ゲームマーケティングの次の嚆矢は「Keymailer」か? | ゲヲログ2.0

ゲームマーケティングの次の嚆矢は「Keymailer」か?



4Gamer.netが掲載した記事のうち、2019年のもので、2021年始まった現時点において掘り起こしてみても、興味深いものが一件あった。

今から二・三年前だろうか、徳岡氏によるこの記事([GDC 2019]「Slay the Spire」とユーザーコミュニティの熱い関係。「作ること」をそのまま「売れること」に変える,その秘訣とは)である。StSの大ヒットを受けて、その開発者が講演した様子を報道した記事だ。

ほかにもアクセントはいくらもあれども、ここで重要なのは、「Keymailer」(以下Kmとも表記)というひとつのゲームマーケティングのためのサービスにふれている点だ(StSはこのサービスを使用して躍進した、という一つの項目が当該記事に記されている)。ほかのマーケティングの工夫はありきたりもので、はっきり言って、今から一般的なゲーマが懐古する必要はほぼない(とはいってもゲーム開発者や配信者は興味深く見る必要があるだろう)。

だが、Kmというゲームマーケティングサービスは邦語解説サイトがほぼほぼ皆無であり、これについては日本語による解説が別途必要だ…と考え、あたしが今書いている記事が”ここ”なんである。さて、ではKmとは一体何者なのか?最近聞こえてきたサービスだが、いったいどういうサービスなんだ?という問いに今答えよう。

【そもそも「Keymailer」とは何か?】

公式サイトを見る限り、どうやら、このようなサービスらしい…

「Keymailer」とはゲーム開発者・配信者に、そのPRのためのリソースを提供するオンラインサービスのことだ。登録した配信者のうちでも、ゲーム開発関係者が特段目をつけた者にゲームキーを本配信事前に配り、当該ゲームをより早くプレイ・レビューさせ、広くゲーム業界にハイライトする…という仕組みである。

どうやら、事前にインフルエンサーのような強力なコンテンツを生み出す力を持った配信者にキーを持たせ、宣伝・喧伝させるという、ゲーム配信をめぐって作られたまったく新しいマッチングサービス、それが「Keymailer」であるというわけだ。

アメリカではビジネスのスタイルも特許化できる。技術そのものでなく、ビジネスプランも特許化できるのだ。この手のサービスのスタイル/プランの特徴が如実に表れるのは、ビジネスの時系列をビルドアップしなおしている点だとあたしは思う。

つまり、サービスの要点は簡単だ。

・ゲームを作る⇒現状、ゲームの数に押され埋もれてしまう現状があり…

・さらに「ヒットさせて稼がなあかん!!!」という会社経営上の喫緊の事情があるので…

・マッチングし、ゲームをイメージアップしてくれそうなゲーマを探すことが必要となる

・そのヒットゲーム請負人と開発者とのマッチングの場がKmである!

ということらしい…

確かにこのサービスは興味深い。Steamでリリースされる予定のゲームは数多くあり、埋もれてしまう名作も多いだろうし、個人最適化(テーラーメイド化)されたゲーム群を見つけるポテンシャルが、”ゲームの多発”によって減衰のベクトルに働く可能性は否定できない。そこで、ゲーム本配信前に特定のインフルエンサーにキーを配布し宣伝・喧伝させることで、『ゲームの埋没化』を防ぐという意図は読み取れそうだ。また、マッチングの際にそのマーケティング層を絞ったうえでキー配布するという点でも意欲的なものだ。

だが、決していいことだらけではないとあたしは思う。たしかに「Keymailer」のビジネスビルドアップは興味深い。しかしながら、インフルエンサーが結局得をするだけのサービスに成り下がるという常識的な意見もまたあっていいだろう。”ゲームを事前にプレイさせる”というアイデアは既に多くのゲーム系YouTuber相手に存在する(弟者兄者のチャンネルでも既にやってるよね☆)。果たして、このマッチングサイトの存在意義はあるのか?という疑問にもつながってしまうわけだ。

たしかにKmのサービスはほかにもプラットフォームや解析の手順などに工夫があり、このサービス提供者としては、あたしのKmへの疑問への再反論もあるだろう。だが、Kmが本当に、本質的にゲームのマッチングに有効に作用するかどうかはやってみなければわからん点も多いと個人的には感じる(キーを事前に配るという意味で”時系列を最適化しよう”という、意欲的なアイデアは確かに優れている)。

StSがKmを活用したからと言って成功したわけでもない、ヒットする他の要因があった気がするのは、あたしだけだろうか?あれからローグライトビルドデッキっていう斬新なジャンルができたわけで、少なくとも「8割方Kmのおかげ」とは決して言い切れないだろう。

そもそも日本語情報がまったく出てこない段階で広く一般に周知されたとは言い難いのも事実。どう市場でポテンシャルを発揮するか?その挑戦心は勇ましいが、多くのベンチャーITサービスのように、Km自身がもっともっと多くの、周囲のITサービスに埋没するという”ベンチャーの逆説”にからめとられないだろうか?という意見にまで発展して、先々見て取れそうではある…

※現にSteamにもニッチなゲームを見つける機能が実装されつつあることにもふれておこう。

参考リンク:Steam Labs

( ゚Д゚)<例えば、⇧のこのゲームもKm使ってマーケティングしてるね。