インターネットアイドルという括りは至極曖昧である。総じてインターネットを活躍の場とするアイドルのことをインターネットアイドルと言う。だが、インターネットアイドルの明確な定義をすることは不可能である。事実、既存のsourceにある定義を持ち出しても、インターネットアイドルの多様性の全てを示すことは到底出来るものではない。「現代用語の基礎知識2007」〈自由国民社〉で、インターネットアイドルとはこう定義されている。
(1)写真、画像などのビジュアルイメージが公開されている
(2)言動に注目するファンが存在する
(3)専用のサイトがある
この定義を批判することは十分できる。(1)ビジュアルイメージが公開されている、と言っても、顔出しに積極的なアイドルもいれば、そうではないものもいる。テキストが主体であるインターネットアイドルもかつていた.【南条あやの事例】(2)言動に注目するファンが存在する、と言っても定量的にファンの存在を測ることが難しい時代になっている.【多様化しているネット環境においてはなおのこと不可能】(3)専用のサイトがある、と言っても活躍の場はYouTubeやTikTokなど様々なSNSに及び単にサイトがあるということが定義になっているかというとそうでははない.【VTuberの事例】
このように価値観や消費コンテンツやその舞台となるプラットフォームが多様化したことにより、インターネットアイドルの受け止め方の変化は至極複雑である。顔出しや本人像の伴わない抽象的かつイメージ上の顔出しが伴うこともあるし、その言動やコンテンツ生成の仕方も複雑になっている。多種多様なプラットフォームの勃興も世のIT化に伴い激変している現状がある。
このインターネットアイドルという”コンテンツ”はゲームになることもある。代表的なものが「NEEDY GIRL OVERDOSE」というゲームだろう。このゲームはインターネットアイドルの成就を目指す女性を主人公に取った疑似配信系のアドベンチャーゲームであり、2022年にSteamやSwitchで配信されたものだ。作品内でインターネットアイドルを描いたという画期的なゲーム性が評価され、2022年には50万本出荷を達成したハーフミリオンヒットタイトルになった。ゲームが示すように、インターネットアイドルという立場はその姿・形を複雑に変えながら、現代に受け継がれている。
興味深いもうひとつの事例を挙げてみよう。それが〈チェき14歳〉の事例である。〈チェき14歳〉とは、インターネットアイドルを模した2010年代に主に活躍した動画制作者・コラムニストであり、主にMADと呼ばれるインターネット活動で広く知られた人物である(Twitterの情報によれば〈中の人〉は2020年に逝去されているとのこと)。MADとは、既存の動画を編集した二次創作動画のことを指し、〈チェき14歳〉はこの分野でパイオニアだったことが記憶に新しい。他にもAA(アスキーアート)と呼ばれる文字絵やコラム執筆でユニークな活動を多くしていたアイドルだ。
このアイドルは自身の偶像を全面に押し出すことなく、多様な言動で人気を集め、独自ドメインのウェブサイトをかつて運営していた他、様々な媒体で活動していた。今でいう本サイト:ゲヲログに近いことをしている事例であるといえる。ゲヲログもまた、その偶像性に頼ることなく、テキストや動画を主体し、独自ドメインのテキストサイトでインターネットアイドルの活動(のようなこと)をしている。ゲヲログは、そうした新しく個性的なメディアの在り方を、インターネットアイドルという形を追求する中、自身が運営するブログメディアとしての立ち位置・成長の変遷までをも明確に読者に提起したいと考え運営されているウェブサイトである…