【Steamゲームレビュー】「GOODBYE WORLD」~ゲームとは『メッセージ』である | ページ 2 | ゲヲログ2.0

【Steamゲームレビュー】「GOODBYE WORLD」~ゲームとは『メッセージ』である



ゲーム中で語られる『創作が本来あるべきがための創作』というロジック

主要キャラふたりのうちのひとり、蟹井はこの”実存的真価”を忘れてしまう傾向にある。かつて学生だったころ作っていたゲームは学生ゲームコンクールで大賞をとるぐらい素晴らしい栄誉に恵まれる。だが、社会に出て、自分のゲームが売れない,,,という現実に向き合うことができなくなり、息苦しさを感じ、ゲーム制作の持つ”実存的真価”を見誤ってしまう。かつて友人と、たとえ評価されなくても「自分の作りたいものを作り一切妥協せず夢を追い続ける」という約束を交わしたはずなのに、その息苦しさから互いの交錯へと”魔冷えてしまう”わけだ。その友人こそが、作中に登場する絵描き・グラフィッカーの熊手である。

本作は小一時間あればだれでもがクリアできてしまう、単純なピクセルADVだ。蟹井と熊手との別れと再会を60mだけの時間内で描く、直線的な分岐なしのゲーム。単純な構成の中に、それだけ・ひとつ分だけの『メッセ―ジ(上に書いたようなこと)』を乗っけてSteamへ乗り出した一介のインディーゲームに過ぎない。だが、余計な盲目点はなくし、創作とはどういうものかということを提起し、それに自然体で向き合えない我々非一流の創作者だからこそ感じ取ることのできる矛盾を、比較的肯定の面から描くことに成功している。

創作に自由は必須だというメッセージ

ゲーム分野でも『カルト的な人気を誇る』だとか『マニアには受けが良い』という、二次的な評価があることを、近頃多く見るようになってはいないだろうか?これだけ価値観が複雑に広がって、趣味趣向が多様化している現代では、何がアーティスティックで何がアーティスティックではないのか?という評価の複雑性すら簡単に定義できない時代にあるのだ。

人間はひとのあいだと書いて人間と読む。つまり人間は他者からの必然的存在としての評価値に繋がってしまっていることを意識してこそ、ひとのあいだに生きている。すなわちそれであってこそ、人間である。むしろそうでなければ人間ではないのも事実だ。だが、そういった中で、本来忘れがちな、何かを好きになるということ・空想に夢を乗っけて自由にキャンバスを創作していたころの心も忘れてはいけない…つまり、自由の中から創作の本質は生まれ、それによって作品は息を吹き込まれ芸術的な生命を宿すわけだ。この一点の『メッセージ』性こそが、本作「GOODBYE WORLD」のすべてである。


ピクセル描画を基本とした、一点突破のシンプルなスタイルのADVゲームだが、その『メッセージ』性はたしかにあたしに伝わった。十分、1000円の価値のあるゲームだと思うよ。