【連載:サルでもわかる漫画レビュー】完全版「金色のガッシュ!!」16巻 | ゲヲログ2.0

【連載:サルでもわかる漫画レビュー】完全版「金色のガッシュ!!」16巻



今日完全版の最終巻を買ったので。

ガッシュの人生論

絵的にはあんまり上手いほうではないと思うんだ。特に最近の絵上手い漫画家とは比較にならないと思うんだ。でも、もしそうでないならば「金色のガッシュ!!」じゃないと思うんだ。この絵柄は純粋な、無垢な感情の発露を、キャラクターの表情に見栄えるように作り込むために描かれている。純粋な心を持つキャラクターを芯から表現するために描かれている。だからこそ、バトルものなのに、エンドに近くなればなるほど、辛くて永遠に近い、キャラとの別れの際に泣けることができる。よーするに”家族”なんだよな。たぶん著者が言いたいことってのは”人生”そのものなんだよ。辛いことがあって、それをみんなの力で乗り越える。れっきとした”少年漫画”なんだぜこれ。でもそれは、その少年たちが人生の不さだめを巡って、青年に成長していく漫画でもあり、多くの人がその過程で味わう修行の心と辛苦の心を詰め合わせた、読者と成長する”人生”の漫画なんだよ。単純にそれに尽きるよね。

意外にも「封神演義」との比較は少ない?

テーマ的には、バトルロイヤルの先駆っていうかたちでもあるし、ある種、エンディングに至るまでの流れは非常に「封神演義」のそれと似ているようにも感じた。仙人(のようなものたちとか悪魔のようなものたち)同士の戦いっていう意味でも、魂魄の設定っていう意味でも。何よりもみんなと戦って失うものと得るものを両面平等に描く。強敵をみんなの魂の力を借りて倒す。このあたり、検索かけてみたけど、あんまり両作の対比と言う意味で同意している意見がほぼほぼなかったことがかなり意外だった。むしろ対比して評価するような記事があってもいいと思ったんだけど、ほとんどヒットしなかったのに驚いた。もちろん、どっちが上とかそういう意味ではなく、それぞれの良さがあると思う。

「封神演義」との比較~その本位

「封神演義」は「金色のガッシュ!!」と比べてかなり完成度が高く、再読性も強いものがあるよね。特に藤崎竜の漫画は、同著短中篇でのノウハウが十二分に活かされており矛盾となる穴が極めて少なく、筋が通っているっていう前評判が高い。さらにガッシュは再発見性という意味では、細やかな点では、はっきり言って劣ると思う。でもダイナミックに、最後まで突っ切ったっていう意味では、前者よりも素早いテンポ感を感じさせる。よーするに不等号はあっても超えられない壁、を両作の間に作ることはできないと思うんだ。たしかに起承転結というか、全体の完成度では、ぶっちゃけ「封神演義」のほうが上。だから、再読性があるってのはそういう意味でも。だけれども、流れのダイナミックさではガッシュのほうが微妙に上の方向向いていると感じる。だから、比較とか対比はあっていいけど、極端にどっちがどっちとは言えない、それゆえ双方ともに良い漫画だと思うよ。

『等価交換』という普遍的な漫画要素

思えば、失うもの=得るもの(つまり何かを得ること、というのは、何かを失うということである)というのは、いつでも古来から続く『漫画の交換法則』の一種のありかたのひとつだった。仏教・東洋思想のように、それを展開するさだめにあるのは、なんだって同じなんだなと思う。それは「鋼の錬金術師」でも同じだったし、その色はすごく濃くしてあるのがハガレンの特徴でありテーマでもある。封神演義だって、ガッシュだって、それこそジブリアニメだって同じテーマであって、人との約束、契りをしてエンドにたどり着くまでに様々な体験をする。そこに苦難があり、大きな矛盾があり、辛さがある。なんといっても登場キャラクターとの別れがある。けれども、それを乗り越えた際に感動が待っているという面を徹頭徹尾、漫画という遊戯はここ半世紀追い続けてきた。漫画は人生の流れを追い続けてきたんだ。

ガッシュの人生論~第二幕

そうしていくうちに、普段の光景や普段の生活に密着した、日常の在り方に幸福感を覚え、先人や友人は居なくなっていく。一番涙できる景色、というのは、そうした日常が脅かされて、日々の感触を忘れてしまう感傷に浸れる瞬間を得られる場所。そこにいる瞬間は、執着しもがいて戦い抜く決意をそれらの去っていく人々と一緒に共有できる、貴重な一瞬でもある。ウマゴン(シュナイダー)と、特に強い鋼の心を持った少女であるティオが眠る光景は、ありきたりな家族の物語・死別の物語のように読んでしまう。もっとも彼らは魔界へ還るだけで、ホンマに全部が全部死に消えるわけではないけれども。特にウマゴンは尊敬するものとは何か?を具体的に提起しそれを提示していったし、ティオはあたかも娘をもった父ならばこそ、という観点で、しかと描かれているよう思う。共通するのは出会いと別れが同一項にあるということなんだろうね。

「ウヌ、シュナイダー!!お主、速いぞ!!凄く速いのだ!!」
「お主、凄いな!!凄い力なのだ!!お主の父親は助かるぞ!!頑張るのだ!」

(「生涯の友」p129~より)

あたしらの人生もシュナイダーやティオと共にある。
シュナイダーの上にまたがるように、力合わせることで人生の困苦を乗り切れる。

一緒に遊んで、笑いあって…あっという間に日が落ちて…
なんで、楽しい時間はあっという間なんだろうって…
寝る前には恵と、明日は遊べる?やっぱり仕事?って…
遊びでも仕事でも、どっちでも嬉しかった…

(「また…明日」p93~より)

その果て、険しい景色や別れ、涙があろうとも…
ティオのように純粋無垢な心持で、最後を迎えることができるだろう。
きっとできるだろう…