【連載:クマでも読めるブックレビュー】 「みんなの意見」は案外正しい~J・スロウィッキーが紐解く株式の原理 | ページ 3 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】 「みんなの意見」は案外正しい~J・スロウィッキーが紐解く株式の原理



ファイナンスの研究の場合、工学や物理学よりは客観性の度合いは低減してしまうのは必然であることはお分かりいただけたと思う。だが、先に述べたように『儲け』そのものを問題にする以上に、『その儲けにはどこに意味があるのか?』ということを検討することはできる。そして過去の教訓との比較から、その教え・導きを導出することはできるのだ。そういった意味においてであれば、経験科学である統計学やAIを応用し、なるべく多くの良い影響力を推し量り、株式市場を俯瞰することは可能である。本書でスロウィッキーが言うように、空売りの力学の事例も含めて市場の構造は簡単なものでない。だが、理想に答えを近似することはできる。多くの人々が教訓から学び、不確実な未来を団結し結託して見据えようとする努力は、科学の力によって多くの人々が得た力の応用性の一面と似通っている。今日、工学の論文で純粋科学に基づき”証明する”という形式のものを見たことがない、と経済学者の池田は言う。広範な工学とは証明それのみでは成り立たず、その答案を純粋なニュートン型の古典的物理モデルに答えを委任することは間違った判断であるというのだ。そう考えると、工学の分野にファイナンスの専門家がリスティングされているのにはこうした理由付けがあるように思える。なるべく多くの人々をHappyにする…いうまでもなく、これが科学の応用の側面であり、またファインナンスの利益性確保に次いで、その構造性をも加味しなければならない理由である。ファイナンスを利用して、だれかが世界の市場をかき回したり、ましてや、その愚行を正当なふるまいとして擁護したりすることはできない。それは所詮”客観のつらを被った主観”だからだ。