【連載:クマでも読めるブックレビュー】 「みんなの意見」は案外正しい~J・スロウィッキーが紐解く株式の原理 | ページ 2 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】 「みんなの意見」は案外正しい~J・スロウィッキーが紐解く株式の原理



もっとも、この問題が次のように単純に収まるのであれば、物事は簡単に判断できるだろう。『やった、儲けたぞ!』でカタが付く場合だ。だが、それでは、ファイナンスの研究は成り立たない。なぜか?株価は実態の経済にそぐった妥当な値を取ることが重要であり、それが経済の循環のうちの一環である。だが、目先の短期的な利益に走り、『やった、儲けたぞ!』で終わるのでは、研究題材にはなりえないのは自明だ。なるべく客観的かつ再現性を加味するため、『その儲けがどういった立場にあるのか?』ということ、つまり環境学的な意味合いを加味する必要が、ファイナンスの研究にはある。別段、何もこれはファイナンスに限って学問の物差しが功を奏する事例だ、と言えるものではない。例えば、教育学でも統計に沿って科学的根拠を推察することは近年重要さを増しているといわれているが、すべての人々をその研究結果により無条件に救いきれるものではない。それはフーコがかつて言ったように、(教育をはじめとするあらゆる)機関は多くの人々を救ったと同じように、多くの人々を特定の権力から追放するような力学を持つからだ(フーコは精神医学もまたそうだとした)。