【連載:クマでも読めるブックレビュー】「MBAが会社を滅ぼす」~読解:ミンツバーグ | ページ 2 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】「MBAが会社を滅ぼす」~読解:ミンツバーグ



PART1「MBAなんていらない」

この項では、MBAの問題点を俯瞰して書いている。むしろMBAというよりかはその人自身がどのように業務に携わり、どう解釈し、実践していくか?という経営的本質を書いていると思う。そういう意味で本書の題は正しいと思う。「間違った人間」…かなりキッツい言葉だが、如実に今のMBAを表している。MBAはそれ自体間違った方向を向いていて、MBAホルダー=高収入という勘違いがまかり通っている、という。『そういうものではない』と、ミンツバーグは夢を良い意味で裏切ってくれて破ってくれている。MBAホルダーとは会社経営に専門職大学院の立場から貢献するという意味なはずであり、そのホルダー自体が高収入を得ることではない。キャリアチェンジはマネジメントをしっかりとしていく過程であって、目的ではない。より高い収入が目的ではなく、いわば会社の潤滑油になることがMBAホルダーに期待されていることなはずだということが書いてある。つまり単に、ニ・三年の経験の上に立つものではない。もっと広範な見識を得てから、すなわちマネジャーになってから役立つものがMBAなのだ、と。この事例はもっと多くのことに言える。例えば、”エンジンの生産工”がニ・三年技量を磨いただけで、マネジャーになれるか?というと無理がある。これは単に”エンジンの生産工”だけに言えることでない。いくつもある職種の中で適切なマネジャーがマネジメントの適切な教育を受ける必要があるのだ。つまり個性化されている職種の中で、その雑多な中で、目的を磨き、自分で作り上げてきた人間こそがMBAの名の下に学ぶにふさわしい。それは本来テーラーメイド化されているべきであり、個々のゴールはあくまで個人の力量の問題でもある。その中でMBAを一概に、十把一絡げにして取り上げることはできない。これはHBSでもスタンフォードMBA課程でも同じである、とミンツバーグは言う。納得の、そして天才ミンツバーグだからこその論述である。ここまでが第一章として結論付けられている。

ケースメソッドへの批判も重要だ(第二章)。箱の中で生きる意味があるのか?教室内で、あたかも討論しているかのような衒学主義には意味があるのか?大局的な行動力・実践力をHBSも追い求めてきた。馬鹿々々しい誇大広告に彩られた授業を習えば、本質的なマネージャになれると多くのHBSの卒業生が勘違いしてきた、という。これは単に、学生を実地派遣すれば解決できる問題ではない。例えば、卒業して職に就けば、ある程度はこれらの題目は業務としてやっていくことになる。それを一年・二年のスパンで身に着けるほど沁み込ませるほどのことがケーススタディの先にある授業実践の場で成就するのか?疑問がある。あれもこれも駄目!とミンツバーグは”とりあえず”言っている。正しく言うと、ケースメソッド自体が悪いわけではない。もちろんいい点もいっぱいある、と言っている。ただし本当に観察力を磨くことができているか?というと万物のケースメソッドスタディが良いとは到底言えない、とのこと。エントランスのホールをみて、柱の数・フロアの色・大まかな室内空間の広さ…すべての知性を掻き立てられる、そんな人材がモノホンの観察力ある人材といえる。木を見て森を見ず、またその実践ができているという対比(コントラスト)が論じられている。

その根底にはMBA流儀の悪しき経営的戦略があるという。というのも教育機関が学生の頭数合わせに徹しちゃってて、経営がうまくいかないとまずいという印象を学生や社会には与えたくない。すると商業主義におもねってしまい、社会にとって教育機関としての役に立つ人材をロビーイングの活動によってすり替えられ、捻じ曲げられてしまう可能性をも憂慮して論じられている。最たるものが我らが日々気にして目にする、MBAのランキングである。そもそも”エンジンの生産工”の例で挙げたように、個々のマネジメントのやり方は個人によって大きく変わる。それを数値化し、ランキングという手法でリスティングしてしまうこと自体問題だ、という。それを気にしなければ、MBA課程自体のビジネスが成り立たなくなることをミンツバーグは懸念しているわけだ。ランクなんて当てにならない、ここは大学院なのだから。端的に言うと、MBAランキングのような”腐敗”がMBA自体が生み出した悪行なのだとミンツバーグは言う。モノを作り売る、という資本主義のコンセプトさえ忘れているスクールMBAerはあまりに多い。HBSでさえCEOを多く作ってはその企業をダメにしてきたケースが多い、それはHBSに悪しき慣習があるからだ、とミンツバーグは警鐘を鳴らす。会社をダメにしてきたCEOも数多いのだ。むしろそっちのほうが多いという。簡単に言うと、資本主義的な社会との間にMBAは生きてる。だからこそ、この問題は経済や人材の問題を含み大局的な問題にさえなっている。無条件にMBAがダメだというつもりはない、だが大半の社会の中にあるMBAはダメなことがままある…ということ自体がミンツバーグにとって問題なんである…。