【連載:クマでも読めるブックレビュー】「Rによる人口分析入門」中澤港~R併用した人口学入門の傑著・定本

統計ライブラリー 人口分析入門  |朝倉書店

神戸大学の中澤先生による、Rによる人口分析本。

概要

まず、冒頭では、日本の社会保障税一体改革の杜撰さが指摘されています。曰く、『人口減社会で需要減が巻き起こるのは当然のことで、それを見越して需給の計算をしなかったのは”愚行”である』とのことです。けっこう厳しい指摘が入ってますね。これは、中国人起業家の宋も言っていますが、常識で考えれば、増えた世代も負担すべき世代になれば社会の重しになるのは事実でありまして…中澤先生なんかは、このあたりの人口学のご専門なようで、かなり貴重で踏み込んだ意見がけっこう書いてあります。統計ライブラリーシリーズにしては珍しく手厳しいコメントが多くある書だと感じます。中澤先生によると、日本では人類学と人口学が、細分化・専門化されていない、とのことです。たしかにその通りだなぁと。アメリカではふたつがデュアル・ディグリーになっていることも珍しくはないそうです。重ねて言いますが、これはかなり適切かつ辛辣な※だなぁと思い、感心させていただいた次第です。

データの出自とグラフプロットの手法

元データの出自もしっかりしています。はじめの方で人口学の基礎にふれた以降すぐに解析元データの提供に入ってますね。まぁ、元データがないとなにもできんからねw。国勢調査のサイトからすぐにフォーマットでDLできる&日本以外のサイトも参照して世界環境での人口学の解析元データまでも紹介されています。その後すぐに(一例として)死亡分析に入ってて(タイムリーにロシア・ウクライナ・日本の比較ができる)、ロシアのウクライナ侵攻が始まりかなりの時間が経過した今、現時点でどのようなプロットができるかという比較もできそうですが、これは難しいですねぇ…というのも『戦争による死者』というのはなかなかポスト現代の世の中では分析しにくい、戦争自体減ってますし…。グラフはggplotの類使っておらず、あくまでRベースのグラフ駆使の方法を採用していて、この書でこの点は一貫しているようです。このあたりも、魅せることに寄らず客観性を重視するご姿勢に好印象を抱きました。

人口構造

次に人口構造の解説に入ってます。主に国内の人口構造解説が主で、関西の地理圏における人口の構造を解析しています。ここはグラフをどのように作るかということも含め、いわゆる小中高の教科書で良く見る、つぼ型だとかピラミッド型だとかの比較検討が為されています。都府県比較も、中澤先生のご専門とされる(でいいんだよな?)アジア諸島国の分析もされてます。人口係数の解説が最後に入り、すぐに死亡分析(上述のロシア・ウクライナ・日本に関するブツよりもより詳細な章として)に繋がってますね。

死亡分析

死亡分析にシームレスに入っており、このあたりではRコードを主としながらも最低限度の分かりやすすぎる、人口がらみの方程式を応用しながらプロットしていくことになりそうです。生存がらみの分析がされますが、級数とかがほんっとに最低限度で平易です。経験的です。これは最近のR本は数式に頼りがちで経験的な証左が少ない書、多いので、本書周辺ならではの良い点だと思いますね。特に本章で感心させられたのは幼児死亡率にふれられている点かな。中澤先生が手掛けているRパッケージのハナシも含め、分析の詳細・モデルの策定もあります。死亡・生存と話が進んでいくと、次は当然、出生ですね。こちらも極めて重要な部分です。

出生分析

出生の部分も基礎的な知識から紐解いているので、本書以外の入門書は不必要です。入門向けにも書かれていて、国内外との比較・年齢世代を考慮したうえでの比較などがあり、さらにさらに実用的です。例えば、この出生の解説部では中絶の統計まで解析されていて、かなり興味深く読めます。フォローアップしてのはじきだしかたも解説されているので、フィールディングご専門の中澤先生らしさも出ていて、重ねて言いますが、好印象です。こちらもパラメータいじりながらのモデル策定にふれられています。僭越ながらホンホンと感心させられながら読むことが出来ました。

結婚と離婚の分析

出生データ解析の次は、結婚と離婚という人類普遍の永遠のテーマですねw。てか理論と実装が極めて平易なので、この章だけに限らず、基礎知識なくして読めます。ここまで読んで大体確信させられました。本書すごい。さすがに結婚と離婚のところは軽くしかふれられなさそうですが(主観が絡む分野なのでw)、それでも他書の追随を寄せ付けない、簡易・平易・実用的な解説になっております。さらには、人口移動・移住者・シミュレーションという都市などの国家像を取り入れる中で重要なポイントに題材は移っていきます。

人口移動・推計およびシミュレーション

大体ここまでで本書は終わってます。人口移動の項では、国内の動向を日本地図とのマッピングを踏まえ検証しているようです。さらにその上に、推計とシミュレーションが為されています。シミュレーションは”らしく”、やはりRといえどもfor loopさせることが必要と言うことで、それなりコーディングの難易度が上がっていきます(それでも詳しくひとつづつ読んでいけばRの初学者でも十二分理解できるはず)。この辺りはコードを主として掲載されていて、一般的な人口学のシミュレーションのやりかたの大概解説が入っています。ここら辺りから各自のシミュレーション手法の開拓にも力入れてほしいみたいに書いてあって、未来の手は学ある若者に託された!みたいな感じです。ここまで書いてきましたが、本書で補完できなかった点・特にこのシミュレーションの点だと思われますが…この点だけは他書でしっかり勉強していく必要性がありそうです。では総評(とあたしごときがわざわざいうべきほどでもないが…w)。

総評

かなり良く出来てます。んで、実用的でもありながら、人口学の基礎も学べました。JK(女子高生じゃねえぞ!)の考え方を踏まえたうえで、経験論に基づくR・統計らしさも表層に出てきていてとても良く出来ている。100点満点でいえば120点以上与えられます。てか本書さえあれば、(おそらく)他書で人口学の入門書を当たる必要は全くないといっても過言じゃないです。ちなみに、書学者向けのR基礎も末尾に書いてアルヨ。素晴らしい、天才の書いた本・この分野の定本です!最後にふと思った疑問。

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※書影:版元ドットコムより.