベラスその名声一気に高めたものは、やはり「天穂のサクナヒメ」だろう。やり込み度高い戦闘と本格派すぎる農耕を可愛らしいキャラクターが行う、農林省ご用達として話題にもなった、国外にも通用したミリオンヒットIP(ファミ通.com)。エーデルワイスと組んだとはいえ、マーベラスはこのIPで快挙を達成した。マーベラスが開発を手掛けた、代表的なメカアクショナルタイトル「DAEMON X MACHINA」でさえ、高い評価は得られなかった(PC版Metascore 72:ハーフミリオンタイトル)のに対して、だ。しかし、同社の担当している有力IPは「天穂のサクナヒメ」だけなわけでもない。
その次点が間違いなく同じく農耕系のシムIP「牧場物語」か「ルーンファクトリー」だろう。確かにこれらは当初Steamに”向かって”リリースされたものではなく、SwitchなどのCS機に”向かって”リリースされたものだ。だが、マーベラスらしさの出ているロングセラーシリーズ・有望株なことに間違いない。ただし、エリック・バロンによる会心作「Stardew Valley」に随分とオカブを奪われてしまったのもまた歴然たる事実だ。「Stardew Valley」は2022年直近の情報では2000万本超出荷されていることが明らかになっており、本来マーベラスがらみのIPが売れるはずだった分をすべてかっさらっていってしまった、という見方もできそう(AUTOMATON)。事実、一介の個人開発者に過ぎないエリック・バロンは同作が『「牧場物語」といった和製IPに強く影響を受けている』ということを明言している。なぜ、マーベラスはメガヒットを逃したのだろうか?