e-Sportsは「完全オンライン制」の夢を見るか? | ゲヲログ2.0

e-Sportsは「完全オンライン制」の夢を見るか?

ESL(Electronic Sports League)をはじめとして、ユーザコミュニティから出てきたオンラインサービスで、ゲームのプロ化を謳う競技団体が出てきた。むかしっからよく知られているCyberathlete Amateur League(CAL)はESLと並んで有名である。今回は、そのe-Sportsのオンライン化の傾向についてちょいつらつら書いてみる。

この分野でESLは一番有力で、ドーピング検査を普通のオリンピックスポーツと同様に行ったことをnprが2015年の記事で早くも報じている。やはりESLはそれだけオンラインゲームシーンにおける「先輩格」だ。最近になって動きが見受けられたもののうち、日本語ローカライズが実現した注目株は、やはりsmash.ggだろう。これはe-Sportsも含めたオンラインマッチングの環境をアプリケーションレベルで配給するものであって、このスタートアップ独自の強みがあるという。Business Insiderも伝える通り、このsmash.ggのサービスは、アクセルに所属するAmit Kumarによって十億ドル単位で出資され、有力なベンチャーとなっているようだ。

smash.ggの特徴として挙げられるのは、オンラインの試合の提供のみならず観客動向やその他付随するサービスを、「企画段階から支援するアプリケーションである」という点だ。取り扱うゲームはもともと任天堂の人気タイトル・スマブラだけだったが、それ以外のゲームにもサービスは派生している。最近ではモーコン最新作やロケットリーグ、NBAやFIFA20などなど…

ゲームのプロ化傾向を、ビジネスチャンスとして見る会社が出てきたのには多様な背後関係がありそうだ。ゲーム配信事業でもこういう傾向は見られて、例えば、EVOはTwitchで無料配信されているし、カプコンカップだって配信業で潤っているのは周知のとおり(TwitchがGoogleとAmazonの入札競争の結果、Amazonに軍配が上がったのは記憶に新しい)。観客はロスでEVOの決勝戦を見ることができる以外にも、その決勝戦をオンライン配信で見ることができる時代になったわけだ。

実は、このオンライン化の試みは、あまねくデバイス系の行動において等しい。ゲーム分野では特に顕著だが、比較して見てみると、例えば、選挙投票制度は、電子化のプロセスにおいて三段階に分けられ解釈されてきた。

それは…

①完全な古典的な紙による投票方法
②投票場でタブレットなどを使うローカル電子投票
③在宅投票含む完全なオンライン電子投票
という、三段階のことである(参考リンク:https://en.wikipedia.org/wiki/Electronic_voting)。

このような段階的な電子化というものはローカルとオンラインの垣根を徐々に取っ払っていくと見られているが、あとに出てきた”ゲーム”という遊戯が、それ以前、アリストテレスなどの太古の時代から培われてきた選挙による”民主政”を追い抜いて、オンライン化されているのはある種の皮肉だ。”民主的投票”は時のリーダーを選ぶ、「マジな勝負」であるのに対して、”プロゲーミング”は根っこからのお遊戯がプロになった、いわば「”劣等感ある”マジな勝負」なのだ。ものごとの本質・正当性が担保される必要ある民主的投票と比べると、e-Sportsのオンライン化傾向にあたっては、基本的にここでいう②(のような)の部分のプロセスを経ておらず、①(のような古典的な方法)からダイレクトに③(のようなオンラインにおける方法)へと、ごく自然に変わっている。

IT産業におけるこの傾向は、Alexander Seropianがおよそ25年前、ゲームソフト流通分野で予想したことと照合できる現象に過ぎない。「彼の意見が流通分野においてすべて」と、私は大学院のソフトウェア流通レポートでも、ふるとさんが出してくれている同人誌でも書き、主張し続けてきた。当時から、この若き流通の天才は、あまねくソフトウェア産業の根幹を独占していたのだ(だからこそMSはSeropianが作ったBungieを買収し、後、彼が設立した会社もまたディズニー関係に買収された)。

よーするに、民主的な投票だろうがゲームだろうが今起こっていることで重要なことちゅーのは、「抽象化の現象」であるという点だ。はっきりいって、こんな回りくどいこと言わんでもある程度の論理がわかる人であればわかるだろうが、社会制度や娯楽産業が、人間が事物から脱却する過程において、それに伴って特定の物体/物性から変化してきているというだけのことなのだ。

ぶっちゃけて言ってしまえば、これは、Amazon/Kindleの登場で出版市場がうって変わったように、紙ベースの本と電子化された本とで、別の評論家による、ふっかーーーい論評があるのと同じ事を言っているだけである。こんなことはMarc AndreessenがすでにWSJという立派すぎるメディアでしっかりと言ってきている。(自分で書きたいこと書いておきながら、自分でそれを批判するのは気違い沙汰かもしれないが…)今更、情報革命などということを主張しても、結局のところ、それは梅棹忠夫の焼き増しに過ぎない。

…というわけで、社会諸制度に先行し、改革のナタを振るってきたESLもCALもsmash.ggも「IT資本主義」の世の中で成功するのはまず間違いないだろう、と私は見ている。ただし、その中でどのサービスがより強くなるか、ということの見通しはとてもではないが簡単に論じれるものでない(YouTubeGamingとTwitchのどちらが強いかということに見通しがつかないのと同様な論理において、である)。

兎にも角にも、e-Sportsは「完全オンライン制」の夢を見ることになるだろう。