書評「インディーゲームサバイバルガイド」【あまりにも『一般論』を追求しちゃった本】 | ゲヲログ2.0

書評「インディーゲームサバイバルガイド」【あまりにも『一般論』を追求しちゃった本】

初めに言います、部分的に認めるところはあるけど…酷評します。

ハナシの始まり

本書はインディゲーム開発者がインディーゲームの開発マネジメントについて勘所を押さえただけの本。特段、手に持って必要な本じゃないとあたしは思う。本業がインディーゲーム開発者だったら手元にあってもいいかなと思う。と、勝手にあたしがいっても説得力がないため、ちょっと内容をまとめてみて、どういう理由付けが部分部分にあるかを説明する。

各章に関して

ここからは各章について。評価すべき点は評価するけど、基本的に苦言を呈します。

第1章 誰でもゲームを全世界へ販売できる時代

導入部のため、別に精読する必要がない。インディーゲームでしっかり売り上げを稼ごうというノウハウを紹介するよー、それだけ。結局『まずは一つ作って公開してみろ』で糸冬。結局そういうんかい!って感じ。んでその後の各章につながっていく、「完成させる(第2章)」「知ってもらう (第3章) 」「配信する (第4章) 」「継続する (第5章) 」のこの後の四章分。

第2章「完成させる」

計画が破綻しない形っていう説明してるけど、全部一般論。個々の開発者に任せる領域じゃないのかって思う。例えば、工程の順番・オートセーブ機能などの便利機能の実装・あとはデバッグの実務とか…これも個人個人で異なるよね、順番なり熱意なり。開発の工程とかははっきり言えば、開発者によって異なるし、オートセーブ・オンライン機能や言語対応あたりなんかはニーズに合わせて作る意外ないっしょ。『過度な作り直しはしない』『目移りしない・既存のアイデアにこだわる』『苦手な部分は依頼する』『毎日やる』って、これも人によって大いに異なるでしょう、根本的に。『徹夜しない』だって人によって異なるだろう。「Stardew Valley」の開発者のエリック・バロンは、あのゲームめっちゃ作りこんでたことで有名だし一日18時間ぐらい開発してたよね。こういう単なる感想っていうか、個人によって異なる論理やロジカルな思考を安易に一般化しているように思えました。

第3章「知ってもらう」

これも一般論。宣伝のためのYouTubeをはじめとするSNSの活用・公式サイトの構築・デモ版とプレスリリースによる手法…ぶっちゃけどの方法も『やってみなけりゃわからん』に尽きると思う。例えば、Discord・Guilded・Keymailerとかいろんな方法があって、『これならばこれ』という風に断定的に言ってはいけない領域だとも思う。結局『作ってみてね』みたいな印象が強い。むしろ『作らなければわからない』はず。あたしも部分的に経験があるけど、VC(ベンチャーキャピタル)みたいな人たちが言うこと、もしくはそれ以下のレベルのものが書いてある。米国でも日本でもVC・開発者間の齟齬が明らかになってトラブルってくるってのはよく聞く話。一方、軍がゲームテクノロジーをリクルートする(ということがあるのは筆者もPlayismも知っているはず)と、徹底的にカネと機能に絞ってエンジニアに接近してくる。もちろん、後者が正しいとあたしは思う。『作ってみて確かめる』以外にない。『作ってみなけりゃ売れるかどうかはわからん…』それは本書も実践論ということで部分的に認めている。

第4章「配信する」

唯一同意できるのがこの章。というのも実利的な部分が法律とか税制とかにまつわることとして具体的に書かれている。税理士などの専門家の意見も踏まえて、書いてあるので、おいおい気づかない部分についてガイドしてくれている。『こういう関連法律があって、税制の部分ではこういうところに気を付けないとダメっすよ』って言ってくれてるので、素晴らしい提言になっている。一方、発表プラットフォーム別の対応記事なんかは相変わらず、ケースバイケース。うって変わって、章末Epicの日本部のかたのインタビューは必見の価値がある。

第5章「継続する」

この章は2章で書いちゃえばよかったんじゃね?例えば、StSは『知ってもらう=継続してアプデして開発する』ことで大成功したよね。作る=売るということがダイレクトに響いてこそゲーム開発者に継続的に必要なことじゃない?(4Gamer.net)。継続するってのは知ってもらう…知り続けてもらうとほぼ同じ意味じゃないかな。やはり一般論をありていに書いているだけで、ちょっと読んでて意味が見いだせない章です。それ以前に、なんだかんだ言ってこんなに新規参入が激しいインディーゲーム市場では本人の能力と努力のコンボこそ、すべての結果を決めるファクターと思うんですよ…。

よーするに?

なんつーか中途半端な評論・レビュー本になってしまっているし、どこに具体的なメリットがあるのかっていう実利性の面からいっても決して出来は良くない。どこをどうすりゃ成功するのか、ってのは個人個人の資質に基づくものだから、それをいくら追及してもあんま意味ないと思う。例えば、誰かがジョブズの真似事をしても成功するわけない、同様に「Stardew Valley」のエリックさんだって、エリックさんなりの事情があって、それにあった形で頑張ったからあのインディーゲームはメガヒットタイトルになったんじゃない。この本、あたしは期待値がかなりでかかっただけに出来はかなり残念でした…。中間に挟まれているゲーム開発者へのインタビュー目的以外の人がフルプライスで、本書を買う価値はあまりないと思います。一条さん、酷評してすんません、あるいは、単にあたしの努力不足なのかもしれんけど…。