ポーランドワルシャワ市場は『ゲーム株の聖域』になれるか? | ゲヲログ2.0

ポーランドワルシャワ市場は『ゲーム株の聖域』になれるか?



ポーランド産のゲームコンテンツが強めのプレゼンスを持っているのは今に始まったことではない。読者もご存じのとおり、「ウィッチャー」シリーズ「CyberPunk 2077」の開発・販売で知られるCD Projektは同国で有数の市場価値を持つ企業に成長している。また、CDの元勤務者で作られた社員100名程度のベンチャーである11 Bit StudiosもSteamerのみならず、CS機のゲーマーならばその名を知っていてもおかしくないぐらい有名やろうな…こちらの代表作は「Frostpunk」といったところか。

よく国別でハッカソンの大会なんかを開くと、強く出るのは実は東欧・ロシア・イスラエルあたりや。当然、世界の大学ランキングではあちら側の大学はランクインするどころかランク外だろうが、ITは特異点だ。計算機学会(ACM)が主催するICPCという競技名を持った、若手によるIT技術の世界大会の場ではポーランドやロシアあたりの大学チームが世界一を総なめにしている。ここ五年間でみてもロシアの大学が世界一をずっと争っていて、次いで日本の大学やMITが続いている。五年間で露勢がナンバーワン、すなわち優勝を譲ったことはなく、この二年間で露モスクワ大学が連覇を果たしているほか、露ITMOが過去連覇を果たしている(参考リンク:世界大会 | ICPC 国際大学対抗プログラミングコンテスト。その背後にポーランド・ワルシャワ大学がにらみを利かせている…というような状況だろう。

もともとSkypeは東欧のエストニア出身のアプリケーションだし、東欧のIT人材は明らかに業界で強い。当然ゲーム業界でもポーランドのゲームは前述したように有名で、実際、同国の株式市場でも強い銘柄になっているのは間違いない。だが、それが陽の目を見るか…というとそうではないとあたしは考える。

まず、おそらく国際的な株式市場として開かれているわけではないことがひとつ理由として挙げられるだろう。日本からワルシャワの証券取引所に(物理的にであってもいいが…)アクセスして現地株を取引するのは難度が高いはずだ。大手会社の投資手段として自由に第三国の銘柄を対象とした、ある程度高めの手数料を抜きにした取引が簡単にできるわけがない。インターネットの進展に伴ってこのデメリットは解消されるかもしれないが、それはまだ先々のコトすぎる。

次に、同国のゲーム銘柄(前述したふたつの会社)の株価の成り行きを見てほしい(Google検索より引用)。

これは11 Bit Studiosの株価推移をみたものだが、スパイクする点はやはりSteamでセールが始まってからだ。同社は、この直近の時間で大幅なSteamバンドルセールを行っている。明らかにこのことが影響しているのはわかる…だがCDはどうだろうか?

2万5000円のアルティメットルバンドルが4000円になる破格のセール。なんと割引額は驚異の85%だッ!
From:11 bit studios Bundle Madness Sale

ここ六か月間でみたものだが、いかんせん社運を賭けた大作「CyberPunk 2077」の発売日という大記念日付近で同社の株価はスパイクしていない…むしろ下落し、そのゲームの内容を巡り訴訟沙汰になっているらしいとも聞く(参考リンク:CD PROJEKT,「サイバーパンク2077」について2つめの訴訟を起こされる。このように株式市場の動向は一定ではなく、大作がそのデヴェロッピング会社の時価価値とは繋ぎきれないこともままあるのだろう…という推測は容易に立つ。そもそもこのゲームは延期に延期を重ね、高かった前評判をおとしめていたのも事実。そら悪評も立つよ…

最後に挙げられる点、それは彼らのコンテンツの作り方に関するスタンスだ。CDのかたがたは権利がらみに良い意味で疎い。GOG.comはその代表と言われて久しく、ゲームの所有権限をキー割り当てなどラインセンス形式で縛ったうえで売ることに拒否感があるというのだ。これについてはCDの創業者の思想を見れば端的にわかる。彼らは輸入販売からこの業界に殴り込み、その後世界一のAAAデヴェロッパの名を戴冠したという経緯がある。つまり、経営の判断として、株で釣ろうという意欲よりも、作品で釣ろうという意欲のほうが強いとあたしは思ってる。そのクオリティで売り込もう、あくまでアップルのように新製品投入とプレゼンテーションおよび投機がらみで儲けるのではなく、ゲーム作品自体を評価してもらうということを彼らなりに選択したのだろうと…

三点あげたが、今一度まとめよう。

・あくまで世界的にみればポーランド株式市場はローカルすぎておりネット全盛の時代といっても容易に投機できる機会がないことが多い

・ポーランド株式市場に上場するようなゲーム株式の動向は業界の赤の他人や素人投機家が安易に考えるほどそれほど確実性を持っていない

・そもそもポーランド株式市場に上場するようなゲーム会社でも厳しいライセンス販売に良い意味で疎くデジタル著作権管理(DRM)にこだわらないほどゲーム開発に関してフリーダムでかつ職人気質がある

ポーランドの投機市場がもっとグローバルに開かれれば、問題はある程度解決しそうではあるが、現時点で彼らの国の株式市場がそれだけの意欲を持っているとは考えにくいのではないか。また上場している企業にもその意識はあまりないようにあたしは思う。

あたりめーだけど!『株で儲ける』ってそう簡単じゃないよ…