AIは出来るだけイカサマなしでキャラクタが知覚可能な範囲で見聞きした情報のみを基に状況を判断、推測して行動するように作り込み中。
— rucsgames (@rucsgames) April 10, 2022
4/11付で、国産フリーFPS「XOPS」の開発者であるnine-two氏が、AI設計について短文で”呟いている”。この”呟き”は面白い示唆を与えてくれるツイートだ。ちょっと考察してみよう。
現状のAIには突っ込むデータ(教師データ)が必須だ。nine-two氏の当該ツイートではこのデータをどこまで取り組めばいいか?というデータサイエンスが適用可能な広範な領域的問題を提示しているように思う。AI(やそれらしきもの…つまり人間も含めて)を実装しようとも、教師データとして、人間の知覚範囲外のデータも取り込むことができるという『非人間性把握能力』があったとしてしまえば、これは相手となる人間(や仮想敵AI)にとって脅威となるはずだ。例えば、実際、現在進行形でウクライナにおいて人工衛星データがこの役割を担っている。
ウクライナ軍は敵のデータを非人間的な領域・すなわち人工衛星から、宇宙から得ている。得たデータを元にそこから兵士が行動するということは、この衛星データを持っている以上、大きなアドバンテッジになる。当然、相手の持ちえないデータを持っている方がアドバンテッジを得ているわけだ。非人間の領域から得られる、非人間的な巨視的知覚を得てしまえば、相手の、生身の人間の持ちえる領域だけで知覚できる『人間間内完結型知覚』しか持っていないロシア側は、少なくとも情報的には脆い存在である。ちょっとわかりづらいが、将棋で例を例えてみよう。
将棋というゲームの場合は、ゲームのルールが知覚範囲内で定められている。盤上のルールはAIだろうが人間だろうが、共通であり、認識内でそのルールに従ってしか行動できない。だから将棋や囲碁はフェアなゲームである。だが、戦争はそうではない。例えば、こちら側がルール戦略上、衛星やドローンを多数持っているとする。さらには、相手側がルール戦略上の衛星やドローンなどの戦略的物資に乏しいとする。そうとなると、データ量の大きいこちら側のほうが当然有利である。このように、戦争・特に情報戦争に限度はないのだ。同氏が呟いたように、FPSなどのゲームでも前提条件は同じだ。
例えば、AIがゲームの人間の知覚以上のデータを持っていたとする(『拡張的教師データ』とでもいうべきか)。すると情報量として優れているAIのほうがルールを超えて、把握できる認識データ量が多いので、当然人間よりも有利=アドバンテッジを持っていることとなる。これはフェアではない。究極のAI兵器を実装したり現実世界でそれを再現するのであれば、データ量は多いほうがいいだろう。だが、FPSなどのゲーム内でAIを実装する・特に非人間的な兵器ではなく、人間対人間を想定した戦争をシミュレートするのが目的であれば、心理学上のデータは考慮しても、『非人間性把握能力』は加味してはいけないのだ。もしそうすれば、そうした能力を持ったデータ兵器の優位性はとどまるところを知らないはずだ。nine-two氏がやっているのは人間対人間のリアルFPSだろうから、実際の戦争で役に立つ兵器を作り出すことではない。あくまで『人間間内完結型知覚』の上、立脚するAIを作りこむことが目的なので、衛星のような『非人間性把握能力』を敵(や味方)のAIに実装してはいけないのだ。
もちろんこんな簡単なことはとっくのとうにゲーム設計上、大きな問題となっている。例えば、RTSですべての盤面上の動きが見えるAIが実装されれば、人間は絶対にこうした『絶対的AI』に勝つことは到底不可能だ。見た範囲で知覚できる、人間と同じ知覚量を持つAI、つまり『現実的AI』であれば、RTSで生身の人間も対抗できるかもしれない(もっとも、その条件ルールを考慮したうえで、それですら昨今は負けが込んでるんだけど…)。格闘ゲームでも同じだろう。例えば、次の相手のコマンドを『非人間性把握能力』といったようなデータ寸分のコンマでCOM側が予期して、対策を練れば、そうしたCOM=予期的AIに敵う人間は存在しないこととなる。だから、画面から得られる情報量から発進している『現実的AI』を実装しなければ、ホンマのルール上フェアなAI vs 人間の戦いにはならないだろう(もっともこの条件を考慮した上で、それですら昨今は負けが込んでるんだけど…)。
つまり、教師データ量に関わらず、依然としてAIの優位性は変わらん…というのが端的な結論。
※情報の非対称性という意味では「ネイサンの逆売り」も参照できそうですね☆
…ということをnine-two氏ご自身考えておられなのだなと思った。