中卒が今更「機動戦士ガンダム 水星の魔女」(第1クール)を見終わったので足りない学力と脳力を振り絞ってレビューしてみる | ゲヲログ2.0

中卒が今更「機動戦士ガンダム 水星の魔女」(第1クール)を見終わったので足りない学力と脳力を振り絞ってレビューしてみる



ハサウェイ論に続く中卒解説シリーズ第二幕です。姉妹記事☟


「水星の魔女」に見るエキセントリックな側面とベーシカルな側面

まず、画期的なのは舞台設定や、キャラクターの魅力ですよね。舞台設定はずばり”学園”。ガンダムシリーズにしては、何分ぶっ飛んでるように見えるけど、実際見てみると現実離れしすぎていなく、ガンダムモノの枠内に留まりながら、特異点となるポイントポイントではイレギュラーな工夫が見え隠れしている。例えば、”決闘”というぶっ飛んだ設定がその工夫のうちのひとつ。けんども、あくまでガンダムらしさのある人物の暗黒面、人物のたくらみの在り方をリアルに描いていて、人間個人個人の判断の結果で物語が進む…というガンダムシリーズらしい特徴を、その舞台設定の点で持っている。ではキャラ造りはどうか。スレッタとミオリネに代表されるように、むしろ本作の主人公はまず女性である点が特徴ですね。キーポイントになってくる登場人物も実は女性主体で描かれており、決して男性基準でなにか物差しを図る…ということではない。これまでのガンダム作品の場合、男性主体で描かれるシーンが多すぎた感がありますが、あくまで本作の場合は、スレッタ・ミオリネ以外にニカ・チュチュなどストーリーを彩る女性陣が、主要な役割や名脇役を担ったりしていて、『女性が男性にどう対するか』といわんばかりのテーマ性に溢れている。ここらも意表を突いてきた感はありますが、リアルに沿った側面も多く見えてくる肝要なポイントになってると思いました。

女性・起業・シミュレーション!(および戦争?)

顕著にそれらが見えるのが、ミオリネが(なんだかんだいって)親父さんの協力も得て起業する、という点ですね。そしてガンドフォーマットを医療技術に応用し、戦争には利用させない!とミオリネ一行が決意する点がまさにリアルなシミュレーション的な題材。これはスペーシアンとアーシアンとの対立に、自社技術を応用しないという社是を抱えながら、ミオリネ一行がある種”平和の決意”をすることで進む、ひとつの”ベンチャー論”ですらあるわけですが、本作ではかなり簡易的とはいえども当たり障りのない、『起業のシミュレーション』に、話のフローがいつの間にか発展している。ジェンダーのような高級な主題を持ってきたか!と思わされているうちになぜか、彼女たちの実行軸は、ガンドフォーマットを応用した平和的な世界観に基づく起業的解決に移されている。ジェンダー論が起業論に、もっと言ってしまえば、”女性による起業”=”女性の活躍”という、シナジー(化学反応)をも感じさせる具合に進展してゆく。このように、『あれ?ガンダムにしちゃぶっ飛んでるハナシだね…』って思わせながらも、しっかり堅実にストーリーの紡ぐ点はお堅く紡いでいる。一見、古参を中心に『なんだこの作品、”ガンダム”って言えるのか?』とすら思わされるような新鮮さを含みながらも、その内実箱開けてみると、ベーシカルなガンダムものの基礎要素=人間の模様を描くことも決して忘れてはいない。鮮烈な光を感じさせるフローストーリーに仕上がっているのですね。

いつ「魔女」たちは闇落ちするか?いつ戦争が始まるのか?

そいで、今後どのように物語が進むか?という点、いつ何時物語が動くのか?という点でハラハラとさせる出来になってて、もっと言えば、いつ何時残酷な物語になってしまうのか?というロシアンルーレットのような、博打打ちのような物語的賭けにだって、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」で描かれる各キャラ・各世界は”参入”している。いつの間にか展開がシリアスになってきており、いつどこで何時、企業間紛争・都市的戦争に突入するのかという点で、厳しいストーリーになる可能性=”霧のポテンシャル”に溢れている。従来からのガンダムが取り扱ってきた、戦争・戦闘・紛争・テロというようなシリアスすぎる闇転回(”闇落ち”と言っても良いでしょう)にも回帰出来ている。つまり、一見、女性が主体なのに・学園という流行りもの(トレンド)を扱っているのに・起業が一種のテーマになってさえいるのに…いつ何時ファーストガンダムのようなbloodな物語に突入するかわからんのです。この戦争の解釈は現実的に見て、モダン過ぎるほどモダンであり、不条理なポストモダンの世の中を描くことにすら成功している。まさにこれは『新時代のガンダム』なのです。


このように本作「機動戦士ガンダム 水星の魔女」は、一見意表を突いてきた、特異すぎるぶっ飛んだ世界観の中でのみ描かれているように思えます。たしかにそういう意味では、古典的なガンダムファンからはけっこう評価が分かれそうな作品です。ですが、一歩引いて、今まで見てきた第1クールを振り返ると『突拍子もない』という表現だけでは済まない、別次元からの評価が与えられて良いであろう、新しい時代のガンダムを堅実にも描いている…このことも確かです。

( ゚Д゚)<本作が『新時代のガンダム』と評される理由は確固たるものがあるんだよね。