【連載:クマでも読めるブックレビュー】「ガパパ! 〜AKB48でパッとしなかった私が海を渡りインドネシアでもっとも有名な日本人になるまで」仲川 | ゲヲログ2.0

【連載:クマでも読めるブックレビュー】「ガパパ! 〜AKB48でパッとしなかった私が海を渡りインドネシアでもっとも有名な日本人になるまで」仲川



ガパパ! 〜AKB48でパッとしなかった私が海を渡りインドネシアでもっとも有名な日本人になるまで ※Amazonより引用.

単にアイドルが書いた本に留まらない極めて画期的な本だ。
本書のカバーで秋元康が言うように【陽が当たらないと嘆くより陽の当たるところへ行け】…
この言葉で本書のすべては表現できる。


まず第一章・第二章・第三章では、主に仲川の”海を渡る勇気”が語られている。行先はインドネシア。現地感染症などに苦しめられたところから始まって、インドネシアなりの国民性とか国家の基本的なデータが簡単に述べられている。仲川なりの教養…しかもとってつけたようなかしこまったものではなく、ごく自然と身についた教養が述べられている。例えば、イスラム教に関しては、国民の90%ぐらいがその信仰を持っていること・現地の国民性穏やかで怒らない傾向があること、などが記載されている。オバマがインドネシアに訪問したとき、『多様な価値観を受け入れている理想的な民主主義の国だ』と述べたらしいなど、けっこう本質の的を得ている教養があるので、教科書だけで学べる以上のことを自発的に仲川が学んでいることがよくわかる。教養とはかくあるべし、というお手本。

第四章では、本書一番の肝要な点というべき語学力の問題が語られている。仲川曰く、教科書も辞書も語学にはいらない、とのこと。これは本当にそう。日本の英語は文法問題など難関問題だけが問われ、実地的に話す・書くができていない学生が多いのは仲川の指摘の通りだと思う。読むだけを出来てもまったく意味がない。語学がリンクしてないからだ。そのためには実際に使ってみることが求められる。学ぶならば、文法書ではなく、YouTubeであり現地民である。それが一番の教科書であり、辞書である…仲川はそのように言う。日本の一流大学を出てインドネシアに来た人物が、高卒の仲川のインドネシア語の語学力に遠く及ばない理由はここにある、実例を挙げながらそのように、単純に仲川は言う。また、頭の中で翻訳しない、ということがポイントだという。これも納得できる論理だ。例えば、英語で言えば、英語☞日本語☞英語というプロセスは、語学力を磨くのであれば、通っていいものではないのだ(翻訳家になるわけではないのならば)。もちろん書き読むことも重要だが、一番いいのは現地で聞き話すことだというわけ。語学をめぐる多くの日本人にとっては耳の痛い話が書いてある。だがまさにこれは仲川流の語学啓蒙である。

第五章では、AKBとの関係性・日本での活動の応用性が書かれている。ここも仲川流の合議制というマネジメンターとしての有能さがリアルに、丁寧に書かれている。よく相談すること・誤解があるのであれば、みんなで話し合うこと。ここには日本とインドネシアという両国の価値観の違いと人間としての共通項のヒントがよくよく書かれているように思える。

第六章では、仲川が体験してきたことによってどういう人生のエッセンスが知覚できたかということが書かれている。仲川は言う、『世界では、自分を変えるのではなく、自分の居場所を変えて適用することが重要視されている』と。つまり冒頭秋元が言ったことを再確認しているわけ。【陽が当たらないと嘆くより陽の当たるところへ行け】この言葉にそのエッセンスが凝縮されている。ポイントを押さえて、こういう考え方でいいんですよ、という思考のプロセスが述べられている。仲川の客観的な意見と主観的な体験がバランスよく配置されていて、読んでいてまったく苦しくなく気楽になれる。自分なりの主体性を大事にすることで、気楽に、心豊かに生きることができる、仲川はそのように言う。


自分を変える必要はない。自分の居る場所を変えればいいのだ。
見つけたいものが見つかるまでチャレンジし続ければよい…
仲川なりの現代人に対する勇気あるエールである。