記事の要約:「Hi-Octane」や「Wipeout」ほど素晴らしいゲームはなかったが、その後継作となるゲームを現代のゲーム市場で見つけることは難しい。せいぜい「マリオカート」に局所的かつ絶対的な人気があるぐらいで、全体としては”廃れている”といっても過言じゃない。これには三つ理由が考えられる。まずバランスの問題・次に純粋にレーシングを楽しみたいというファン層の期待には応えられないこと・最後に「マリオカート」というIPが偉大過ぎていくら模造品を作ってもヒットしないこと。これらが具体的にその理由として挙げられる。
「Hi-Octane」という古代のゲーム
これね、けっこう興味深い問題だと思うんですよ。例えば、昔MS-DOSゲームで「Hi-Octane」ってのがあった。これはマジで面白かった。ホバーする高速ボートを駆使して銃弾やミサイルでハードコアな戦いをしながらレーシングを行い、順位を競うっていうコンセプトのゲーム。今でいう「Wipeout」の先輩格だな(ちなみに伝説のゲームメーカであるBullflog謹製だった~かの有名なDemis HassabisやPeter Molyneuxも在籍していた頃がある会社だ~)。でもね、「マリオカート」を特異点としてこの手の攻撃システムを備えた対戦型レーシングゲームってのは陽の目を見てない。随分と長くな。
「Wipeout」という系譜の刷新作
「Hi-Octane」はマジで世界観もシステムもバランスも神ゲーだったし、その精神的な後継作と言える「Wipeout」も傑作だった。実際、後者はシリーズ化までされた。水口さんが4亀の記事でわざわざ絶賛していたようにとにかく素晴らしいゲームだったんだよ。特に音楽性というファン耽溺の食指まで手にしていた。トランス系の音楽を意欲的にBGMに取り込んでいたんだよね。すんげーうまいプレイヤーが投稿動画をつべに投稿してたり、専用Wikiまでけっこう盛況・人気だったっていう経緯がある。
攻撃システムを備えた対戦型レーシングゲームはなぜ廃れたのか?
でもね、この手のゲームジャンルはそうっとうつらい状況に今置かれている。間違いなく、「マリオカート」以外はほとんど全滅状態。Steamでも「Wipeout」に似たゲーム、SF風のホバーレーシングゲームは多いんだけど、どれも微妙なんだよな。これには具体的な理由があると思う。ひとつひとつ指摘していこうか。
ゲームバランスの問題
この手のジャンルは攻撃性を備えたレーシングゲームということで、その実装のために難しいゲームバランスが求められる。例えば、攻撃的手法を取ることで、レーシングタイムスパンが生まれるのは当たり前なんだが、これひとつだけの問題をとっても、攻撃システムをレーシングゲームにもたらすことの難易度の高さを示せていると思うんだ。コース上にアイテムを配置したりブーストロードを作ったりすることが求められるんだが、この手の亜種な意味合いがむしろ全体のゲームバランスを悪化させてしまうっていう側面は否定できない。ネガティブな微妙な差異を生み出してしまうんだよな。
純粋なレーシングゲームの発達
これもでかい。例えば、「グランツーリスモ」や「Assetto Corsa」や「Forza」シリーズを見てもらえればいいんだけど一目瞭然で、レーシングの楽しさを純粋に提供するようなIPが今レーシングゲーム業界では流行っている。プレイヤーは捻りの利いたレーシングゲームにはあんまり興味を覚えない時代になっているんだよね。レーシングゲーマが求めているのはやっぱシンプルで直感的な楽しさ、なんだよな。特にレーシング領域ではレースそのもの・競争そのものに焦点が合っていて、そこ意外にはあんまり興味を覚えてないっていう背景がある。現に現代を代表するゲームと言っていい「Forza」シリーズのうちのひとつ「Forza Horizon」の系譜は素晴らしいゲーム体験をレーシングゲーム業界にもたらしたよね。
「マリオカート」の独占化
これはシンプルに言える。「マリオカート」が偉大過ぎた。「マリオカート」ができていたことがすべてに代替している現状があるから、あの原点にして頂点だった攻撃システムを備えたレースゲームがあまりに後続を許さなかった側面も見逃せない。スーファミでできるゲームがいまだに世界最高峰のe-Sportsの原点となるIPなんだから凄いことだよね。これ以降、攻撃システムを備えているレーシングゲームってのは刷新作が出せなくなっちまった。あまりに「マリオカート」が凄かった、と言える。似たようなゲームを大企業がリリースしても、SEGAだとかDisneyのような大企業クラスのIPでさえ、軒並み失敗している。コピーゲー頼みになってて独自色がキャラクター性以上のものを色濃く出せなくなっているんだよね。
Steamで見て取れる「Wipeout」に似ているゲーム
そうだなぁ…例えば、代表的なものでは「Redout」とかいう明らかに「Wipeout」を意識したIPもあれば、「BallisticNG」もある。「Antigraviator」や「Pacer」もあるけど、どれもSteamerの間での評価は微妙やんか。まぁ大体は”やや好評”から”非常に好評”をさまよっていて、しかもオンラインマルチプレイでは最盛期の「Wipeout」ほどの熱狂的な動きや同接数は見て取れない。やっぱり難しいジャンルなんだよね、ヒットするには。
「マリオカート」にあやかったレーシングゲーム
キャラゲーっぽさでは「Disney Speedstorm」とか「Sonic and SEGA All Stars Racing」とかも確かにある。けど、前者は特段微妙な評価で固定的かつ否定的なレビューが目立つ。Disneyが手を出してるIPだとは思えないほどの駄作じゃないか?前者は。後者はたしかにSteamで評価してるプレイヤーは多いけど、やはり同接数では貧弱でゲーム開発にかけた資金を踏まえれば成功した、とはいいがたいんじゃあないかな。
結論
このように純粋な「Wipeout」の後継作品としてのレーシングゲームも現代のゲームエンタメ領域では弱いのは否めないし、キャラゲーとしての「マリオカート」の後続作品でさえやはり成功しているとはいいがたい。そもそも刷新作や精神的な後継作品に凝ったゲーム開発者がいても、それを評価するだけのバランスを保っているか?っていう疑問に答えられてない。これがまずひとつ。次にはそれを受け入れるレーシングゲームファン層がいないってのが二つ目。三つ目にはキャラゲーとしてのこの手のゲームの凄さが「マリオカート」以外に見て取れない。大概の理由はこれに尽きるんじゃないかな。