洋画・海外ドラマの「日本語音声+英語字幕」(反転)視聴は英語学習にどんな効果をもたらすか? | ゲヲログ2.0

洋画・海外ドラマの「日本語音声+英語字幕」(反転)視聴は英語学習にどんな効果をもたらすか?



一部のブログで言われているように、「日本語音声+英語字幕」(通称「反転」)は英語学習に効果がないと断じているものをネット上でいくつも見る。これは本当だろうか?おそらく、この分野の先行研究で最も有名なのが大手前大学・同志社大学・京都産業大学・摂南大学で教鞭をとった経験のある植松茂男教授による論文「DVD映画教材利用時の英語字幕が英語学習に与える影響について」だろう(「メディア教育研究」収録)。この論文の中では次のようにカテゴリー分けがされている(以下上述の論文より引用)。

音声情報と字幕情報にはL1(First language、母国語)、L2(Second language、第2言語:当該外国語:本研究に於いては英語)によるいくつかの組み合わせが考えられる。本稿ではこれらの組み合わせに関して便宜上、最も一般的な「英語音声+日本語字幕」を「日本語字幕」、「英語音声+英語字幕」を「英語字幕」、「日本語音声+英語字幕」を「反転」、「英語音声」のみを「字幕なし」と呼ぶことにする。

この論文は、筆者が便宜上付けた「反転」「字幕なし」については除外しており、論文のコアの部分ではこれらをまったく考慮していないが、論文中に出てくる先行研究紹介の部分に「反転」も考慮したケースの別論文が紹介されている。それによるとこういうことらしい(以下同じく同論文より引用)。

「日本語字幕」、「反転」を実験群に組み入れた比較も行われ、初級・中級レベルの学習者には、「英語字幕」よりもL1情報の恩恵がある「日本語字幕」や「反転」の方が外国語の聴解、内容理解に有効であるとの報告がなされている。(Lambert, Holobow, & Sayegh 1984;Borras & Lafayette, 1994;Koskinen et al. 1996;Yoshida et al.(1998); 田浦・田浦、2001)。 例えば Yoshida et al.(1998)は、初級レベル大学生(n=156)を「日本語字幕」、「英語字幕」、「反転」の3群に分け、10分間の英語映画抽出シーンを見せたあとで内容理解問題に答えさせたが、その結果の分析から、「反転」と「日本語字幕」の「英語字幕」に対する優位を報告し、初級者には情報として理解しやすいL1を含む情報提示が効果があると報告している。

つまり、(孫引きになってしまうが…)冒頭述べたように多くの人が主張するよう、「反転」に効果がないだなんてことは統計の研究上示されていることではないのだ。さらに、植松教授の論文の先行研究となっている大本の論文「Modalities of subtitling and foreign language learning」(「LLA関西支部研究」収録)にはこうある(以下上述の論文の要約より引用)。

本論文は、(1)映像と英語音声+日本語字幕、(2)映像と英語音声+英語字幕、(3)映像と日本語音声+英語字幕の三つの異なる音声と字幕のコンビネーションが、言語獲得の前提となる内容理解にどのように影響するかを実証的に考察したものである。被験者は、日本人中級英語学習者156名で、英語聴解力テストにより3つの等質なグループに分けられた。このそれぞれのグループに、上記の3条件で題材を提示し、その内容理解を調べた。題材にはアメリカ映画の一部を利用した。その結果、(2)→(1)→(3)の順に内容理解が高いことがわかった。この結果を被験者のアンケートなどから得られた結果と総合すると、中級学習者にとっては、多様な情報源(映像、音声、文字)を利用することが困難であり、特に情報が外国語で提示された場合には、外国語字幕→外国語音声の順で困難さが増すことがわかった。本論文では、この結果に基づき、効果的な音声と字幕のコンビネーションの在り方、今後の研究の方向性などについても言及していく。

つまり、L1(日本語)を含んだ情報からL2(英語)学習を始めても、初学者の場合特に問題はないという学術的プロットは出ているのだ。論文のコアな論旨は詳細を当該論文に譲るが、「反転」に英語学習の効果がない、という論拠には学術的な裏付けがないことはこの容易に(上述の関連論文も含めた)論文群の概略からわかることである。

考えてみればわかるが、経験則で講じてみても、日本語音声と英語字幕(「反転」)を裏付け合わせていくと、英語の聴解・内容理解に有効であることは明らかだと思う。アニメを見ているとわかるんだけど、キャラが日本語でしゃべる☞英語字幕がつく☞それを自分で音読しながら自分の耳で英語表現を聞き☞本質的な意味と照らし合わせる…ということで英語力が向上しないわけがないのだ。勘違いしているのは、「反転」には語学的な学習効果がないと安易に断じている人のほうである。