ブラジル・ドログバそして日本のサッカー | ゲヲログ2.0

ブラジル・ドログバそして日本のサッカー



ディディエ・ドログバはチェルシー時代のストライカーとして伝説的に有名です。そして、私自身ドログバに関して決して見逃せない点があります。それは、彼が慈善活動にかなり精力的に行動しているということです。ドログバは長年育った地であるフランスの代表として活躍する道もあったのに(またそちらのほうが予選通過も本選出場も優勝でさえもずっと楽だったはずなのに…)なぜ出生地のほうを優先してコートジボワール代表として活躍する道を選んだのでしょうか?

ドログバは、「コートジボワールでの内戦はやめましょう」と国民に呼びかけた。コートジボワール代表として、内戦はあってならない、民族間の対立も宗教間の対立もあってはならないといった。そうするとあれだけ粗暴だったテロリストたちも、サッカーの大会期間中は停戦しようとのことになったのです。子供に爆弾を巻きつけて自爆させるような最悪な~人間の屑~が、そのときだけは本来の人間性を取り戻した。祝福され人間に生まれ、テロリストという非人道の奈落に落ちて…でもそれでもまた人間性を取り戻した瞬間だった…ドログバが”そうした”のです。彼はこのほかにも内戦で両親を失った孤児の支援活動にかなり精力的です。国内に病院を私費を投じていくつも建設したとも。

カズがみたブラジルの例(まあ、実際セレソンは白人の富裕層や黒人でも新興層出身が多いんですがね…例外はロナウドとアドリアーノぐらい)をみても、ドログバの例をみてもわかるのですが彼らは国の希望や夢だけではない。日本代表の場合それだけです。ただ、ブラジルもドログバもやはり自国の子供の命を預かって戦うわけです…これはすごいことです。日本が剣道でどの国にも負けないように、日本はサッカーで彼らに勝てないわけですね。

カズは中学校の進路指導の欄に、”ブラジル”と書いて担任に怒られたwだが、卒業後ブラジルに行った。その後、なかなか名門サントスに入団できずに「夢を諦めて日本へ帰ろう」と思ったことまであった。だがブラジルのスラムの公園で、地雷で目や耳、ボールを蹴るための足まで失った子供たちが楽しそうに”ハリボテのスタジアム”でサッカーをしていたのをみてショックを受けた。「俺には目がある、耳が聞こえる、立派なシューズも、立派なサッカーボールもある、なによりボールを蹴るための両足がある…おれは何を贅沢を言っているんだ」そして、カズは夢を叶え、サントスに入団した。たしかにカズに傑出したサッカースキルはなかったものの、ドリブルを得意とし、ヘディング・パス、サッカーの要素をどれも平均以上にまとめた教科書のような基礎に忠実なプレイヤーだった。日本に帰ってからも横浜FCでの活躍は誰もが認めています。

実はこれはごく自然なことで、その競技の心(こころ)を知っているか否かの問題なわけです。剣道では日本はどの国にも負けないでしょう。ただし、サッカーではブラジルはどの国にも負けませんよね。レスリングで吉田選手がリオで負けたけど、吉田選手のお父さんはそれを誇りに思っていると思う。それは吉田の銀メダルが金以上の輝きを持っているから。吉田がレスリングを愛し、その心(こころ)を知っているからです。

先日CLが閉幕してその間スターたちがゴールを量産しています。ただ、その大半はドログバのようになれないと個人的には感じます。それは彼が国の未来を担う子供たちの命を賭して戦うからです。だからドログバは私の中で英雄です。たったひとりの黒人の男の背中に掛けられた希望は国の将来を担う子供の命と等価であったわけです。

ドログバにとってCLでの決勝ゴールはサッカーのゴールにとどまらないわけであり、それは平和を愛し、内戦を止め、子供の命を守るためにみなが一致団結して目指した理想道の本質です。理想からは程遠いのが現実というのが常々ですが、我々がドログバの勇気と行動に見習うべき点は多いと思います。そしてそれが彼から我々に託された”本当のゴールネットと決勝ゴール”であるわけですね!

きっと、笛を吹くのは大人かもしれない。だが次、ボールを蹴るのは若者なんだな。

rayand, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons