2023年9月末、モリカトロンAIラボの記事がAIのゲーム開発への応用について述べている。記事は【CEDEC2023】AIによる感情分析でゲーム内会話パート制作を効率化:セッションレポートというタイトルのもの。この記事は感情分析(センチメント分析)をゲーム内のキャラクター相互による会話コミュニケーション開発に応用するというもので、開発環境の効率化について伝えるものだ。
ゲーム開発分野における国内最大規模のカンファレンス:CEDEC2023においてCygamesの一部門がこの分野に挑んだことが報告されているという。Cygamesの技術屋であり、このセッションを取り仕切った立福が語るところによれば、AIによるゲームキャラ会話の制作アシスト環境の構築にははじめからうまくはいかず試行錯誤が必要だったらしい。そもそもなぜ感情分析が必要か?というと、感情を分類できれば、そこにタグ付けできるゲーム内の表情だとかの外部パラメータとの融通がうまく行くからだという。この分類にAIを活用することで、古典的な感情分類の人間の手によるタグ付けを半自動化しようではないか?ということらしい。ここまで言ってくれると、まさしく納得である。
コアとなる技術はやはり自然言語処理だったわけだが、固有表現抽出はうまく行かなかったという(属性固定化現象のため)。次に立福がメインに取り組んだのがBERTを駆使した文章分類タスクだったが、こちらもうまく行かず(情報量過少のため)、失敗を経てたどり着いた先・うまく行ったのが、質問応答タスクだったという。これはAIに文章データを突っ込み、プロットされた感情数値を見る、というシステム。次に発展性やポテンシャルがありそうなのが、音声解析だったという(この辺りはAIの最先端の感性技術が求められているはず)。ただ、モリカトロンAIラボの記事を見てもよくわからないこともある。それが〈この双方の手法がなぜうまく行ったのか?〉という本質的な理由付けがない点だろう。
これは、AIの抱える問題のコアな部分を聞いているであろう、まっとうな疑問だ。AIはデータを突っ込んで、そこからプロットするだけで、そのプロセスの理由付けがないことが問題だということは以前から松本などの手によって厳しく指摘され続けてきていることは、ゲヲログでも何度も取り上げてきた。モリカトロンAIラボの引用スライドにもこれはまったく書かれていない(立福の生スライドにはあるのかもしれないが)。
次にもう一つの事例として、2023年8月末、同メディアによって報道されたバグつぶし(ゲームQA)へのAI技術の応用についてご紹介しておく。こちらは海外の事例が主のようだ。