なぜ「TYPE-MOON」ブランドはコンテンツだけで売り上げを伸ばすか?【「月姫」に見る戦略】 | ゲヲログ2.0

なぜ「TYPE-MOON」ブランドはコンテンツだけで売り上げを伸ばすか?【「月姫」に見る戦略】

「TYPE-MOON」ブランド化で発売されたコンシューマ用伝奇アドベンチャーゲーム「月姫 -A piece of blue glass moon-」の出荷本数が24万本を超したという。これはADVゲームとしては異例の大ヒットと言える快挙だ。月姫公式Twitterでは、奈須氏のお礼メッセージと共にその旨を伝えている。

このゲームソフトは、実はプレイ動画配信は一切禁止であり、ネタバレ部分も発売後二週間は伏せてもらうという”御触れ”がしっかりと出ている(TYPE-MOON)。なぜ、このような”御触れ”は存在するのだろうか?

前も言ったが、これはその根本にある「TYPE-MOON」というブランドならではの考え方ゆえのルールであるのは間違いない。法的に著作権をブランドや関連企業が持つのは自明だから、基本的なルールを設ける権利が彼らにあるのは当たり前と言えば当たり前だが、そもそもこの方法をとるのは、コンテンツを売る産業故の性(さが)というものだ。

同ブランドは真っ向勝負のコンテンツ産業なので、株価や投機的なアイデアに基づいて儲けられるわけではない。世界に君臨する大企業を目指すのであれば、Appleやソフトバンクのように記者会見を多く開いて、投機的アピールを血気盛んにするのが当然の流行りのやり方なんだろうが、「TYPE-MOON」ブランドの運営者たちはそこには興味がないのだ。以前の投稿で純もいうようにノーツは未だに有限会社だ。もし彼らが投機で儲けることを目指すのであれば、既にとっくの当に株式会社に会社法人を移行させているはずだ。そのほうが経営陣も社員も享受できる資産が格段に増えるのは間違いないのにそうはしていない。せいぜい社員が20名下る程度いるだけだろう。

つまり、今ここに三つの選択肢がある。

・財、サービス、コンテンツを売る。

・投機的ビジネスに走る。

・その双方を押さえる。

このうち「月姫」などの原案元である有限会社ノーツは”コンテンツを売る”方向を向き続けている。投機的ビジネスに走るというのは、子会社を多く持ったり買収したり、金融などの多角化に走ることだろう。ライザップはそうしているし、KADOKAWAはニコニコ動画やフロムソフトウェアを買い取って、ほぼ完全な持ち株会社になった。Appleのやり方を真似て孫正義はメディアアピールを巧みに駆使し、株価を釣り上げて投機で巨万の富を築いた。その”親玉”のいるソフトバンクもM&A戦略の一環でボストンダイナミクスをGoogleから買っている。将来性を見越して多くのスタートアップに投資・投機する方法だ。これらが二番目の”投機的ビジネスに走る”やり方だ。

第三に、コンテンツ産業と投機的ビジネス双方を押さえてしまう方法”その双方を押さえる”手法もある。これがBungie創業者アレクサンダー・セロピアンのやり方だろう。ビジネスを立ち上げて、コンテンツで利幅を取る。そうしてから、大手の会社に会社ごと売ってしまって、自分は新しい会社を立ち上げる…これはコンテンツと投機の双方に通じていないと通用しない、プロ中のプロだけに許されたやり方だ。後BungieはHALOという巨大シリーズを抱え、MSの傘下に入ったり出たりしながらも、今年のホリデーシーズンにシリーズ大作を出すに至った。

「月姫」の売り方が初回特典版を多く持つのも理由がある。これもコンテンツを売ることを投機的アイデアよりも重要視し、あくまでソフトウェアのセールスの売上を見据えているからだ。コンテンツ産業は利幅の取り具合を多く設定できる無形財である。a b c d eというコンテンツの要素を設けて、そのエレメントを巧みに駆使しながら、いくつかのバージョンを設定する。これは経営学の理論上しっかりとした理に適ったやり方だ。MSがWindowsのOSをいくつかのエディションに分けて分割販売していたころのことを思い出してほしい。5つのエレメントがあれば、それらを交互に作用され売りつけることができる。そうすれば、より多くのコンテンツを、熱狂的なファンの購買精神に答える形で売ることができるのだ。

だから、第一の手法を「TYPE-MOON」というブランドがとる限り、コンテンツを売るためのそのリソース管理をしっかりとすることはノーツ首脳陣にとって重要なのだ。コンテンツの多様性を認め、その交絡をうまく機能させることで、売り上げを伸ばすことを容易にできるからだ。その際、重要なのはコンテンツの内容をネタバレしてしまう購買者を、しっかりと、少なくともそのまっとうな権利部分からだけは徹底して排除することだ。だからこそ、CS版「月姫」はプレイ動画を流すことは禁止しているわけだ。

コンテンツの中身をバラすだけの”ちくり君”は、はっきいいえばコンテンツの原権利者からすれば、邪魔な存在に他ならないのだ。