書評「eスポーツマーケティング 若者をつかむ最強メディアをつかいこなせ」 | ゲヲログ2.0

書評「eスポーツマーケティング 若者をつかむ最強メディアをつかいこなせ」

この本が優れているところは具体例がよく記されている点だけで、それ以上のものははっきりいってない。なんでこの本がアマゾンレビューでいい評価を得ているかがわからない…

日経クロストレンドのHPを専用記者が追って伝えただけのまとめ、という立ち位置の本。具体例ごとに各界の著名人やキーパーソンにインタビューをして現状を伺い、そのインタビュー記事を報道誌のような形で章ごとに似た傾向のものをまとめ、要旨・結論を述べただけ。

例えば、構成を見るとこうなっている。

Part1 来場者数、視聴者数もうなぎ上りキーパーソンが語るeスポーツの今

Part2 eスポーツは若者とつながる新たなマーケティングツール

Part3 地方に根付くeスポーツ自治体・企業が期待する地方創生効果

Part4 eスポーツは1つの動きさらに広がるゲームイベントの波

このPart1~4までの冒頭と最後の部分に、それぞれ、総論と付記がついていて、むしろeスポーツの基礎的なデータや概要を知りたいのであれば、Part1~4のインタビューの中身のほうは飛ばしても構わないだろう。むしろ、概要を知りたいのであれば、重要なのは冒頭の総論の部分だけである。

本書の大部分を占める”本体”とされるpart1~4で示される、個別のインタビュー内容(およびそれらを報道記事のようにまとめた内容)は彼らインタビュアーの考え方・取り組み・実践策を紹介しているだけ(たしかに各Partの最後にも、そのPartを俯瞰できるまとめがあるけど、あくまでキーパーソンへのインタビューに即した形に過ぎず、より深くブームの本質を追っていくという構成にはなっていない)。

さて、各Partづつ見ていこう。

☞Part1:具体例を示しeスポーツ各分野の取り組みという面から各項にしている。

【内容】カプコンによる新リーグ創設、コナミによる専用施設の整備、Cygamesによる大会開催、ミクシィによるアプリベースゲームの紹介、ガンホーによるメディアミックス戦略、セガによるぷよぷよのプロ化作戦、ソニーのハードとの連携企画、ライアットゲームズ(LoL)による先駆的な試み、CyberZによる『RAGE』の事例とそれぞれを紹介している。

【感想】それほど詳しい情報ははっきりいって書いていない。十分、和文で書かれたインターネット記事で集められる内容。むしろ、ウイイレはまだしも、パワプロ/ぷよぷよのような世界的なeスポーツタイトルとは無縁なゲームにそれなりのページ・書面を割いているのは読んでいてけっこう辛い。

☞Part2:企業とのつながり・既存ビジネスへの転用を主題として各項にしている。

【内容】日清食品/サッポロビール/おやつカンパニー/ロート製薬/NTTドコモ KDDI/アイ・オー・データ機器のeスポーツとの様々なコネクションをインタビューで紐解く。例えば通信会社の5G時代を見据えた戦略、ディスプレイなどをスポンサードする意味など、いわゆる”事消費”に関するタイアップ戦術について紹介している。

【感想】Part1と同様、和文で書かれたインターネット記事のほうが既により早くトレンドな内容にふれられる、といった感想を抱かせる内容。”物消費から事消費へ”という点は従来から言われつくしていてたしかに興味深い概念だが、既に手早い大手のゲームメディアでも取り上げられているような結論ありきの伝聞形式の記事が多い。

☞Part3:地方がらみの試みの紹介を各自治体の取り組みをまとめ各項にしている。

【内容】茨城県の国体でのeスポーツとの取り組み事例、富山県に集中する協賛会社の支援、大分県による地方創生とのからみ、最後にNTT東日本による地方支援のシステム創成、これらを主として紹介している。

【感想】一見目新しいようだが、地方振興という立場での試みあるのみで、果たしてこれらの取り組みが、システムの基盤となるインターネットの浸透に伴い、どれだけ今後有効なのか疑問を呈さざるを得ない内容。例えば、ほぼ完全にインフラがネット基盤になれば、地方にわざわざ開催主体を置く必要はない。

☞Part4:LANパーティをはじめとする特殊なイベントの実態を取り上げ各項にしている。

【内容】LANパーティの基礎の説明から、eスポーツの裾野の広がりについて、タイトーの新時代のゲームセンター戦略にまで、eスポーツの外側・外殻として解説を兼ねて紹介している。

【感想】専業のプロシーンとのつながりはあまりなく、むしろ消滅していったLANパーティTGNとか近めの団体であったCyacとかの頓挫事例も多くあることを知っている身としては、あまりうれしくない内容。

※まとめ

という感じで、あんまりいい本になってない。どちらかといえば、ちょっと詳しめの記者が書いたちょっと専門的な記事をまとめた本になってしまっている。eスポーツの本質や最先端の事例を当たりたいのであれば、他書を薦めたい。例えば、NTT出版から出てる「1億3000万人のためのeスポーツ入門」のほうがずっと入門でもあり、しかも、深く追っている。

本書にはストーリーらしきストーリーがない=脈絡がなく、各個の取り組みをインタビューやその伝聞の形式でまとめ、だいたいそれらを序章の総論で俯瞰するというだけの本になってる。本書を読めばわかるが、『だれだれがこう言っている』というような伝聞形式の事実に即しただけの新聞記事を読んでいるようで、ひとつの本としての完成度は低い。だから『あっちいったりこっちいったりする』という迷いどころの多い本になってる。

はっきり言って、図書館から借りて1~2時間かけて読めば、あとは買う必要はない。