本作は、パブリッシングにbilibiliのゲーム部門がついているという稀有な作品。2D版ソウルライクACTゲームでSteamに配信されているもののうち、最もよくできた完成度の極めて高いゲームだ。
妖怪狩りを生業とする剣人が、弟弟子の警句を無視して討伐を進めてしまった結果、とあるトラブルを抱えてしまい、その世界から破門されるところがプロローグ。物語のプロットはここから始まり、様々な人間の住まう世界を妖怪から救う『斬妖幻劇』ともいうべき独特の世界観が魅力的な一作になっている。中国語で語られる中世の剣戟世界の中、様々なストーリ―性を支えるための演出表現に非常に優れているので、物語の進行が具体的で、この後どう展開していくか、気になるゲームに仕上がっている。つまり、純粋な『物語』として凄まじい完成度がある。
だが、単なる『物語』の性質を持っているだけではアドベンチャーものになってしまうんであって、ACTゲームにならない。本作が優れているのは、その背景にあるストーリー性だけではない。ACTゲーム・特にソウルライクの横スクロール版の白眉・傑作といっていいだけの特異なアクション性があるのだ。

システム面は、プレイ画面に次々と解説文とともに上がってくるようになっていて、それを確認することもメニュー画面から随時できるのでアクション要素で混乱することはないだろう。ゲームのセーブも道中の灯篭のようなオブジェでできるので、シームレスにゲームの持つ魅力の中に、容易に入っていける。で、どこがこのゲーム、さらに凄いの?

このゲームが優れている点・その理由はただひとつ、要所要所に立ちはだかるボスのガーディング(防御値)をいかにして崩すか、というボス戦重視の”2D版ソウル系アクション此処に極まれり”というゲームになっている点だけ、といっていい。たしかに道中では多くの妖怪たちがいて、それぞれが、多種多様な攻撃を仕掛けてくる。それなりそいつらも強敵だが、道中はいわゆる『ソウル稼ぎ』(ソウル=経験値を集めレベルアップできるシステム)と、各種システムの確認に留まるといってもいいだろう。ダクソでもそうだったようにこのゲーム最大の魅力は、ボス戦でどれだけの知恵を振り絞り、どのようにバランスをとって闘うのかという、『知能戦にある』といっても過言ではない。

ボスはどの敵もガード値を持っているのがデフォルト。つまり、”ガード値を削ってから本体のヒットポイントを削る”という作業が必要になる。この点において、カウンター攻撃が必須になるのはもちろんのこと(このゲームにおけるカウンター攻撃=避けてからのアタック・相手の攻撃を利用してのアタックはボスのガード値を大幅に削るという、いわば”見切りの極意”になっている)、反撃の機会をどううかがうか、敵の攻撃をどう避け特性を見切るかという、ACT性を極限まで追い詰められた状態で求められる『THE 2D版ソウルライク』という立派なコンテンツに、ゲームの内容が称揚しているのだ。当然、一瞬でも油断すると、キャラは死ぬ。2Dといえどもソウルライクだから、主人公は常に”死と隣り合わせ”である。

難易度も三段階から選べるが、ダクソ経験者は、はなっから最高難易度”ハード”を選ぶことをお勧めする。知力を振り絞り強敵を倒せたとき、とてつもない脳汁が出るのはダクソと同じ。それだけに敵を知り、その前に己を知ることに快感があるゲーム。もちろん、高難易度を誇るハードボスを倒すためのソウル稼ぎもけっこう楽ちんにできる。チャレンジモードやサブルートなどのコンテンツをこなしていけば、自然とソウルが集まり、レベルアップ強化ができる。ただ、レベルアップすれば単に勝てるわけではないのは本家ダクソと同じ。絶妙なバランス感覚の元、それ(ソウル稼ぎとレベルアップ強化)が、勝つチャンスが広まるということになっているに過ぎない点、忘れないでおきたい。


シンプルにまとまっているが、同時に奥深く、やりこみ要素も極めて高い…ダクソにはまって2Dのソウルライクを探しているならば”即買い”のタイトルだろう。
本作は現状Steamで早期アクセスタイトルとして発売中。ソウルライクに凝ったことが一度でもあるならばぜひ購入を…と断言していいのではないか?インディー界隈での中華ゲームの進歩をひしひしと感じることができるタイトルでもある…
※画像はゲーム「斬妖行 Eastern Exorcist」内から引用させていただきました。