ゲーミフィケーションをそのメインの事業領域として展開している株式会社セガXD。同社の開発した「ゲーミフィケーションカード」がこの度「2025年度グッドデザイン賞」を受賞したという。審査委員による評価コメントではその個性的な設計性が高く評価されている。「似たようなデジタルサービスが多くなっていっている現代において使いやすさ及び長期性が評価された」とのことである。カードゲーム形式のアイデア創出ツール。
この「ゲーミフィケーションカード」という商品はセガXDの長年の開発経験から生まれた人間のマズロー的欲求に基づいたアクションを喚起するために作られているカードツール。デジタルゲーム開発で培われた技術をアナログのカードゲーム商品開発に応用した成果物がこのツールということなようだ。マズロー的9つの欲求と共に101もの種に登るアクション喚起システムをカードを通じてユーザにもたらす。個性的なイラストも盛り込んでいる。
同社CEOの谷英高は「人の心を動かし行動にコミットするスキルを楽しみながら身に着けられる」ことを目標としてこのカードツールを制作したという。グッドデザイン賞はその根っこに経産省が就いている公益財団法人による表彰だから事実上かなり公的な授与に近い。これまでも歴史に名を刻む経済ツールが多く受賞の対象となっていて今回ゲーミフィケーションがらみの商品が対象となったのも画期的なことなはず。
このカードツールの価格はオープンプライス。おそらくば個人ベースに向けた商品ではないことが推測される。あくまでゲーミフィケーションを技術のコアに据えその行動理論を計画しているであろうビジネス市場領域をニーズにとっているカードツールなのだろう。つまるところBtoCのツールではなくBtoBのツールであると思われる。これは「ゲームの力がビジネスを変える」との言葉を標榜しているところからも推測できる点だ。発売は今年の一月に開始された。
思うにゲーミフィケーションとは(何度もしつこくゲヲログが言っているように…)ゲームの仕組みをゲーム以外のものに応用することだ。だからどんなアナログツールであっても条件を満たすのであればゲーミフィケーションの要素をまたいだ開拓要素を含有しているともいえる。アナログなカードゲームはデジタル環境に移行するにつれて廃れてきたという感触はあるがこのカードツール商品はその真逆の方向を向いていてその存在自体がとても面白い試みだ。
よーするに人間の持つ元来の欲求や達成感を満たすためにはデジタル・アナログに限らずこうした様々なルートを通じたツールが有効なのだ。先述したようにデジタルゲームの持つ特徴がアナログゲームの持つ特徴に効果的に作用するというのは一見して時代に逆行するような動きに見えるかもしれない。シュンペーターも言ったように開発されるサービスの種類は類似性を増してしまいイノベーションが止まっていく論は今後強くなっていくとする説も根強い。
この「シュンペーターの逆説」に依らず他サービスと似ていない開発ツールを作ってしまうという突拍子もないアイデアはゲーミフィケーション元来の在り方を問うているだけでなく本来人間のもたらす商業活動においてどういった制作体制が敷かれるかということまでも問うていると私は感じた。ゲーミフィケーションの世界をリードする日本の会社が作ったイノベーションそれがまさにこの商品なのだろう。
“ついやりたくなる体験”を設計する『ゲーミフィケーションカード』が2025年度グッドデザイン賞を受賞! | 株式会社セガ エックスディーのプレスリリース
