【連載:クマでも読めるブックレビュー】「スペシャルQトなぼくら」如月かずさ | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】「スペシャルQトなぼくら」如月かずさ



LGBTQを取り扱った少年の間の友情・恋愛・青春小説。かなり面白いです。書き出しからして面白いんだよな。女装が趣味、かつアロマンティックでアセクシャルな、友人である久瀬の成績の話から始まって、読者を冒頭から引き込む形が出来ている。天才小説家、スティーブン・キングは書き出しにめっちゃくちゃこだわることで有名だけど、如月先生の本もキングのように全部が全部こんな形なのかね?たぶん、そうではないと思うけど、冒頭の書き出し部から全体的に言えることがあるとすれば、本書の完成度は極めて高い、ということ。これは確かだね。

久瀬と主人公の同性愛な関係性のなかに、折笠や椎名などの第三者がとりなす青春もようは構造としてはシンプル。そのストーリラインは一定の法則性・テンポ感に満ち溢れていて、読んでいて苦ではない書になってる。LGBTQに対して久瀬の両親のように偏見を抱くことなく、読者はそのストーリに没入できて、フィクションの話として彩りを交えながらも読めるし、かたや、ノンフィクションな現実な話としても浮世離れしてない。リアルとアンリアルな行き交いが話を盛り上げてくれていて、現実味のある物語がうまくバランスよく構成されている。これが読感文のテーマになっている(らしいw)というのは納得だよね。THE・健全な性の話、というかw

基本的に話の筋は決まっていて王道なんだけど、そこに様々なリアルな概念を織りなすことで、うまく橋を渡り切ったな、と思わされる。ジュブナイル小説の完成形だとおもうよ。友情・恋愛・青春…どっちかっていうと恋愛要素は少なくて、その境界面をうまく描いている。恋愛<友情<青春という不等号な形が成り立っていると思うな。性差とは関係がなく、友情を抱くことができるという、子供のころ描いた理想の性の道が、青春というマクロな話の流れの中で脈打っている読後感を抱いた。中性的な色彩にあふれたイラストレータ:たなかさんの表紙絵も本当に素晴らしいよ。この世の喧騒に疲れたかた、忙しくてしばらく本を読んでない方、そういったかたでも十分読めると思うな。おすすめです。

あたしにとっては絶対に新刊を買って如月先生を応援するべき書、ということでポチりました…