インディーゲームレビュー「OMORI」~近年稀にみる『個性あるJ-RPG』の傑作 | ゲヲログ2.0

インディーゲームレビュー「OMORI」~近年稀にみる『個性あるJ-RPG』の傑作

「OMORI」ほどここ十年間で完成度の高い、感情にうったえかけるゲームはない。古典的J-RPGと現代的な哲学的価値感の融合…。とあるSteamerはこのゲーム「OMORI」を『記憶を消してもう一度プレイしたい』と評したが、その通り。端的に言って、素晴らしいゲームだ。

ゲームストーリー
ストーリーの冒頭はバジルという名の友人が失踪しその捜索をすることから始まる.

詳しく書くとネタバレになるから深くは書けない。ハッキリひとことで言ってしまえば、暗く陰鬱とした謎を紐解くシーンと明るいギャグタッチの日常とのコントラストが生み出す、ロールプレイストーリーである。まず、このゲームには自死や精神的恐怖というテーマに沿った前者のもの・それに相対するように存在する、日々の少年少女が繰り広げるコメディ調のイケイケどんどんのノリの後者のもの、そのふたつが話の軸を構成している。

暗い点と明るい点とで分かれるコントラスト…そのような意味合いにおいては、ゲーム「ひぐらしのなく頃に」を連想したプレイヤーも多いんではないか?だが、「ひぐらしのなく頃に」がゴシックホラーの謎を探索する具体的なゲームであれば、こちらは、現代的ホラーとコメディ的不思議ちゃんが絡んだ、独特の世界観を構成しているゲームである。あくまで「ひぐらし~」とは別作品、他のあらゆるゲームとも比較にならないほど個性的な世界観を呈しているのが特徴だ。

このエキセントリックともいうべきゲーム「OMORI」を巡る謎とは何か?それは、いわば”不明確な謎”であり、なぜ恐怖感があるのか?なぜ欝々しいのか?という根本的な問いが提示されることで成り立つ。さらに言えば、その謎が表現する価値観が、ゴシック・古典・唯物というよりかは、それらをも超えて観念論的なものまで感じさせる様相を呈す。このゲームでしか体現できない、ここ数十年を巡って見ても「OMORI」でしか味わえない価値観があるのが、ゲーム「OMORI」を『圧倒的な好評』に押し上げている要因ではないか?と感じさせる。

戦闘システム
三すくみの関係性を図示した図はプレイ冒頭に手に入れいつでも参照することができる.

古典的なJ-RPGに、感情という三すくみの状況変化・ステータス調整リバランスの要素を加味した、戦闘システムを採用したゲームだ。ターン制で行われる古典的なJ-RPGのシステムの上に工夫がいくつかある。

冒頭挙げた、感情操作に基づいた三すくみの優位不利のシステムに始まり、各種ステータス要素への割り振りがあり、さらにスキル・アイテムの類や装備などの副次的要素まである。単なるJ-RPG付属の戦闘システムではないことに気付かされ、それが独特あるJ系発オリジナリティあるものなことに気付くまでは、戦闘自体がいくばくか面倒に思えるかもしれない。

だがそう感じてしまっても、少なくとも最初の数時間は我慢してほしい。そうしないと「OMORI」に内在する、”ギリ勝てる難易度”の戦闘システムには理解がいかないだろう。反面、数時間プレイすれば、「OMORI」の特色性あるターン制バトルのとりこになっているはずだ。

はじめはストーリーを必死に追おうとするだろうが、そうしているうちに、絶妙なバランスを保った、魅力ある戦闘システムにも感心できるはず。それまでは我慢し、キャラクターのレベル上げもトントンしておこう。ここで「OMORI」の魅力に気づかず、放置しておく・積みゲーにしておく…というのはもったいなさすぎる。

グラフィックス
かなり荒いラフ絵のような線画に着色した印象を受けさせるグラフィックスが味を醸し出す.

手描きやラフ絵に近い、自由なグラフィカルな要素が特徴で、工夫次第でこういった演出が可能なのか!と驚くプレイヤーは多いことだろう。2Dのデザインなのにも関わらず、立体感のある世界を感じさせる”深み”がある。

例えば、コンピューター画面、写真アルバムやスケッチブックといった多彩なグラフィックスの見方をゲーム内で採用している。この辺りはさすがに「OMORI」単独でできたわけじゃなく、ゲーム「MOTHER」やききやま作の伝説のフリゲ「ゆめにっき」などの影響もあるとは思うものの、オリジナルな解釈で成り立っており、決して猿真似ではない。

繰り返すが、実存を踏まえそれを超えた観念的な理論が背景にあるのを感じさせることを、グラフィカルな側面から支援することに見事に成功している。デザインがキャラクターの個性も踏襲したうえでストーリーの引き立て役にもなっていて、感心させられるんだ。あくまで平坦なゲームなのに、立体感溢れる、ゲーム自体が生きているかのように感じさせるグラフィックスの構成手法は特段素晴らしい、の一言に尽きる。

肝心な点『謎』

少年少女は自らに純朴である。彼らが暗い要素を持つ、そういう要素が頑として合る、ということについて、ゲーム「OMORI」は開始冒頭からなぜにわざわざ警告するのか?それすら数時間プレイしただけでは明らかにならない。

そもそも、ゲームを始めて数時間プレイを経ても、なぜ闘っているのか?なぜ、これほどまでに自由すぎる発想・着想に至ってゲームが構築されているのか?という面は全くと言っていいほど明らかにならない。つまり、”謎”はその言葉の示すとおり謎のままであり、どこにネガティブな精神的要素があるのかは、プレイ時間数時間でははっきりとしない。そういう意味ではそこにある”謎”こそが、この「OMORI」というゲームの世界の謎そのものである。

その背景にある”ガチで本質的な謎”を紐解いていくのがゲーム「OMORI」の魅力の最大なもののうちの一つな気がする。ロールプレイしていく中で本質を得る、というRPGの本核に迫った一作なんである。少年少女たちが活気良く元気に躍動する様子・それに相対するようなネガティブな心情的不安要素がPRされる謎…その謎が謎のままあり続ける不透明なワールドの、コアな本質的な部分を見通すにはゲームエンドを迎えるしか解決法はないはず。

そう思ってプレイしたいと、心の芯から通じることのできる一作だ。

※ゲーム「OMORI」から画像を引用.