ITmediaが3月19日の記事で、就活学生は生成AIをどこまで企業採用に対して使っていいのか?ということを論じている。記事では、まず、デジタルポートフォリオのプレゼンスが、就活現場で上がっていることを指摘し、この重要性を説いている。そして、かの有名なAdobeが、こういった自己PRコンテンツの生成にAIを間接的に活用する事例を、就活学生にワークショップ形式で伝授する試みを予定していることを伝えている。次は、同記事からの引用文である。
3月13日、Adobeは「Adobe Business Hack」と題した記者説明会を開催した。今やビジネスマンにとって必須スキルともいえるAcrobatやAdobe Expressの活用方法・活用事例とともに、就活情報サイト業界2位の「ワンキャリア」と協業し、新卒就活生やインターンシップ学生を対象として、クリエイティブな就職活動を支援する新たな取り組みを開始するという。
就活の自己アピールにも生成AIの影 “就活ハック”はどこまで許されるのか?:小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ) – ITmedia NEWSより引用
記事中では、就活学生がこのようにAIを就活に活用することを”就活ハック”と呼んでいる。報道などで明らかなように、教育と研究の場である大学が、こうしたAIの代表格である生成AIの活用に対して、どのように対応すればいいか苦慮していることは世に知られている。だが、採用企業が優秀な学生を採用するプロセスの中で、AIコンテンツにどのように対処したらいいか?ということはあまり一般的に知られていない。記事は生成AIの持つポテンシャルがどこまで線引きされるべきかを事例を挙げながら説明している。例えば、
AIの生成した文章は就活学生の文章力としてどこまで評価すればよいのか?
AIを活用した写真や動画の生成力はどこまで就活者本人の実力であるのか?
ということが提示されている。これはふつーに働いていればわかるけど、興味深い話であり企業社会で働く人にとってまったく他人事ではないことだろう。例えば、企業人がプレゼンテーションにパワポの生成AIのシステムをどこまで活用していいのか?という軽い話から始まり、明らかにグレーやブラックなゾーンに入る生成AIの活用の仕方~例えばポートフォリオの作品をまんま生成AIによるものに任せることなど~もあるだろう。
私も会社に提出するパワポの資料の修飾ぐらいには生成AIを使った経験がある。パワポを使ってみれば誰でもわかるけど、テーマに沿った修飾の仕方ぐらいは、今時簡単に搭載AIが提案してくれるのだ。もちろん本文は自分の文章力だから自分で書いたので、これぐらいのAI活用が問題になるとは思えないが、もし仮に企業側に提出する文章そのものをAIに任せたらどうなるだろうか?これはこれで明らかに問題である。自分の能力を偽って、自分があたかも書いたかのようにふるまう、この行動がまさに”ハック”だからだ。
今、報道で盛んに論じられているのは生成AIの教育現場での活用に伴う問題である。学生が英作文にAIの力を借りてコピペで課題提出することが実際に起こっている、というのだ。まだ教えてもいない文法を活用した高度な英文を、明らかにその能力のない中学生が、課題提出してくる、ということが起こっていて教員側も対応に苦慮しているらしい。次はどの次元に生成AIの問題が遷移するか?というと、明らかに就活現場で、であろう。ITmediaが記事中で伝えるように、”就活ハック”は一体どこまで許されるべきなのだろうか?とても微妙な線引きが求められている。