エルルゥの瞳には輝きがある。
いつでも彼女の料理は最高だった。
いつだって純粋で、だれよりも行いは潔かった。
薬剤師としての素質もあった。勇敢さも合った。女性らしさもあった。
戦争における戦闘は得意ではなかったが、サポート役としての才能は秀でていて、
その能力は味方のだれもが認めるところだった。
今、エルルゥは歌を歌いながら、みなと一緒に夢を見る。
波吹く風に彼女はさらわれるように、意図せずともその風に乗ってしまうように、
今でもかつての仲間たちと一緒に闘い泣き怒り笑いあった日々を思い出せる。
仲間と一緒に闘い、仲間の死に涙し、仲間の傲慢さに怒り、
そして仲間と晩酌を飲みながら笑いあった日々を思い出せる。
無論、すべてが楽しかったわけではない。
ただ、喜怒哀楽に任せて、純粋な精神性を持ちうることが
いかに素晴らしいことかということを大戦前には気につかなかった…。
ただ、今かつての過去を思い起こすと晴れ晴れしいものがある。
無論すべてが、あまたが楽しかったわけではない。
苦労もあった。涙があった。心が通じ合わない関係に悩んだこともあった。
そして、なんといっても仲間の死があった。
信じられないほど、大戦では多くの仲間が死んでいった。
その事実に耐え切れずひとり孤独に泣きついた日々があった。
ただ、それゆえの楽しみを感じて、今エルルゥの希望が輝き始めた。
エルルゥは鼻歌を歌いながら、生き残ったみんなと一緒に、
生命の苦しさとその輝きの素晴らしさを実感していた。
今、悲しみを乗り越えて、すべての争いを乗り越えて…
毎日に感謝しながら、平和な日々をすごす素晴らしさを感動とともに涙できた。
今、エルルゥの腹には赤子の胎動があった。
無論、此処まで来る苦しみが大きかったことは事実だ。
しかし、今、エルルゥの瞳には、命の輝きが、
瞳の輝きそのものと一緒に通じ合ったのだった。
そう、エルルゥの瞳には…何物にも変えがたい、
失った仲間たちがいたからこその、希望の輝きがある…。