【連載:クマでも読めるブックレビュー】「鉄コミュニケイション」~秋山瑞人の最高傑作 | ページ 2 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】「鉄コミュニケイション」~秋山瑞人の最高傑作



俺なりの評価

秋山著最高傑作と評価するだけに、俺はこの「鉄コミュニケイション」における、登場人物の絆の在り方・とらえかたは、「イリヤ」や「EGコンバット」「猫の地球儀」で描かれたそれらを優に超えていると考える。最も作品ごとにテーマが微妙に異なる、というのはあるが。ルークのイーヴァを救う決断、広告に彩られていた核戦争前の世界、ハルカが感じていたこと、そして地下に埋まったボックスの中に秘められた秘密のプレゼント。それら象徴的な表現とあいまって物語が希望を描き出し幕を閉じる。ルークやナイトも絡んだみつどもえ式のアクションシーンは大胆に目に浮かぶよう。だが、登場人物の心境がアクションシーンを収束し、ハナシが自然に終幕に向かっていく。ルークは”卑怯者”であるイーヴァと道を同じくすることを導き出す。「あれかこれか」といったところから出会いと別れの結論を導き出す。人間よりも卑怯で、より大きな”いさおし”を運命の中で背負ったものたちを描くということは、テーマ的には古典的な実存主義に基づいたものでもある。

ハルカは信じている。棒の倒れた先には、きっといいことがある。飛車丸とずっと一緒に暮らせる場所が、きっとある。飛車丸はハルカを乗せて、海原のような麦畑の中を、飛ぶような早さで駆け抜けていく。それは、軍靴の足音が、ようやく聞こえ始めたころの物語。それは、この足音が、ようやく聞こえ始めたころの物語。それは、この星が、すみからすみまで広告され、照明されていた時代の物語。~ハルカの血が憶えている物語だ。(2巻p382~より引用)

そういう古典的な実存から、確かに今ある「希望」をラノベ調にしながら、ちょいとアレンジが効くこの小説はラノベの領域をもう拡張してしまった作品だと思う。こういうラノベが少なくなったのは残念だし、こういった傾向が続けば純文学からの評価も桜庭嬢みたいに得られたのかもしれないが、あまりにそれは遠い道すぎて、秋山瑞人にしか描けない結末があるように俺は感じている。

秋山瑞人のその後

ちなみに秋山はこの後大ブレイクするも「俺はミサイル」という短編をほぼほぼ最後に作家活動は旺盛にできていない。まことに残念なので、EGのほうの完結作もしっかりと見たいと思う。先生、お願いしますよ! (「E.G.コンバット」のFinalは未達らしくて、絵師よしみるは押絵を書きたいと明言しているようではある)

本作、俺も持ってる第2巻が絶版5千の値段がついとるんで、復刊もお願いします…。