ゲーミング・イノベーションとはジョブズ的組み合わせイノベーションである | ゲヲログ2.0

ゲーミング・イノベーションとはジョブズ的組み合わせイノベーションである



あたしがデヴェロッパ:Graverobber Foundationの出してるゲームをふと見て直感したのは、まだまだゲームには可能性がある、ということだ。すずきすずぞうの作った傑作「Path of the Abyss」を引き合いに出すまでもない。人によっては【ゲームはもう進化しない】という意見も根強いが、あたしはゲーム表現にはまだまだ期待が持てると思っている。特に今年はIGNも認める通り、間違いなく昨年に続いてゲーム当たり年になる年だろう。特段書くべきものがあるとすれば、IGNとは違った観点をあたし自身持っているところだろうか。あたしはインディーにすごく期待してるんだ。

すずきの作った「Path of the Abyss」が傑作であることには間違いがない。だが、ゲームの未来を語らった傑作はこれだけではないと今に至って確信している。様々な古典的ゲームに影響を受け作られた実験的なゲームが数多くあり、また未来形でリリースがされる予定なのだ。あたしが大手のAAAタイトルの中で期待してるのは、パマギーチェで有名な「STALKER2」ぐらいしかない。だが、あたし自身はむしろ安価なインディータイトルのほうに焦点が当たっているんだよね。例えば、上述のデヴェロッパGraverobber Foundationの出しているタイトルとかをぜひぜひ見てほしいんだよな。

おそらく、名作「ハイドライド」に影響を受けて作られたタイトル「Ringlorn Saga」の発展系として「Ringlorn Saga Gaiden」がリリース予定である他、Wizを簡素化した佳作「Demon Lord Reincarnation」を既にリリースしていて(こっちは日本語対応済みなのでぜひ皆さんに手に取ってもらいたいぐらい)、さらには3D表現の上での限定的な幾何学的デザインをまざまざと感じさせる「The Ghost」シリーズ(「The Ghost Ship」「The Ghost Tower」及び「The Ghost Hunter」)も既往作として、その存在感を異様なオーラで放っているのが見てとれる。本当に面白そうだ!

こうしたゲームは確かに完全に新しい価値観を感じさせる”完全なイノベーション”ではない。だが、過去のゲーミング・イノベーションの集合体として、その”イノベーティブだった部分部分”を切り貼りして絶妙なバランスで作った、というハナシの筋としては腑に落ちるところでもある。かつて経済学者/経営学者たちはこうした「イノベーションの経済学」でもってして、イノベーションを体系的に理論付けたりしたが、その中で一番あたしが注目しているのが、やはり間違いなくシュンペーターだ。シュンペーターはジョブズに先駆けて、組み合わせイノベーションを提唱した、限定的イノベーション理論を作り上げたことで有名な学者であり、あたしの発想もこれに近い。そういう意味で、むしろこの発想はマルクス的社会主義思想に近いとさえ言える。

ここで言う、組み合わせイノベーションとは、例えば、ジョブズに言わせると「再発明」のことらしい。超簡単に言うと、このご時世、完全に新しいもの、というものはもう存在しない。既往発明されてきたものを再度発見しその組み合わせで・ヴァリエーションで・ヴァリアントで構成されるイノベーションこそが、組み合わせイノベーションの本質である。それがスティーブにとっては、iPodであり、iPhoneだったに過ぎない。iPodの先達は間違いなくSONYのウォークマンだったし、iPhoneの先達もまた、日本産携帯電話やノキアのそれだったことに疑いの余地はない。ゲームの未来もこれに近いとあたしは思う。

聞いた話ではあるが、日経関連のウェブメディアによれば、ジョブズは次のようにイノベーションを定義している。端的に言うと、ジョブズによるところのイノベーションはまさにゲーミング・イノベーションに近いわけだ。しかも、VRだとかARだとかMRだとか…そういうハードがらみのイノベーション由来の定義ではない。純粋なソフトパワーによるところのイノベーションに近いことを、ジョブズは提唱し実践してきたのだ(たとえそれがハードウェアであったとしても)。

ジョブズ氏は、イノベーションの源泉である創造力は「いろいろなものをつなぐ力であり、一見すると関係ないように見える様々な分野の疑問や課題、アイデアやひらめきを上手につなぎ合わせる力」と言っています。

天才でなくてもできる「組み合わせ」のイノベーションとは? | 日経BOOKプラスより引用.

地味な話だが、彼のように世界を変えるイノベーションではないものの、世界のうちの誰かを感動させたり、心動かさせたりするイノベーションがあってもいいと思う。イノベーションの方向は表面上同じ方を向いているかもしれない。だが、その内実は逆の方向を向いているのかもやしれない。だが、摩訶不思議なことにそれはプラトン的イデア・ジョブズ的ひらめきの世界の賜物という点では、共通しているのだろうなと。そう、あたしは思った。

(;^ω^)<ま、その前に「鉄拳8」に手を出すんだろうけどなw