とうとう、弾幕シューのゲームジャンルで世界一認定を受けている(ギネスワールドレコーズ)、このジャンルで日本を代表するゲーム会社であるケイブが、自社製タイトルのゲーム配信に関してガイドラインを策定した(ケイブ)。勘所をかいつまんで書くとガイドラインの概要はこうなるこうなる。
・ケイブは自社製タイトルを愛してくれるファンを大事に思う。
・その活動を支えるため、基本的には、個人によるゲーム配信を歓迎する。
・その範疇で収益化も認める。
・ただし、この配信許可に際し一定の独創性のないもの(単なる転載等)は認められない。
・ケイブのイメージを損なったり、公共を害すような配信内容もまた認めない。
・ケイブから通達や要請があった場合、それに応じなければならない義務を配信者は負う。
・また、ガイドラインの詳細について、個人による個別の対応には応じない。
・なお、法人によるものはこれにあたらない(個別の対応になる)。
・ガイドラインは逐一更改される予定であり、配信者はそれに順じなければならない。
といったところか。これが民事上の契約に値するかどうかの法的な解釈や、適切な引用の問題などとの関係性は全く明らかではないが、事実上の『フェアユース』以上に該当する内容であるように思う。
『フェアユース』(リンク先:Wikipedia)とは、著作物の利用において、公共性や独創性、その収益性などを解釈し、引用の範囲を超えて、既存の著作物を自由に利用できる、いわば『著作物利用ガイドラインの公共法的な一般化』を実現している、米国法による法的な概念のことだ(残念ながら、日本版フェアユースは検討はされているものの、まだ策定されていない)。
と、これだけではまだわからんだろうから、例を挙げよう。Wikipediaのアニメ・ゲーム記事などには画像の利用として”フェアユース”という条項が付け加えられているときがしばしばあるが、これがまさにそうである(繰り返すように、国内法では検討はされているものの、法的には認められていない)。例えば、「新世紀エヴァンゲリオン」の題字の英語版Wikiepediaにはその利用プロセスも”フェアユース”として併記されている(Wikipedia)。他にも、アニメ動画をYouTubeをアップしてそのリアクションを見るというジャンルもある。ただ、こちらは、おそらくは…”フェアユース”には米国法においても該当しないものと思われる(まだ米国法で判例が残っていないためわからんというのが実際のところだが、少なくとも、限りなくグレーであるのは間違いない)。
今回、ケイブの策定したガイドラインにおいて勘所となる点は、公共性やその利用の性質を鑑みてケイブ自身が事実上ゲーム配信を許可するという点で”フェアユース”とかなり似ているところだろう。さらに突っ込んで言えば、このガイドラインは、わざと曖昧さを残しているという点で、また、収益化の大枠権利を認めるという点で、”フェアユース”以上に大きい権限を個人ゲーマに是認している。”常識的な判断においてゲームの著作物の二次利用を認める”という、かなり画期的な試みなのだ。
もともと、ゲヲログ2.0でも伝えているように、著作物の二次使用については様々な段階が存在している。例えば、アニメ動画やゲーム動画の字幕部分だけをGPLライセンスに適用し、ファンサブやファンダブを認めるというおぼろげだが実験的かつ先駆的な素案もある(これについては以下の記事を参照のこと)。
(; ・`д・´)<さらに突っ込むと別な話になっちゃうからここらで。
なにはともあれ、ケイブも任天堂やアークといった立派なゲーム会社と同じように、自社タイトルの配信ガイドラインを策定してくれたことは、漫画家赤松健の出馬とも相まって、著作法の固定的な概念・過度な規制や縛りに対するアンチテーゼとなってくれるだろう。日本側は海外側と比べて、かつて検索エンジン開発競争で仇なった行いをゲーム分野では繰り返してはならないのは明らかだ(ASCII.jp)。ケイブが示した、その積極性を素直に歓迎したい。