東京工科大学:渡辺研究室HPにある論文倉庫はゲームに関する優れた論考の集積地 | ゲヲログ2.0

東京工科大学:渡辺研究室HPにある論文倉庫はゲームに関する優れた論考の集積地



今日、ゲームネタをネットで探っていたら、東京工科大学:渡辺研究室HPの論文倉庫をたまたま見つけた。論文を見て驚いたんだけど、そのうちどの論文もレベルが極めて高い。数式を用いたものや用いなかったものもある中、どれもが個々の筆者特有の個性的なアプローチを実践出来ている。

学士論文としても極めてレベルが高いものが多くて、あたしが特に注目したのは、村本の「反復可能なマルチストーリーの構築支援手法の提案」という論文だ(指導教員の三上先生~現教授~がまだ講師だったころに書かれた2008年の卒業論文)。では、村本の研究のどこが素晴らしいのだろうか?あたしは三点挙げたい。


論理的整合性が取れている点

この論文は論理的な整合性がしっかりと取れている。ゲームシナリオには起承転結が必要で、その解説をするにあたっても起承転結は必要であり、矛盾の轍を踏まない必要がある。むしろ、プロライターの竜騎士07のように一次シナリオに論理的整合性が取れていないことが批判されることも多い中で、この二次解説的な論文は極めて精緻に論理的な整合性が取れていて、しかも、問題意識☞モデルの提示☞モデルの作成☞結論という明確な起承転結がある。読者を引き込むような論文、しかも魅力的な論文になっているのだ。

システムに対する客観的な意見を強調している点

基礎理論を、先行研究を交えながらモデル化し、しかも深い考察ができている。このことにより、構築する(またされてきた)ゲームシナリオ的システム系に対して客観的なモデル的意見が付加されていて、ゲーム、というあいまいで大局的な括りの中で、自分が頭で考えたオリジナルモデルが見事に強調されている。(おそらく)シナリオ作成のプロが見ても大変興味深い論考になっている。特に、論文ではゲームシナリオにその論旨の局面を限定することで、内容が具体的になっていて、かつ、テーマを絞った効果的なものになっている。

実際にシナリオを作り検証してみている点

実際に既存のシナリオを補完するように、自前で新しいシナリオを作成・提示することで、具体性が出ており、実証性も出ている。この論文では、有名な童謡である「うさぎとカメ」という既存のシナリオを基軸に、実証的に新しいシナリオを書いている。このことで、単なる理論頼みの意見に留まるものでなく、実証的な研究が出来ている。自分でシナリオを作ることによって、”ザッピング”という”チャンネル回し”の特徴性をより重視して、ゲーム全体を考えることが出来ている。


大学の学士論文は、なかなか成果が出ないもの、筆者自身が自らの知識不足を感じる結果的な目的で書かれることも事実多い。そういう中で、この村本の研究は、すごく独創的でかつ論文として質が高い。また、論文の視点・着眼点も極めて優れている。特に今ハヤリのSteamや現世代機の現役ゲームを見ていても、シナリオ性や物語性という面は、すごく強調される点で、その重要性は年々増しているとあたしは日々感じている。

村本は同論文の中で、ACTゲームは求められるシナリオ性が薄いことが多いと言及しているが、あたしはそうは思わない。最近、ACT性の高いゲームにおいても、そのシナリオレベルでもまた、同等に高い要求の元に作られるタイトルを多く見てきた。人々はゲームというモノを単に買っているだけではなく、ゲームというモノを通じてコトを買っているのだ。その消費傾向に対するレスポンス・見事な回答案になっており、しかも、モダン性や現代性がある興味深い論文だ。

( ゚Д゚)<追々詳細を見ていって追記しようと思う。やっぱ工科大学はレベル高いなぁ…