【連載:クマでも読めるブックレビュー】「鉄コミュニケイション」~秋山瑞人の最高傑作 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】「鉄コミュニケイション」~秋山瑞人の最高傑作



鉄コミュニケイション(2)チェスゲーム | 書籍情報 | 電撃文庫・電撃の新文芸公式サイト

普遍的なモチーフを超えた秋山の筆致

人類滅亡っていうテーマはすごくモチーフにされやすい。いわば”ありがち”である。だが、秋山瑞人の筆致はそういうモチーフを超え、設定を超えて…やっぱ胸に来るものを書いてくれる。確かに純文学界からの評価は皆無に等しい。だが、ラノベに近しいものに偏見がないSF大会がらみでは一時期秋山話が大会の話題を席巻したことがあると聞く。京大出身の新潮社の兄貴こと大森望も法政卒の秋山瑞人(「蛇にピアス」で有名な金原ひとみ嬢のお父様金原瑞人ゼミ出身)を絶賛してくれる。 秋山の作品もといラノベに接する機会が増えたことというのは、やっぱ秋山著「イリヤ」がらみだというひとは多い。そうだけれども、同著の最高傑作は二部構成のこの「鉄(くろがね)コミュニケイション」だろう。世間一般では知られていないどころか、ラノベ界隈でもそれほど有名ではない、というのが実際のところだが、読んでみるとグイグイと引き付けられ一気に読み終えることのできる作品だ。

小説の内容

核戦争後、人々の交流が途絶えた世界でハルカという少女とアンドロイドたちが生きる上で共同で生活を送る。その中で起きたひとつの事件をピックアップして描いている。一様アクションものに分類されるんだろうけど、アクション色は決して濃くなくて、ラノベで重要視される心理描写を独特の秋山流「地の文」で描き切った作品。やはり、自然体な文章で構成されていて、ラノベ特有のくせのある文章ではない。SFにかなり近い。「イリヤ」で有名になる前からコンスタントにこのレベルのラノベ書ききってるこの人の筆致はすごいものがある。