【連載:クマでも読めるブックレビュー】「GE帝国盛衰史」~GEの失敗は組織の失敗である | ページ 3 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】「GE帝国盛衰史」~GEの失敗は組織の失敗である



Chapter5 後継者選び

このあたりもほぼほぼ事実確認ですね。でもデータを通じて説明している。インターネット新興企業を甘く見ていたウェルチ。長いスパンで培われたGEの原理にはかなわん…とな。ただ完全に無視していたわけでなく、ある程度のポテンシャルはあるとみていた。実際、報告書などでそのネット用語の言及回数・つまりデータに基づいてその動きを本書は見て取ります。他方、イメルトはプラスチック&メディカルの出身で主流のパワー・アビエーションの出身ではなかった。当初無理だと思われたCEO就任はそれでも直観的にウェルチの感覚で導かれた、イメルトの道だったことが書かれています。んで、後継者争いに負けた人ってのはみんな転職していくんですね。というのも、ダメだから転職するんじゃなくて、ナンバーワンの別の一流会社のCEOを目指すっていうことで転職していく。このあたりの野心はすごいと思いました。事実上切られたのに、実際は同時に別手を打っている…アメリカがなぜすごい”民営化の国”なのかがよくわかる論理ですよね。当のウェルチもまた、ハネウェルの買収に失敗したことが悪く働き退任します。この辺りはEU特有の独禁法がらみでもあるようですね(寡占市場を嫌う政治的な色彩がウェルチを躓かせた、といっていい)。

Chapter6 同時多発テロ

このあたりからウェルチ神話が崩れ去っていく様子が書かれています。おそらく同時テロと同じくして景気のリセッションに入って、タイミングよく(とはいっても本人にとっては悪夢ですが…)イメルトがCEOになります。トランプタワーってのはGE所有なんですね。この中にウェルチが部屋を買って入っていたり、と豪勢な暮らしぶりがパパラッチされる。「勝利の経営」の収益が寄付されるってのは別書に書いてあった通りですが、こういう批判も背景にあったからかもしれませんね~…多発テロ、といえば飛行機がらみでもあるわけで、航空機産業に深くかかわっていたGE、立場上なんらかの責任とらなあかんて。直接でなくとも、間接的な影響を大きく受けますから、相当なダメージだったようです。さらにさらに奇しくも金融部門だけは盛っている状況にあったそうで、ここらは現代の金融とコロナ不況のコントラストが、ちょうど当時の金融と同時多発テロのコントラストに相対的にあったもの、ということなようです。SONYとかもシャープな製品づくりはダメになっていって、コングロマリット目指してるっていう論もあるよね。さて、果たしてGEの栄光は続くのか?次第に暗闇が広がり始める…次章がその幕開けですね。