【連載:サルでもわかる漫画レビュー】「マルクス&エンゲルス」 vol.1 vol.2~子供が共産主義入門として読むには最適な漫画本 | ゲヲログ2.0

【連載:サルでもわかる漫画レビュー】「マルクス&エンゲルス」 vol.1 vol.2~子供が共産主義入門として読むには最適な漫画本



記事の要約:専門書ではないだけにツッコミどころは満載。ですが、子供が共産主義入門・マルクスエンゲルス史入門として読むには最適な漫画に仕上がっている。執筆陣が徹底してツッコミどころを補した、超本格的な長期連載があったらば面白い企画になると思う(赤旗あたりにそれを望む)。

vol.1は、彼らが出会うまでを幼少期から主として描いています。vol.2は彼らが再会し、共産主義のスローガン「万国の労働者、団結せよ」を打ち立てるまでが描かれています。けっこう良く出来ている漫画だと思います。わかりやすさでいったらピカイチです。たしかに共産主義のような理論的な思想がなければ、社会民主主義も第三の道もなかったと思うのですが、そこまで発展的な体系は描かれていません。そこが穴でしょう。専門としている学識者から見ると、その点の甘さの指摘がマジでキッツく入りそうですが、あくまで漫画式のマルクス・エンゲルスの史実的入門に留まる故、そうした批判は本書に対してするのは妥当ではない気もします。

社会民主主義や第三の道への共通項を探る動きがない、とする批判以外にもいろいろと考えられそうです。例えば、なぜ共産主義思想は無神論なのか?といったことや、なぜ労働者は団結して暴力革命をしなければならないのか?(無論なぜ彼らが理論としてそういったのか、という意味であり、実際に暴力革命がどーたらというつもりはございません)といったような基礎的な事項が抑えられておらず、本書だけでそれを理解するには難しいと思います。あるいは、マルクス経済学は経済的には死んだけど、経済思想や社会思想としては「共産主義宣言」なりなんなりには現代的意義があるとする論拠にもふれません。たぶん、あたしが考えるには、人間のハードウェアとしてのハコモノに対するアンチテーゼ、のような形での描画も可能だったはずですが、それもないなど、ツッコミどころは満載です。

ですが、彼らの熱意とか経緯とか人物史としては素晴らしい出来で、むしろそこに焦点が当たってもいい気がします。執筆陣曰く『vol.2が主だった』とするには、かなり甘い気がする。むしろ『vol.1のような人物史に焦点を当ててそこだけ描いた方が良かった』とするほうが妥当な気がする。あくまでマルクス・エンゲルスの思想を学ぶための書ではありませぬ。人物の熱意とか動機づけを学ぶ書でありまする。これで共産主義に対して理解は示せないですね、親近感は沸くかもしれませんが。

ということで、あくまで入門者の漫画教材として良い出来なので、帯が言うように教科書には乗っけられないとかかいてあるけど、むしろバランスはとれていて、左翼的な過激な思想書でもなんでもない。そいう意味では、教科書に乗っけてもいいぐらい穏健派な漫画だと思いました。あと例のごとく、尻つぼみでvol.2の最後のほうなんかは晩年の描画がほとんどなく、困窮している様子もあまり描かないなど、最後の最後は”走り切っていない”感があります。あくまで、マルクスとエンゲルスが出会って、喧嘩して、再会して、意気投合して、スローガンを打ち出す、というだけの経緯に尽きます。それ以外はないです。まったくないです。だからこそ、ですが、本執筆陣でもっともっと本格的な共産主義の体系書を彼らの人生と交えて描くべきだと思います。そうしたらば、ベストセラーになって、執筆陣の思想ももっと喧伝できるポテンシャルがある(あたしは共産主義者でもなんでもありませぬがw)、と感じました。

あと部分的に指摘されている絵の汚さは自分はこれはこれで作画者の良い描きかただと感じて、レビューにある通り、ダメな作画ですっていう風には感じませんでした。少年漫画と少女漫画の中間を見事にとらえ、人物の性格・色彩を的確に作画したいい絵です。酷評した方は、こうした少女漫画のテイストを盛り込んだ画風の絵に、あまり慣れていないかたなのかもしれないですね。