【連載:ローグライト探訪記】「Cross Blitz」~対称性のあるデッキビルドローグライトゲームの宿命に敗北したゲーム | ゲヲログ2.0

【連載:ローグライト探訪記】「Cross Blitz」~対称性のあるデッキビルドローグライトゲームの宿命に敗北したゲーム



う~ん、良いゲームなんですがねぇ!間違いなく着想は良いし面白い。だが勿体ない!

ゲーム全般について

このゲームはいわゆるHS-likeのカードゲームです。レーンごとに攻撃が自動的に加わるタイプのHS、と言ってまったく差し支えないかと思います。ヒーロのヒットポイント(HP)があって、これを全部削られると敗北・逆に削り切れば勝利。そこに様々なバフやナーフ(カード間のものや敵カード妨害もの、あるいは、ヒーロそのものを対象とするものなど)が入ってくるっていうニュアンスですかねぇ。大まかにいうとこれだけのゲームで、英語ができるかできないかはあまり関係がない。だってお馴染みのHS-likeのカードゲーですから。

良いところと重大な問題点

カードのデザインも良く練り込まれていて可愛らしく絵としてもクオリティ高く素晴らしいし、デッキの構築もそこそこのレベルで担保できている。道中にレストポイントがあれば、デッキバーンのポイントもある。ストアもあれば、カードのアップグレードシステムもある。もう解説する必要がないほど、お馴染みな光景ですよね。でもね、これローグライトゲームなんですよ。しかもデッキビルド系のローグライトゲーム、ここを開発者は勘違いしちゃいけないっすね。ではその勘違い、とは一体何ぞや?

カードゲームとしての宿命~バランスの問題~

これね、デッキビルドローグライトのインフレ―ションシステムを当然のごとく搭載している分、全体のゲームバランスが極めて悪い。HS-likeのカードゲーム+デッキビルドローグライトシステムという要素を無理やり足し合わせたがためにゲームの相性がすごく悪いんですよ。例えば、HSのカードシステムを持ったデッキゲーム+基本ヒーロHPの上限をアップアップさせることのできる周回要素って、一目みればわかるかたいらっしゃるだろうけど、明らかにバランスが悪いじゃないですか。

例え:極端な話

極端な話、HS-likeのカードゲームで自分側のヒーロのHPが100あって、相手方のヒーロのHPが20とかだったら、絶対勝てるじゃないですか。長丁場になったって粘り勝ち勝できるじゃん。この辺りのバランスがうまく取れてない。周回要素でジェムみたいのを使えば、HPそのものを上げられる。(おそらく)上限はあるにせよです。極端な話って言っても、決して誇張ではないんですよ。周回アップグレード要素を搭載しているのに、カードゲームとしてのバランスをうまくとらなければならないという宿命を負っているゲームです。そしてその宿命そのものに負けちゃってますね。

アンバランスさの元凶

この原因はゲーム「Cross Blitz」が純粋なカードゲームとしての戦略の力学的バランスに重きを置いているということに起因すると思う。というのも、カードゲームってのは全体的なバランスが担保できないとその時点でクソゲーになる。そして、クソゲーにならんがため作り込みをしていくと、バランスをある程度は担保できるようになってくる。でも、システムの齟齬が徐々に表れてきて、バランスは次第にシビアさを呈して来る(ここまでは本家のHSだって同じ問題を抱えている~それこそMTG:Arenaだって同じ~)。そこに無理やりデッキビルドローグライトの色彩を加えたらどうなるか?当然、ゲームバランスが修正不可能なほど崩れてくるんですよ。

乏しい開発の成果

そういうプロセスを経ているので、このゲームはすごく大局観に欠けていて、繊細な面でもボロボロになってしまっている。アイデアは素晴らしいですよ。テーマもデザインもすごく素晴らしい。だが、プレイしてみるとよくわかる。ゲームの開発プロセスに、デッキビルドローグライトカードゲームという繊細過ぎるブツを持ちよって作り込んでいるため、作れば作るほど粗が出てくる状況になってしまっとる。ここが、本作最大の懸念ポイントです。てか、ぶっちゃけ、これもうこれ以上作り込んでゲームバランス確保するの無理じゃねえのか?って思うぐらい。それぐらい難易度の高い作業に入ってるんだよね。

今更言っても遅いこと:デッキローグライトで対称性を担保すると無理が生じる

できれば、デッキ性能のインフレ―ションの仕込み方や、カードのデッキへの組み込み方にもうちょい熟考があったほうが良かったんじゃあないかな。そしてその上で、敵とプレイヤー側との関係性が、本当にデッキvsデッキでよかったのか?っていう提案があった方が良かったと思うんだよね。これがデッキvsデッキじゃなかったら、デッキ性能に相互対称性が無くてもゲームは成り立つ気がするし、対称性が崩れている状況をわざと作り出して、カードインフレーションのシステムを大雑把に持ち込んだら成功したかも…と思う。でも今更それほどの路線変更ができるわけないし、そもそもこのゲームの開発コンセプトはデッキvsデッキだろうから無理がある話でもある。


及第点ギリギリ、たぶんレビューは賛否両論以下。カードデザインがイイだけに勿体ない!