なぜオリジナル版「Alone in the Dark」は傑作であり、そのリブート版の評判はよろしくないのか? | ゲヲログ2.0

なぜオリジナル版「Alone in the Dark」は傑作であり、そのリブート版の評判はよろしくないのか?



記事の要約:オリジナル版「Alone in the Dark」を今更リブートして売り出すのは相当難しい。「Alone in the Dark」は当時だからこそ出来た、3Dホラーゲームのパイオニアであり、現代的にかのシュルレアリスム表現をリメイドするのは、ブレイクできない壁・システム的な無理がありすぎる。
そこにあった”デルセトの魔境”を再現できる時代は再来するか?※画像:Steamより.

序「Alone in the Dark」

これね、本質は簡単なことだと思うんですよ。オリジナル版の「Alone in the Dark」が傑作である、のは古株のPCゲーマならばだれもが一致する意見だと思います。では、リブート版の「Alone in the Dark」の(著しいとは軽くも言えない)評判を論じてみる前に、なぜオリジナル版の「Alone in the Dark」は傑作であることを誰もが認めているのか?ということを振り返ってみたいと思います。

当時のゲームグラフィック情勢

オリジナル版の「Alone in the Dark」はグラフィックの描画が画期的すぎた、というのが第一の理由ですね。というのも当時は3Dで描かれるグラフィックスというのは極めて珍しかったと思うんですよ。特に2D最盛どころか、2Dでしか描けなかった時代に挑戦的にもフル3Dポリゴンで世界観を構築していたんですよね。これが絶妙に当時のゲーム情勢にとって衝撃と緊迫感をもたらした。これに異論を唱える者はいないと思う。

絶妙に連結された”屋敷的魔境”

あと絶妙にその描画が、ゴシックホラーとモダンホラーを手合わせた特異なストーリーにマッチングした、というのが第二の理由です。当時から芸術的なADVゲームは多々あれども、クトゥルー的なホラーACTADVというものは極めて珍しかったと思うんです。つまり、3DホラーADVタイトルとしてあまりにも先駆的すぎた。だからこそ、オリジナル版の「Alone in the Dark」は3Dホラー全般のパイオニアだったんですよね。さらに、だからこそ、かの傑作である「バイオハザード」の洋館事件にもダイレクトに影響を与えた。「デルセト」の”屋敷的魔境”は、まさにバイオ初代から続く洋館事件という『限られた領域からの脱出』というテーマの首謀的な存在だったんですよね。

定点カメラシステムの採用

あと欠かせないのが、定点カメラ方式の採用です。おそらくこれは様々な技術的な制約があってとのことだと思われます。例えば、カメラがダイナミックに稼働するTPS方式のようなものは画像処理の関係上あまり作れないんじゃあなったのかな?この疑問がたとえ間違っていたとしても、この定点カメラ方式は初期ホラーの描画に当たっては、独特の画面遷移の方式であることに間違いなく、オリジナル版「Alone in the Dark」がこの”点”を世界で初めて踏破してみせた、という事実には間違いがないはずです。そして繰り返す如くオリジナル版の「Alone in the Dark」は、PSを中心として展開された「バイオハザード」シリーズのカメラ方式にも多大なる影響を与えた。つまりカメラシステム的にも、”ゲームを魅せる”方面では、この「Alone in the Dark」は先駆的すぎた。

独特な超現実的ホラー演出

さらに言われるのが、謎解き要素と奇妙なトリックを中心とした突拍子もないホラー演出です。本格的な3Dを用いた世界の描画とその次元系にまぎれた謎解き要素、これも「Alone in the Dark」の魅力ですよね。やはりあまりにパイオニアすぎた。そのパイオニア性は突拍子もない演出面でも同じです。こちらは、近年王道系のストーリーを持つゲームがあまりないこともあってか、その先駆的なプロット・演出が時代の先先を見据えていた、という論は過言ではないような気がする。キャラクターが突然死んだり、事件の原因追及をしていく中、奇妙なシュルレアリスム表現の中でいきなり突発的な演出がしばしば入る。こうした超現実的な現実を描くことに、妙に長けていたタイトルだったという点は見逃せない。

語弊を承知で言えば”バイオの元ネタ”

ま、ここまでが四つ大きな理由だと思います。ぶっちゃけ、語弊を承知で言えば「バイオハザード」というIPの元ネタなんですよね、オリジナル版の「Alone in the Dark」は。ではリメイク版の「Alone in the Dark」はなぜダメなのか?ということをさらに論じてみたい、と思います。

オリジナルから離れすぎたIPの”リメイド”の問題

まず、原作となっているオリジナル版の「Alone in the Dark」からちょっと離れすぎた、という批判点は避けられないでしょう。3DTPSにしちゃったら、定点カメラ方式だったオリ「Alone in the Dark」の原案をかなりリメイドした、ということになる。そして、その方式で本当に良かったのか?オリ「Alone in the Dark」のリメイドだからといって、その原案の最大の良点を遮ってよかったのだろうか?ということですね。つまり、リメイドじゃなくてリメイクぐらいのニュアンスで原案のオリ「Alone in the Dark」をオーバーホールしなかったほうが良かったのではないでしょうか?という疑問的提起です。「Alone in the Dark」はあまりにもオーバーホールしすぎた。だからこそ、「Alone in the Dark」が「Alone in the Dark」ではない、という印象をコアゲーマに抱かせてしまったのではないか?

スタック・コリジョンに見る現代的な問題

また、TPSゆえのモダンシステムにこだわりすぎた、という点も「Alone in the Dark」を難しく解釈しすぎたと思う。これは敵の塊や壁や机にスタックするというようなコリジョンの問題にもつながっていると思います。オリ「Alone in the Dark」はリブ「Alone in the Dark」のように確かに3D性能では劣っていました。各段に数世代前ですから。ですが、同じように障害物にスタックする、とか敵にはめられ殴られるような状況下を仮想的に考えてみても、オリ「Alone in the Dark」は、なんかとてつもない現実を感じさせるそれこそシュルレアリスム的なホラーがあったように個人的には思うのです。それが現代の3D環境で、いまさらスタック的コリジョンを見せられても、グラフィックスとホラーとの重合的な兼ね合いがあまり良くない。だから原案の持っていた、超現実的な=シュルレアリスム的な描画が出来てないんでしょう。

それぞれの要素に深みのないリブート版「Alone in the Dark」

あと、プレイしてみればわかるんだろうけど、それぞれの要素が深くなくて、例えば、キャラクターだとか、話の筋になんか深みがない。原案はその描画的恐怖や、突拍子もないACTセンスに乗っかって、恐怖が増幅する、特に自分=プレイヤー内で増幅していくような、まぁ精神病的な恐怖があったように記憶してますが、それがリブ「Alone in the Dark」にはまったくないんですよ。ここは描画で、ここは想像で、とメリハリのある兼ね合いがあってこそ、リブートとしては「Alone in the Dark」の醍醐味になるはずだ、って想定していたゲームフリークが多いんじゃないですか?

結果としてまとまりの欠いたゲームになってしまった…

その期待に応えられず、継承すべきシステムと改善すべきシステムの系としてまとまり具合がない。故に完成度が高くないというわけですよね。まぁこの手の批判は当然のごとくあるものであって、特にオリ「Alone in the Dark」の恐怖感を知っていて、モダンなホラーの味も知っている、目の肥えたSteamerや現世代機まで続いてきた30~40のゲーマにとっては当然感じてしまうジレンマだとは思いますよ。でもそこを何とかしてほしかった…というものじゃないでしょうか?IPの冠を持つゲームですからね。

これから「Alone in the Dark」IPはどうなるのか?をあえて悲観視する

おそらく、これはゲームに関わる開発者が悪いわけでもその関係者が悪いわけでもなんでもなく、オリ「Alone in the Dark」の復刻としてリブ「Alone in the Dark」を、今更作るのはめちゃくちゃムズイと思うのです。なんといってもあの環境下で生まれた傑作であり、白眉であるからですよね。だからこそ、リブ「Alone in the Dark」はオリ「Alone in the Dark」に敵わなかった。その夢は夢のままであってほしかった、という伝説だけはオリ「Alone in the Dark」に残された光といえるのではないか?

運命的悲作

あと四半世紀も立てばさらに技術力は上がると思うんです。でも、その時になって、「Alone in the Dark」がどういった形のゲームIPになっているか、想像がつかないじゃあないですか。これこそがリブ「Alone in the Dark」を駄作・凡作にしてしまった運命だと思うのです。これがあたしの中での結論ですね。