【連載:クマでも読めるブックレビュー】「東大×マンガ」~『関連付けて覚える』ことについて

「東大×マンガ」東大カルぺ・ディエム
※書影:Amazonより.

言っていることが具体的で回りくどくないんですよね、この本。その第一講として始まるのが『関連付けて覚える』ということ。思うに勉強って(特に大学受験勉強ではなおのことですが…)『関連付けて覚える』ことが肝心です。効率よく覚えるためにはひとつの事象を別個に得ただけではだめで、それ+ふたつめ・みっつめと関連付けて紐づけていく。たしかに大学院の研究レベルではこの能力は使えませんが、学部の受験レベルではこういう関連付けの勉強手法ってのは必要とされる。なんつったって効率よく覚えるためですから。読んでて着想を得たことはそこだけで終わりにしないで、無理にでも他の部門と関連付けて覚えることが必須です。つまり、考えながら覚えることが重要になる。この点に絞って解説がされ、手軽に読める漫画論になっているのは好印象。

この本はそのような具体的かつ簡易的な体系論を冒頭言っていて、その後個々の作品解説の項目に入っていく。だから、抽象的でなく実にわかりやすく執筆が為されている。んで、その個々の作品の解説項目ってところですが…作品例でいえば、ハガレンの部分だってそうだよね。例えば、”無から有は作り出せない”というのは作中における錬金術の原則でありながら、それでいて、我々の世界でもまったく同じことが言える。物理保存の法則とかエネルギーの法則ってのはハガレンの世界でも我々の世界でもリアリティーをもってして接して来るわけだよね。本書で執筆陣は指摘します。【ハガレンの世界の中のように一瞬で物理的変異を為すことは不可能だが、タイムスパンの問題さえ無視すればハガレンの世界でもやっていることは現実の世界のそれを全く同じだ】と。ここにもまた、具体的な論議がしっかり地に足のついた形で解説されている。それも、小中校生でも読めるぐらい平易な解説でね。だので、無駄に知識を援用するってのもまったくない。実に簡単・容易な本で、どこからでも読めるってのも良いところです。

じゃあ、ただただもろ手を挙げて賛同できるか?批判できる点は全くないのか?というとそうでもない。例えば、本書はそのように『関連付けて覚える』ことを主張しているのに、あまりに薄い関連付けに徹してしまっているという批判はあっていいはずです。その”悪い傾向”が如実に出てしまっているのが漫画「推しの子」の解説部です。これはいただけないですね。世界観がある、という単純単極的な指摘に留まっていて、じゃあその世界観がどのように具体的に我々の世界と関連しているのか?どういった法則で我々との界面的な関係性を形作っているのか?という指摘に十分答えられていないです。特にざっと読んでみて批判できると思ったのが、この「推しの子」の解説部。思うに”世界設定が国語的である”という単純な指摘だけで、勉強上も研究上も役立たずの論理で全くいただけないです。そういう単純な指摘は浅学すぎて、じゃあどこが国語的なのか?なぜ国語的なのか?単に登場人物の心情移入にだけ入れ込めばいいのか?という点で深みがないんです。このようにもろ手を挙げてすべての作品解説に賛同できる本にはなっておらず、単なるダイアログに挟まってしまっている…そういう浅学さも所々に感じます。本書の批判できる点があるとすれば間違いなくここでしょう。漫画は勉強に使える、のならばそれだけ納得いく関連付けの具体例があるといいのですが、全編にわたってそれが担保されているか?というとまったくそうではない。執筆陣が複数名にわたっているだけあって、ダメな箇所も所々見受けられます。

例えば、「推しの子」を推薦するのであれば、転生的なものと現実的な描画とのギャップ、という観点から作品の深みを見てもいいだろうし、漫画で描かれた複雑な人間構成が次第に収束していって、実は人間という存在的概念に徐々に具現化していく…その様子を確認して見てみても良かっただろうと思うんです。はたまた展開の無双性という点にもっと着目して解説してみても良かっただろう。それが本書のこの「推しの子」解説では全くと言っていいほど出来ていない。物語の構成要素が推理ものに似ているとか『なんとかに似ている系』に指摘がとどまっていて、意味論の深いところが全く見えてこない。『関連付けて覚える』と言っても、書籍にするだけのレベル深みのある『本質的に必要な関連付け』が全く持って足りないんですよね。こうした部分的な指摘・批判は本書に関しては耳を酸っぱくして言っておきます。

…とは言ったもののどこからでも読めて、お手軽な勉強本になっているという点は評価できる。