思うに、現代の世の中ほど、音楽屋が困る時代はこれまでなかったと思う。
三輪学(Manack)もPCゲーム「Clover Heart’s」のサントラ内ライナーノーツで言ってるけど、昔って音楽環境を整えるにあたりプロとアマで金銭的な差がありすぎた。高額なシーケンサーを・費用対効果の望めるだけのスタジオを整える必要がかつてはあった。でも今は、サンプリングされた技術を使って、リミックスを構築できる。YouTubeは権利がらみの問題も解決しちゃって、新しい音楽を作る人々・探す人々の活動の場になっている。当時、デザイナーのプロから称賛されてたMac環境でさえ、数十年前=昔のころとは違って安価にハード構築できるようなった。よーするに、プロとアマの差・その差をソフトウェアや技術の進化がそこを埋めちゃったんだよね。
前、ゲヲログで紹介したReoNaの新譜もトータが作ってるし、冒頭のこの動画だって、えいぐふとの音楽で彩られている。どっちも素晴らしい音楽だと思う。当然、差なんかつけられない。この元凶ってのは(吉だか凶だか知らんが)、音楽がその業界の世の中をフラットにしちゃったゆえのことなんだよな。技術の浸透とともに音楽制作の力は、まるで地球が丸くないかのような理論の下地平線のごとく均一化しちまったわけだよ。アマチュアが新しい音楽をガンガン作って歌詞をつけて、ガンガン投稿して新曲・名曲がいくつも生まれた。そのためのまとめWikiもできた。ヴォーカロイドどころか、バーチャルシンガーが多く生まれ、それは業界のこれまでの在り方から抽象的に浮かび上がり、仮想人格=仮想アイドルとなってインターネットの世界に浮揚し降臨する。だから音楽屋は喰っていけない職業になっているんだよな。澤野のような超一流以外は。
そんなもんだから、音楽の世界もその他の業界同様、ますます平坦な世の中になっていくのだろう。それはAIの力によるものかもしれないし、限られた12音階の世の中の箱の中にいる我々自体に秘められた力学によるものなのかもしれない。自然的な競争が続く限り、イノベーションは枯渇し、新しいやり方を模索する流れはいくつか続けども、その未来はいまだ見えてこない。技術が革新を克服できる保証はないから、世界はフラットになっていく。徐々に音楽の世界がそうなっているように。
きっと、世界はそんな具合に♭になっていくのだろう。